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2011年05月11日

本邦“初”の本格中国料理辞典!! 『中国料理小辞典』 編集担当者より♪

35337.jpg『中国料理小辞典』
著者:辻静雄料理教育研究所研究主幹 福冨奈津子
発行年月:2011年5月12日
判型:四六変 頁数:384頁


 中国料理の用語辞典でプロの使用に耐えるものは、これまで世に見当たりませんでした。フランス料理関連の辞書類の充実さと比べると雲泥の差です。
それは「同じ漢字を使用しているから字面でなんとなくわかるだろう」と思われがちだという事情が影響しているのかもしれません。しかし実際にはフランス料理と同じく外来の文化ですから、そう簡単には理解できません。

 いえ、むしろフランス語以上に難しいかもしれません。

というのも、中国料理には標準中国語だけでなく、広東語を使う香港の用語も混在しています。
さらに大陸では簡体字、大陸・香港では繁体字というように表記方法も違います(繁体字は日本の旧字と同じものと受け止められていますが、一部違ううえに、台湾と香港で微妙に差があるケースもあります)。
これらの情報をきちんと整理するのはとても困難な作業なのです。

 さらに漢字の場合、見出し語をどのように排列、整理するかも難問です。
アルファベット順はもちろんのこと、普通の料理用語辞典のようにアイウエオ順にするわけにもいきません。
たとえば「紅焼」は一般にホンシャオですが、ホンソーとなまって読む人もいます。とはいえ日本語の音読みでコウショウとするのも乱暴な話です。

そもそも中国語のカタカナ表記の方法は、いろいろあって統一されていません。
それに、何と読めばわからない難しい字の単語はどうやって調べたらいいのでしょう。

Q1 「驢打滾」は何と読むのでしょう? (解答は文末に。)

実際中国では発音がわからない言葉でも引けるよう、書き順別の用語辞典や漢字を4分割して数字コード化する「四角号碼」なるものも使われていますが、日本人には使いやすいとはいえません。

 そこでこの本では、漢和辞典のように画数順で整理 しました。
すべての単語をまとめて画数順に並べると一字目に同じ漢字が来る言葉が延々と続いて(上菜、上脳、上湯、上漿、上籠…というふうに)見づらくなりますので、内容別に25種類にジャンル分けして探しやすさに配慮 しています。
素材の用語、調理法の用語、サービス関係の用語という具合です。

ただしこうした構成の場合、
「初めて見る単語だけれども、恐らく魚の名前だろう」
「中国茶についてどんな種類があるかざっくり調べたい」
といった場合には便利なのですが、どのジャンルに属するか見当もつかない言葉に出くわした場合には困ってしまいます。

Q2 「下水」とは何のことで、本書では何章に属しているでしょう?

別のルートから見つけ出せるように、索引も充実させねばなりません。
一般の人向けに部首索引、中国語のわかる人向けにピンイン索引(中国音アルファベット表記)の2種類 をつけ ことにしたのはそのためです。

 日本人にとってはフランス料理よりなんとなく身近な感じがするせいか、中国料理は理解が進んでいるように思われがちですが、実はわからないことだらけです。世に出回っている情報には、かなりいい加減なものも多々見受けます。
インターネット上に正解があるとは限りません。

また中国人に聞けばわかるだろうというのは素人考えでして、符丁であったり、地方名だったりするものは、ネイティブに尋ねてもわかりません。

Q3 「小巻」とは何のことでしょう?

とくに香港では、縁起を担いで同じ発音の別の字に書き換えたり、めでたい言葉に言い換えることも多いようです。

Q4 食材である動物の「舌」は、香港では月(にくづき)+利の一文字で書いて「レイ」と呼びます。なぜ?

もしかしたら中国人にとっても役に立つ辞書かもしれませんよ。

 最後に内輪話で恐縮ですが、本書製作の終盤に大震災に遭遇したため、作業は一段と難航しました。東京でもデザイナーの岡本さんの事務所や用紙の倉庫が被害を受け、著者と電話でやりとりしている最中にも何度か余震に遭いました。計画停電に直面しつつも、日本語と中国語が混在する面倒な版下作りにお付き合いいただいた印刷会社オペレーターの矢澤さんには、この場を借りて御礼申し上げたい次第です。


《解答篇》
A1・リュイタークン。きな粉もちの餡巻き(本書278ページ参照)。
A2・動物の内臓のことで、本書では第3章の「動物性材料」(33ページ参照)。
A3・台湾でケンサキイカのこと(72ページ参照)。
A4・広東語で「舌」と「蝕」(損をする)は同音なので、
   「利」と置き換えた(37ページ参照)。


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投稿者 webmaster : 2011年05月11日 11:54