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2012年12月25日

『ラ・パティスリー・デ・レーヴ レシピブック』

06161.jpg『ラ・パティスリー・デ・レーヴ レシピブック』
著者:フィリップ・コンティシーニ 技術監修、柴田書店編
発行年月:2012年12月28日
判型:B5横 頁数:120頁

お菓子が好きならば、ご存知の方も多いかもしれません。フランス菓子の巨匠、フィリップ・コンティシーニさんのレシピブックがついに日本で出版されました。いまパリで話題の「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の珠玉のレシピ約40品が、店舗で実際につくられる配合で公開されます。

コンティシーニさんは料理店のデセール担当からお菓子の道に入り、類まれな才能と、大きな身体とユーモアがトレードマーク。一躍スターダムの仲間入りを果たしました。大胆かつ繊細な味づくりが高く評価され、クープ・ド・モンド(菓子職人のワールドカップ)ではフランスの監督としてチームを優勝に導いた経験もあります。また、いまでは当たり前になった、グラスに重層的に重ねるデセール風の持ち帰り菓子は、彼のアイデアが基になったと言われています。味を自由自在に駆使する天才性から”味覚の魔術師”と呼ばれているパティシエです。

そんな巨匠がいま重視しているのが、古典菓子を現代に甦らせること。それも生地のつくりかたやクリームを構成する素材の見直しまで、徹底して一から検証し、いま彼が「もっともおいしいと思う製法」に落とし込んでいるのです。古典菓子には、長く愛されてきたおいしさ、モードを超える完成度の高さがあります。誰もが好きと思う味をつくり直すとは、なんと勇気の要ることでしょう。しかも、それを食べ手が素直においしいと思うレベルで実現する。つまり古典回帰とは、最高レベルの技術集団だからこそ、できるワザなのです。

06161_1.jpgたとえばパリブレスト。シュー生地をリングに絞り出し、プラリネ入りのクレーム・オ・ブール(バターとイタリアンメレンゲのクリーム)をはさむのが定番のスタイルです。それを「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」では丸いシューを連結したようなかたちに絞り出し、クリームはクレーム・パティシェール(カスタードクリーム)にプラリネを加えて、食感を軽く、味をリッチにしました。そして、クリームの中央には冷凍したプラリネをしのばせているのです(食べる時は溶け出してきます)。これによって、プラリネの味が鮮烈に印象付けられるというわけです。シュー生地の味も強くしました。配合を見直すだけでなく、製法手順から考え直しています。


第1章「古典---現代」では、パリブレスト、タルトタタン、サントノレ、フレジエなど、古典菓子をもとにした菓子を、古典レシピそのものの解説も踏まえながら、ご紹介しています。「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の何が新しく、どんな哲学のもとに菓子がつくられているのか。レシピをひも解きながら、読み進めることができるでしょう。

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第2章「素材---菓子」では、素材から菓子が生まれ、菓子から素材を考える、をテーマにしています。菓子をつくる際にどんな素材を選ぶかは大きな問題であり、楽しみでもあります。コンティシーニ流の素材論は、フランスと日本の素材の違いにも言及しています。

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第3章「子ども---大人」では、子どもが大人になり、大人が子どもに伝える、をテーマに、コンティシーニ氏と「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」オーナーのティエリー・テシエ氏が、子どもたちに伝えたい味覚の世界について、現在のパリで考えるフランス菓子とは何か、また2012年秋に出店した京都について語っています。

横長の小さな可愛らしい本です。カラフルな「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」の世界観にぴったりの写真撮影を担当したのは、気鋭の女性写真家として注目の千倉志野さん。透明感のある美しい写真から、いまにも甘いお菓子の香りが漂ってきそうです。


06161_4.jpg2012年9月、「ラ・パティスリー・デ・レーヴ」は京都に日本1号店、10月には大阪うめだに2号店をオープンしました。日本オリジナルの本書の出版は、大の日本贔屓というテシエ氏とコンティシーニ氏から日本の皆さんへの贈り物です。

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投稿者 webmaster : 2012年12月25日 11:42