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2011年11月02日

『簡素なお菓子』 Part6

06112.jpg『簡素なお菓子』
著者:河田勝彦
発行年月:2011年5月14日
判型:B5変 頁数:96頁


何がおいしさなのか?

最近はきれいなデコレーションのケーキが
たくさん店頭に並ぶようになりました。
でも、心を揺さぶられるようなおいしさのお菓子は
影をひそめたように感じます。

よくわかりませんが、
「見た目」や「バリエーション」「流行り」に目を奪われて、
生地そのもののおいしさを追求するということが
少なくなったのじゃないのかな、とふと思う今日この頃です。

生地やクリームがおいしくなくて、
おいしいものがつくれるのかなぁ?

そんな疑問がふつふつと湧き起こり、
デコレーションがある複雑な構造のお菓子ではなくて、
ごまかしのきかないシンプルなお菓子で、
生地そのもの、クリームそのもの、
あるいはその食感や香りに心打たれるようなお菓子

つくれないかと河田さんに相談してできたのが、
この本なのです。

つくって食べて感じる。
簡素なお菓子ならばくり返し試せます。
そのくり返しの中で、何かを発見していただければと思います。

それから、素人の方にも簡単につくれて楽しい。
それもめざしたところです。

同書をつくるにあたり、河田さんは頭を悩ませていたと
あとでお店の人に聞きました。
かなりたいへんだったようです。
シンプルこそむずかしい、からです。

「簡単にできるシンプルなもので、でもおいしくつくってください」
と要望していたのです。
河田さんはそこに向かってまじめに取り組んでくださったのです。

でき上がったレシピは混ぜ方の細かい指示はほとんどないものでした。
混ざればいい。
泡をつぶさないように切るように混ぜる、
とか微妙な混ぜ方はほとんどありません。

撮影のたびに聞くといつも、「混ざればいいよ」と河田さん。
それでもできあがって試食してみると……、

「わぁ、おいしい!」と声が出るほど。

どれも 心底おいしくて豊かな気持ちになる おいしさでした。

レシピ自体がおいしさをめざしているのです。

つくるのを楽しむだけではなく、どうぞ味わうことも楽しんでください。

食べてみて、にんまり微笑んでしまうようなレシピが同書にはあります。


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投稿者 webmaster : 2011年11月02日 10:01