――20年以降、国内の多くの産業はコロナ禍に見舞われています。そうしたなか、小泉さんはホテル・旅館業に対してはどのようなイメージをお持ちですか。先進国を中心にさまざまな取り組みが行なわれているSDGs。2030年までに持続可能でよりよい世界をめざす、17のゴール・169のターゲットからなる国際目標だ。ここ数年、日本でもその機運が高まり、SDGsの単語は普段の生活でも広く見かけるようになった。その推進力となったのが、前環境大臣の小泉進次郎氏だ。約2年間の環境大臣在任中に、カーボンニュートラル、自動車の電動化、プラスチック新法の制定など、日本の環境・気候変動政策を加速度的に進めた。星野佳路氏も、かねてより環境問題に積極的に取り組んでいる。1992年には軽井沢の自然を守るとともに、ネイチャーツアーなどを通じて環境教育などを行なう「野鳥研究室(現・ピッキオ)」を創設。2005年に建て替え開業した「星のや軽井沢」は、地中熱・温泉排熱、水力発電などによりエネルギー自給率約70%を達成するなど、日本の自然共生型リゾートの先駆けとなった。環境問題に一家言を持つ両者が、日本の宿泊・観光業のSDGsを語り尽くす。小泉:とにかく、今はホテル・旅館業の皆さまが大変なご苦労をされているというのが、率直な感想です。宿泊・観光業に対するインバウンド需要は大きなウェイトを占めていたと思いますが、当面はインバウンドの全面解禁も見通せません。また、コロナが収束し人々の流れが戻ったとしても、生活様式はコロナ以前とは異なり、完全に戻ることはないでしょう。そうした新たな生活様式や働き方に向けて努力されている方々が、ホテル・旅館業また飲食業には多数いらっしゃると思います。新たな生活様式への対応、そして新たなビジネスへのチャレンジを続ける方々を、われわれ政府与党はしっかりと支援していきたいと考えています。環境問題で言うと、今年6月にプラスチックごみの削減とリサイクルの促進を目的とする「プラスチック資源循環促進法」が施行されました。当然、宿泊業も対象になって星野:私はこれまでにいくつ小泉:振り返ってみると、09おり、ホテル・旅館の皆さまには脱プラスチックへの変化をお願いすることになります。変化することへの理解をしっかりと得た上で、各種補助金などその変化を支えるための国の支援もきちんとお伝えし、支援を必要とする方々にしっかりと行き渡るように取り組んでいきます。か環境省関連の有識者会議などに参加させていただいたのですが、どうも環境大臣のアクションや決断が遅いように感じていました。小泉さんは決断力があり、小泉環境大臣の下で日本の環境課題が一気に進展した印象です。この決断力は、小池百合子さんが環境大臣を務めた時以来ではないでしょうか。そもそも、小泉さんには環境大臣を務めたいとの思いはあったのですか。年に初当選した際、環境問題に取り組みたいとの希望を話していました。私は海に囲まれた神奈川県・横須賀市で生まれ、自然とともに生きてきたわけで、環境問題を身近なテーマだと感じやすい環境で育ってきたのです。環境大臣への就任について新春特別対談「これからの宿泊・観光業に求められるSDGs(前編)」53 星野リゾート 代表前環境大臣星野佳路氏小泉進次郎氏
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