そばうどん2021
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丸亀製麺のうどんは生きている厳選した素材がおいしさを生む「職人の仕事」の伝え方経験値がおいしさを底上げする「丸亀製麺」は、㈱トリドールホールディングス(東京都渋谷区)傘下のセルフサービススタイルのさぬきうどん専門店。2000年11月に兵庫県加古川市で創業し、21年3月末時点では全都道府県へ出店しており、国内855店、国外は創業者は焼鳥店から外食事業をスタートした粟田貴也氏。香川・丸亀で出合ったさぬきうどんに商機を見いだして丸亀製麺を開き、約20年間で着実に出店を重ねてきた。いまや丸亀製麺はうどんチェーンとして確固たる地位を築いている。そんな丸亀製麺がめざす理想の姿は創業当初から変わらない。それは粟田氏が出合った本場、香川のさぬきうどん店だ。たたずまいやシステムは店ごとに異なり、それぞれが個性豊か。味も当然異なる。だが、そこに共通するのはつくり手とお客の距離が近いこと。うどんのおいしさだけにとどまらず、お客の目の前でうどんをゆでる熱気、自分好みにカスタマイズでき多彩なうどんを味わえる自由度に人々は魅了されていた。そして、それこそが本場のさぬきうどんの魅力であり、丸亀製麺がめざす店づくりだ。創業時からこれまで「全店自家製麺・店内調理」を徹底してきたのは、粟田氏が感じたさぬきうどんの魅力をより多くのお客に伝えるためにほかならない。丸亀製麺でただ一人「麺めん匠しょう」の称号を持つ職人、藤本智さと美み氏(49ページにインタビューを掲載)は「うどんは小麦粉、塩、水の3つを合わせた非常にシンプルな食べものです」と言う。どん」にして、お客を魅了し続けることは難しいのだ。を「生きているうどん」と呼ぶ。そのうどんを表現するキーワードのひとつが「丸亀食感」。つるつるでもっちり、心地よい噛みごたえを楽しめる適度なコシを理想とし、それぞれの店で再現している。の藤本氏だ。製麺の知識と技術、指導方法を見込まれ、丸亀製麺のうどんの味を守り続けている。全国すべての店がそれぞれ自家製麺しているにもかかわらず、どの店でもレベルの高いうどんが提供できているのは、藤本氏が丸亀製麺の「生きているうどん」のおいしさの軸を決め、指導してきたからこそなのだ。に重要なもののひとつが素材だ。丸亀製麺では、国産小麦100%の小麦粉を製粉会社2社と共同で開発。北海道を中心とした国内で栽培された製麺用小麦は丸亀製麺専用の製粉工程を経て、それぞれの店舗へ送られる。小麦は天候などによって毎年のように生育状況が変わるため、小麦の出来や実際に小麦粉を使用する季節を考慮しつつ、製粉会社とともに粉の挽き方をそのつど調整している。塩だが、だからこそそれを「おいしいう丸亀製麺では自分たちがつくるうどんそのうどんの味を決めているのが麺匠丸亀製麺品質のうどんを生み出すためも厳選したものを全店共通で使用し、水は浄水器を使って品質の安定を図る。る通り、これらの材料は分量の丁寧な計測から温度管理まで、すべてを厳しく徹底するのは必須だ。また、うどんのおいしさを引き立てるだしの材料も同様に厳選。引きたての香りを大切にし、だしは各店で数時間おきに引いている。全店自家製麺の丸亀製麺では、製麺技術をマニュアルに頼った画一的なものではなく、一人ひとりが麺の状態を判断する「職人の仕事」として教育している。ともに技術力向上を目的とした「麺職人制度」(49ページ参照)を導入。技術力や経験によって4つのレベルに分けており、一つ星麺職人においては合格率約3割という厳しい試験をクリアすることで麺職人になることができる。藤本氏は月の3分の2は全国の店舗を巡ってうどんの品質をチェックする。「麺職人を認定している責任上、『麺職人がいる店はさらにおいしい』とお客さまに思っていただけるように、麺職人がいる店を中心に訪れます」(藤本氏)藤本氏は、丸亀製麺がセントラルキッ               からもその姿勢でノウハウやうどんとのチン(CK)を設けずに全店自家製麺・店内調理を決めたときから、1000人の職人を育てる気概で指導してきた。これ向き合い方を伝えていきたいと語る。丸亀製麺は、「パートナー」と呼ぶパート・アルバイトにも10年以上勤続するベテランが非常に多いという特色がある。丸亀製麺では永年勤続表彰を行っており、20年度は20年勤続1名、15年勤続19名、10年勤続463名の合計483名だった。19年度の総数は390名だったことからも、丸亀製麺には長く勤め続けるスタッフが多いことがわかる。永年勤続表彰者が増えているということはつまり、うどんづくりの経験者が増えているということ。藤本氏が伝える丸亀製麺のうどんへの思いを、理解し経験し、誇りをもってうどんをつくる――そういう人材が多くいることこそが丸亀製麺の財産であり強みだといえる。通常、800店を超える規模の外食企業ではCKを設ける。だが丸亀製麺は、それでは「手づくり・できたて」のおいしさが提供できないと考え、全店自家製麺・店内調理の道を選んだ。その考え方は確実に丸亀製麺の最大の武器になり、また、CKを持たないことで出店立地に制限が発生しないという利点も生み出している。今後、国内ではまず1000店を目標に出店を重ねる方針という。21年7月には英国・ロンドンへの出店も予定しており、国外へ丸亀製麺のうどんの魅力を伝えていくことにも意欲的だ。手づくりのうどんのおいしさを武器に、丸亀製麺はますます成長を続けていくに違いない。04716年には、教育システムの一環であると取材・文/安孫子幸代 撮影/渡辺伸雄、東谷幸一(一部の写真は㈱丸亀製麺提供)10の国と地域で232店を布陣する。52~53ページで製麺工程を紹介してい

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