Pâtissier
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フランス定番菓子温故   知新フランス人仲間の考え方が自由な表現を後押しフランスでは10年ほど前から、僕はずっと「外国人である自分伝統があります。たとえそれが、菓子の本質からはずれてはいけない。ずっとそう思っていましたし、ら、納得して菓子づくりをしていた2013年ごろ。フランスへ行く機会が増え、フランス人たちと頻繁に話すようになったことがきに、かみ砕いたスタイルで提案しの流れにおいて自然ならば、僕も菓子の流れが急激に〝進化系〟へとす。原点回帰の〝クラシック・ルヴが自分が知っているサントノーレとは違い、あまりにも斬新で、僕は混乱してしまいました。か」という課題と向き合い続けて傾いていったように感じていまィジデ〟であっても、本来のクラシックとは味も形もかけ離れ、まったく違うものになっている。なかでも多くのパティシエが手がけていて印象的だったのが、サントノーレです。味、構成、形、色、すべてがどうフランスの菓子をつくるきました。フランス菓子には、歴史とともに築き上げられた体系やフランス人の手で少しずつ変えられたとしても、外国人の自分は安易に手を加えてはいけない。クラシックから離れすぎて、フランスフランスでも自分のなかにクラシックの基盤があることを感じながたのです。ところが、進化系への変化はあまりに大きく、急激すぎました。ようやく消化できたのは、ヴェルサイユに店を開く準備が進んでいっかけでした。見えてきたのは、何にとらわれるでもなく、じつにナチュラルに今の菓子を見つめ、先を見据えている彼らの姿。クラシック・ルヴィジデについても、エクレアやサントノーレなど、わかりやすくて安心感のある菓子を入口ているだけのこと。昔の常識や概念にしばられて凝り固まっている僕とは大きく違っていました。彼らの姿勢が今のフランス菓子フランス菓子に携わる人間としてならいたい。そう思い、まず手がけたのが、夏をイメージした「サン=トノーレ・デテ」です。マンゴーのムースやジュレ、ココナッツのクレーム・シャンティイ、パッションフルーツのクリームを詰めたシューなどを合わせて四角く仕立て、僕としてはかなり思い切ったスタイルとなりました。そして今回はカプチーノの味わいをサントノーレで表現してみました。エスプレッソとミルクの泡が混じり合う様をイメージし、ミルクの泡はクレーム・シャンティイでーゼルナッツを香らせ、さらにコーヒー豆を2日間漬けて色は移さず厚なクレーム・オンクチューズ・オ・ショコラとエスプレッソのジュレ、コーヒーのババロワを合わせ、味わいの変化と濃淡を生み出しました。味の組合せはベーシックですが、シパンを使ってシューをフォンダンでおおい、モダンな装いに仕上げました。新しい手法ながら、そのととのった美しさがフォンダンをつけてから指で真っ直ぐにぬぐでモダンな表現をしつつ、クラシックにも意識を置く。それが今の僕にとって、自然で心地よいバランスなのかもしれません。表現しています。生クリームにヘに風味だけを移します。さらに濃多層構造で新しさを表現。フレキう、伝統的な製法にも通じるように思えて気に入っています。自由112取材・文/瀬戸理恵子 撮影/合田昌弘      [サントノーレ❷]Saint-HonoréYoshiaki Kanekoオーナーシェフ 金子美明さん1964年千葉県生まれ。東京の「ルノートル」で修業後、デザイナーを経て、パリの「ラデュレ」などで修業。2003年に東京・自由が丘「パリセヴェイユ」のシェフに就任し、09年にオーナーに。13年9月、フランス・ヴェルサイユに「オ・シャン・デュ・コック」をオープン。パリセヴェイユ「サン=トノーレ・オ・カプチーノ」金子美明さんの

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