新版 そば打ち教本
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上野藪そば●東京・上野昭和63年、東京・新宿で鵜飼良平氏を講師にした、日清食品フーディアムクラブセミナー主催の「そば打ち体験教室」が開講した。当時、アマチュアを対象にした手打ちそば教室を名乗るものはほとんどなく、全国的にも先駆けであった。平成17年まで続き、この教室の受講者は延べ1万₂₀₀₀名の多くを数えたのである。このように鵜飼氏は、明治25年創業の老舗「上野藪そば」を経営し、麺業界のリーダー(日本麺類業団体連合会名誉会長)として活躍する一方、手打ちそばを趣味とするアマチュアに対そばを盛る器は本漆の黒塗りで、小ぶりの蒸籠。そばは言わずもがなの江戸そばを代表する細打ち。つけ汁は藪系統の代名詞とも言われる辛めの汁。猪口、つゆ徳利とも特注品で、落ち着いた雰囲気を醸し出している。しても、江戸流手打ちそばと総称されるそば打ちの技術の普及に積極的に取り組んでいる。ちなみに、江戸流手打ちそばの打ち方を一言       でいえば、商売として手際よく量をこなさなければならないため、そば打ちの技法に多くの工夫が加えられてきた。たとえば、狭い場所でもこなせる3本の麺棒の使い分け、そば生地の無駄を出さない四角延し、細打ちに切り揃えるための専用のそば包丁とこま板の使用である。鵜飼氏の手打ちそば技術の基本は、多くの先達や名人上手が日々工夫を重ね、研鑽して生み出してきた簡明にして、合理的な江戸流手打ちそばの打ち方を踏襲している。そばの風味を損なわないように配意した手法の手順にある。そして、なによりもアマチュアにわかりよく、失敗をできるだけ避けた手法で進められていることである。延しにおける幅出しの方法、切り上がりを考えた8枚のたたみ方、作業の要所での打ち粉の振り方とその量などである。江戸流手打ちそばの手法技術は、郷土そばの打ち方にも影響を及ぼしている。さらに、伝承の江戸流の技術は、ごく自然にたとえば、水回しにおける3回に分けての加水、江戸流手打ちそば技術の伝承者そば打ち技術の真髄簡明で合理的な打ち方の手法江戸流手打ちの基本を表現。簡明にしてわかりやすい手法技術を指導鵜飼良平日頃使用されているそば打ちの道具類には、いずれにもこだわりが垣間見える。木鉢は朱の漆塗り。備州檜の麺棒(延し棒は90㎝、巻き棒は120㎝を2本)。包丁は本鋼の本打ちで、柄に白鮫皮を巻いた特注品。こま板は桐製で、枕に桜材を使用している。014

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