パンづくりのメカニズムとアルゴリズム
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「目標とするパン」の段階的構築 パンをつくる時、最初に思うことは、「どんなパンをつくろうか?」もしくは「何をつくろうか?」であろう。そして「では、どのようにしてつくろうか?」とレシピの組み立てへと続く。この段階で、あなたは「目標とするパン」をイメージするはずである。「こんなパンをつくりたい!」と。このイメージがはっきりしていないと「美味しいパン」「良いパン」は焼けない。 しかし、残念ながら、このイメージは机上の学習で得ることはできない。というのも、ある程度パンを食べ込まないと、つくりたいパンをイメージすることができないからだ。例えば、あなたがフランスパンをつくろうと思ったとする。それは、あなたは以前からフランスパンを知っていた、もしくは食べたことがあるからである。フランスパンを食べたことがあるからこそ、「クラストは薄くてパリッとしている」「クラムの食感はモチッとしている」「風味が良くて、味がしっかりしている」などのリクエストが湧いてくるのだ。 要するに個々のレベルによって動機のもとになる「刺激」という名の貯金が、「官能や感性」と呼ばれる銀行に預けられていないといけないのである。極端に言えば、生まれてから今まで食パンのトーストしか食べたことのない人には、フランスパンの風味や食感はイメージできないはずである。加えて、未だパンを一度も焼いたことのない人に、パン製法や工程といった「パンづくり」を構築できるわけがない。とは言え、そんな否定的なことばかり言っても仕方ないので、以上は読者の皆さまの裁量にお任せして本文を進めようと思う。 簡単に言えば、「目標とするパン」の構想が固まれば、まず「製法の選択」、そしてその製法に見合った「工程の組み立て」を行う。次に「配合の決定」を行い、最後に「材料の選別」をする。ただ、この段階的構築は筆者の基本的な手法であり、必ずしもこの手順でなければならないというわけではない。例えば、どうしてもこの材料を使用したいから、「材料・素材ありき(材料の選別)」が段階的構築の第1段階にきても問題ないと考える。

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