日本ワインの教科書
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中国莫高窟の壁画(618~712年頃)西方遠征隊を見送る武帝、左端でひざまずくのは遠征隊長の張騫。られないパミール高原やタクラマカン砂漠があるからだ。しかし、漢の武帝は、紀元前139年頃に張ちょうけん騫を西域に派遣。張騫はパミール高原の西にある大たいえん宛国、現在のウズベキスタン東部の都市フェルガナで、初めてブドウとワインに出会い、これを長安に持ち帰った。匈きょうど奴に捕まりながらの旅は10年かかったが、この功績により張騫はシルクロードの開通者といわれている。 ヴィニフェラ種がフランス・ボルドー地域に伝わったのが紀元1世紀というから、中国にもほぼ同時期に伝わったといえる。 古代ペルシアの一部であったフェルガナの言葉で、ブドウは「budaw」ブーダウである。この発音に中国では主に「蒲陶」、日本では「蒲桃、蒲萄」の文字を当てた。日本では、江シルクロードのブドウの産地。『黄土に生まれた酒 中国酒、その技術と歴史』花井四朗著(東方書店)戸時代までは「蒲桃、蒲萄」と表記することが多かったが、明治以降は主に「葡萄」の文字を用いている。甲州ブドウのDNA解析 甲州ブドウは、ヴィニフェラ種の割合が71.5%、残りは中国の東アジア原種の刺とげブドウ(ダヴィディ種)である。これは2013年11月、独立行政法人酒類総合研究所が公表した甲州ブドウのDNA解析である。 ブドウの葉緑体DNAの配列を調べたところ、甲州はヴィニフェラ種とは異なる母方の先祖を持ち、これが中国野生種のダヴィディ種に最も近いことが明らかとなった。甲州には新梢の付け根に小さなトゲがあり、これは母方の刺ブドウ譲りだったのである。 これにより、「南コーカサスからシ37

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