日本ワインの教科書
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第3章産地ブドウ栽培は気候、土壌、地形の影響を受ける。日本のワイン産地の条件とは?62 ワインの伝統的な産地であるヨーロッパに比べ、日本の雨の多い気候と肥沃な土壌はワイン用ブドウ栽培に向かないとされてきた。しかし、現在ではそのハンディキャップをものともしない栽培家と醸造家が日本の風土を反映した素晴らしいワインを造る。 本章では日本の代表的な産地とその特徴を、代表的なワイナリーとともに紹介する。世界と日本のワイン産地の条件の違いを理解し、日本のワイナリーが決して恵まれているとは言えない環境をどう生かし、どう管理して上質なワインを造るために努力してきたのか。それを知ることで、世界の中での日本のワイン産地の立ち位置を客観的に把握できるようになるだろう。有機栽培を容易に行うことが可能だ。 日本ではその逆に、生育期である春から秋にかけ、梅雨、台風、秋雨と雨の降るタイミングが多い。雨が多いということはブドウ畑やキャノピー(樹冠)の湿度が高くなり、カビ病や腐敗のリスクが高まるということだ。カビ病はブドウの実だけではなく、葉や茎にも影響を与える。すなわちブドウの品質の低下だけではなく落葉や落果などによる収量の低下をももたらすため、日本のブドウ栽培の中でも特にその予防は重要な要素であり、同時に日本では有機栽培のハードルが高いといえる。日本は生育期に雨が多い  海外の主要なワイン生産国、あるいは生産地と比較して日本が大きく異なるのは年間降水量だ。一般にワイン用ブドウ栽培に適した年間降水量は500~900㎜とされているが、日本の場合は1000㎜を超えることが珍しくない。 考慮しなくてはならないのはその雨が「いつ」降るのかという点だ。海外の主要なワイン産地のほとんどで雨が降るのは冬の間であり、ブドウの生育期である春から秋にはほとんど降らない。そのため、チリやカリフォルニアなどのように夏に乾燥した国や地域では化学農薬を用いない日本の産地としての特徴

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