レストランの新しいデザート
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120 – || 121houka萌菓/西尾萌美(→レシピ140頁) 沖縄そばに欠かせない島コショウ、ピィパーズ(ロングペッパー)は、近年レストランでスパイスとして使われているのをよく見かける。でも出回っているものの多くは、乾燥品のパウダーだ。せっかく沖縄にいるのだから、土から生えたつるに実る、フレッシュな生のピィパーズをぜひ収穫して使いたい。 島袋安弘さんが育てる生のピィパーズには乾燥品にはない青々しくて鮮烈な香りと、ぴりっとした強い辛みがある。畑を見わたすと、実は未熟から成熟、そして過熟へ、葉は新芽から成長したものへと、ここでしか手に入らない魅力的な素材にあふれていることに気付かされる。 ピィパーズをデセールに単体で使うには辛すぎる。辛みを包み込む相方が必要と考えて、芳醇な香りのグァバを選んだ。グァバは生で食べるとぼんやりしているが、糖、酸、熱を加えると、ぱっと華やかな個性が出てくる。実はタルタルに、種まわりはソルベに、葉は乾燥させ香ばしくて渋みのあるクランブルにと応用させた。グァバの葉は、「沖縄3大薬草」と呼ばれるほど薬効が高いといわれる。無農薬で育てる今帰仁村のグァバ農家、高良夫妻の畑から葉ごと収穫させていただいた。 比嘉奈津子さん曰く「子宮のような、デベソのような」ガラス器に透けて見えるのは、ピンクグァバとドラゴンフルーツをモザイク状に積んだタルタル。白いふわふわのピィパーズの泡の上にはピンクのベゴニアの花とピィパーズの新芽をのせた。いかにも可憐な盛りつけだが、食べると生ピィパーズのくせのある青さと辛み、グアバの南国の香り、グァバ茶クランブルの渋みが広がる。食べた時にギャップを感じるひとくせある味わいを狙った。 見た目から想像していたのと、口に入れた時の味がまったく違った場合、頭が“?”となる。その一瞬の混乱で、コースの終りに向けてゆったりと受け身になりがちなデセールの時間に、刺激を与えたい。沖縄にて_5畑でしか見つけられないもの

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