炭火で焼く
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>>57 バーベキューには人々を結びつける力があるというのが私の信条です。感謝祭のターキーを切り分けるのと同じで、バーベキューも一般的には男の仕事と考えられていますが、その背景には「コミュニティ」や「愛情に満ちた家族」があります。幼い頃の私の最初のバーベキューの記憶は、日曜日のリトルリーグの試合のあとに近所のお宅にうかがったときのもの。友だちのお父さんのフランク・ヒメネスが、片手にミラーライト、もう片方の手には巨大なスパチュラを持ってグリルを仕切り、ご近所中がそこに集まっていた光景です。今でも、どこかでバーベキューをしているらしき煙の匂いがただよってくると、懐かしい思い出がよみがえります。バーベキューは夏の風物詩であり、野外で調理する楽しさを教えてくれるもの。そしてバーベキューで大切なことは「時間」と「注意力」です。 私は、食材と火のマリアージュをことさら複雑にはしたくないので、火床に二つのゾーンをつくるような凝った設定はせずに、ごくシンプルな火床でグリルしています。ちなみに「ツーゾーン・グリル(ツーゾーン・ファイヤー)」とは、焼き台の片側には多めに炭を積み(=高温・直火加熱ゾーン)、反対側には少なく並べ(=低温・間接加熱ゾーン)、その両方を使い分けてグリルするというもの。多くの場合、高温ゾーンは骨や皮のない鶏むね肉やフランクステーキなど、薄い肉をさっと焼くのに適しています。一方、低温ゾーンは豚の肩肉のような大きな塊肉にじっくりと火を入れたり、あるいは高温ゾーンで焼いた肉を最後に落ち着かせるために使います。 私に言わせてもらえば、高温ゾーンだけでなんの問題ありません。その場合、肉を頻繁にひっくり返し、定期的に火から離して休ませることがポイントです。そうして表面を焦がさないよう、内部の温度が高くなりすぎ、焼きすぎにならないようにコントロールする。つまり、肉をひっくり返したり火から下ろして休ませることには、間接加熱と同じ効果があるのです。あとは、通気口の開閉と上からかぶせる蓋によって、空気の流れ、炭の燃え上がりや調理温度を調整します。そもそも、大きなグリル台であれば別ですが、コンパクトなサイズのグリル台にツ―ゾーンをつくるのはむずかしいでしょう。もちろん、ワンゾーンの直火調理にはよりいっそうの注意が必要ですが、でもそれもバーベキューの醍醐味ではないでしょうか。OVER THE COALS炭の上で焼く

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