アンドシノワーズ
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017緒にせず、それだけでよくつぶすと仕上がりがよい。なお、果実の皮もハーブとして使う。アヒルをはじめ、鶏やウズラの卵を塩漬けにした保存食品。本書ではアヒルの卵のものを使う。中華食材専門店では「鹹蛋」(シエンダン)の名で販売されている。インドシナに移住した華僑が持ち込み、華人の多いメコンデルタやカンボジアでよく食べられる。ゆでたものを粥やご飯のおかずにするほか、月餅の具にしたり煮ものに入れたりするなど用途は広い。ナスの一種で、形と色がグリーンピースに似ている。カンボジアでよく用いる。独特の苦み、パリッと弾けるような皮の食感が特徴。鮮度のよいものは生食に向く。冷凍保存したものや大ぶりの粒は、一度フライパンで炒めてから使うこと。インドシナ三国のうち、料理に砂糖をもっとも多用するのはベトナムの南部、次にカンボジアだろう。北部のラオスや北ベトナムはあまり甘い味つけを好まない。 本書で使う砂糖はサトウキビからつくるキビ粗糖と、サトウヤシの樹液からつくるパームシュガーに分かれる。インドシナ料理では、どちらもあまり精製していないものを選びたい。私たちはキビ粗糖は鹿児島・喜界島産を愛用している。キビ粗糖は濃縮された蜜の香りが立つものが上等。 パームシュガーは日本でも石鹸状の固形のものが手に入るが、カンボジアの田舎、とくにトンレサープ流域の街へ行くことがあれば、ぜひ古い市場で液体状のパームシュガーを求めるとよい。茶色のどろどろした液体が大きなポリバケツに入っていたら、それがパームシュガーだ。サトウヤシの樹液を大鍋で煮詰めてつくり、加熱の加減で焦げ色がついた野性味のあるものから、丁寧に煮詰めて乳白色に近い色合いに仕上げた上品な味わいのものまでいくつかの等級があるのもおもしろい。砂糖は精製するほど雑味が抜けて混じりけのない風味になるが、パームシュガーも固形に整ったものよりも液状のもののほうが風味があり、インドシナの古典的な料理に向く。ただ、量を入れすぎると味がくどくなるので、キビ粗糖を混ぜて味をととのえるとよい。COLUMN109塩漬け卵シェンダン/鹹蛋10スズメナスマクアポアン/セイバンナス(ビ)本書で使う砂糖のこと

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