villa aida 自然から発想する料理   
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164165さまざな品種の大根。で畑仕事をしていたくらい。すでに秋を感じる機会が減っていますが、このままだといずれ冬もなくなるんじゃないか、と冗談半分で心配しています。種蒔きのタイミングは本当に難しくて、遅すぎれば育ちが悪くなるし、早すぎるとバッタや青虫に芽を食べられてしまい、蒔き直す羽目になります。2018年はとくに厳しかったです。雨の多い10月だったのでその後一斉に雑草が生えて、9月に植えた苗が全部負けてしまいました。―僕らはプロの専業農家ではないので、味、色、形すべてにおいて完璧な野菜を作れるわけではないし、そこを目指してもいません。どんな形であれ野菜ができたらありがたい、という気持ちで、収穫した野菜を見たうえで、適した生かし方を探るようにしています。力のかけ方としては料理7、畑3くらいがちょうどいい。その感覚を忘れずにいれば、たとえ野菜が完璧ではなかったとし小寒|1月初めの料理ても、それを使って記憶に残る料理を作れるんじゃないかと思います。料理人としては、野菜の出来にばらつきがあるのはいいことでもあります。どうすればよりおいしく食べられるかを真剣に考えますし、収穫時期がずれることで去年とは違う組合せ、違う料理が自然と生まれますから。育ちきらなかった野菜や育ちすぎた野菜が、新作の発想源になることは小川農園で軟白栽培中のカルド。ヴィラ アイーダのハウスではほうれん草やチーマ・ディ・ラーパが収穫時を迎えていた。よくあります。たとえば成長途中のカリフラワーの小さな花蕾とか、ほうれん草の太い根っこは、そんなふうにして使うようになりました。ほうれん草の根っこを食べることはあまりないと思います。でも試しに焼いてみたらめちゃくちゃおいしくて。これに限らず根っこは好きで、とりあえず何でも食べてみます。セロリ、コリアンダー、フェンネル……野菜ごとに根っこにも味や香りの違いがあって、おもしろいです。たとえばフェンネルの根はチコリコーヒーみたいな苦みがあっておいしいんです。春菊の根だけは、苦くて太刀打ちできませんでしたけれど。―冬の野菜も、夏〜秋と同様に保存食や調味料に加工します。大根や人参は天日と風にあてて干し大根、干し人参に。フェンネルやコリアンダーの根はピクルスに。早春の山菜料理にスライスした干し大根を忍ばせれば、季節の移り変わりと食感の変化を表現できます。

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