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2025年に訪日外国人旅行者数は4000万人を突破し、26年は中国市場の落ち込みで総数こそ横ばいながら、韓国・台湾をはじめ多くの市場が過去最高の旅行者数を更新している。拡大を続けるインバウンドの外食市場をどのように取り込んでいけばよいのか。インバウンド向けeチケットサービス「JapanTicket」、外食業に特化した予約管理システム「ebica」を手がけ、マーケットに精通する㈱エビソル執行役員の小林 毅氏に解説していただく。
インバウンドの外食市場は2兆円規模の時代を迎えました。訪日外国人旅行者数は4000万人を突破し、グラフで示したように2019年に4.1%だった料飲主体市場に占めるインバウンドのシェアは25年には9.5%に上昇しています。客単価の高さも市場規模の拡大に拍車をかけており、当社のグループ会社が提供するインバウンド予約販売サービス「JapanTicket」でも、予約単価7500円以上の予約が全体の5割を超えます。

さらに大きく膨らもうとしているこの市場を捉えるには、ネット集客の導線整備が不可欠です。ネット集客というとネット媒体やSNSの有料広告をイメージしがちですが、いきなりそこに手をつけてもコストに見合う成果が出るとは限りません。効率よく成果をあげるには、3つのステップに分けて導線づくりを進める必要があります。
第一段階は予約のインフラと導線の整備です。『予約のリードタイム』のグラフで示したように、訪日客のネット予約は4分の1が当日予約。Googleマップの普及が影響していますが、外国人客が自店に興味を持ったとしても、予約ページが日本語表示だけだと離脱されてしまいます。予約ページの多言語対応など、受け皿づくりだけでも集客効果は現れますから、そのうえで第2段階の集客強化施策、第3段階の露出の拡大に進む必要があります。




ネット集客のインフラ・導線を整えるのはさほど難しいことではありません。まず、やるべきはGoogleマップの掲載情報の整理ですが、その中で見落としがちなのがGoogleマップ上に掲載されるメニューの多言語表示です。
口コミは自動翻訳されますが、固有名詞などを含む商品名などのページは自動翻訳されないため、言語別に手動で商品名と商品説明を登録する必要があります。そのうえで、多言語対応の予約ページに直接飛べるリンクをGoogleマップ上に設定すれば導線整備は完了です。


中国ではGoogleの利用が規制されているため、別のインフラ・導線の整備が必要です。押さえておくべきは、中国で外食店探しに広く利用されている店舗情報と口コミのプラットフォーム『大衆点評』。申請制にはなりますが、有料会員でなくても情報の登録や修正は可能です。そのうえで、ぜひ挑戦していただきたいのがウォークインチケット(WIT)です。WITは中国で普及している事前決済型のクーポンサービス。おすすめの商品やコースをWITとして販売すると、中国人旅行者の集客につながります。

焼肉一心たん助 有楽町
東京都内に5店を展開する「焼肉一心たん助」は、牛タンをメインにした焼肉食べ放題店だ。インバウンド客の利用も多かったが、予約客のノーショーが課題だった。とくに予約客の割合が9割を超えるため、ノーショーが売上げダウンに直結する。集客力は十分だったことから、海外OTAへの掲載はせず、GoogleやSNSから事前決済が可能な多言語対応のJapanTicketの予約フォームへつなぐ導線を整備。食べ放題コースを事前決済に切り替えることでノーショーによる損失を抑えた。
かにざんまい 新宿店
インバウンド需要の高いカニとすしの食べ放題を提供する「かにざんまい」。外国人向けの予約導線がなく、予約ページも日本語のみで離脱を招いていたが、2025年5月に多言語対応の予約ページを開設。ユーザー端末が日本語設定の場合はebica、外国語設定だと事前決済対応のJapanTicketに誘導する予約機能を整備し、同時に海外の情報サイトには訪日客向けの1万7380円のタラバ蟹食べ放題コースを掲載した。東京・新宿の新宿店は外国人の事前予約数が200〜300人に増加した。
【タラバ蟹 食べ放題コース】1万7380円
神戸ビーフ焼肉 お加虎三宮店
「大衆点評」でウォークインチケット(WIT)に対応し、中国人観光客を集客しているのが兵庫・三宮の「神戸ビーフ焼肉 お加虎」三宮店だ。WITは高単価な商品に注文を誘導でき、客単価アップにもつながる。そうした特性を踏まえ、お加虎では2人前1万500円、3人前1万3000円の肉玉手箱セットを名物メニューとして訴求した。大衆点評で5%オフのWITを販売した他、5%オフの金券1000円も用意。その結果、WIT経由の売上げは月当たり100万〜200万円に達している。
デニーズ 浅草雷門店
インバウンド客の朝食需要に照準を合わせ、大きな成果を挙げたのが東京・浅草の「デニーズ」浅草雷門店だ。大衆点評で「朝食」が検索キーワードのベスト10に入っていたことに着目。同サイトの店舗ページを公式情報で整え、「朝7時から営業」「朝食に最適」と中国語で訴求し、おすすめのモーニングメニューの写真を掲載した。国内でも評価の高いデニーズのモーニングメニューを正しく情報発信した結果、ページの閲覧数が月127件から533件へと4倍超に増えた。
「月刊食堂」2026年10月号掲載

コロナ禍で落ち込んだ訪日外国人客数は、2025年にふたたび過去最高を更新しました。旅行者1人当たりの外食支出額から算出したインバウンドの市場規模も伸び続けています。この成長市場を攻略する必要性は今後ますます増していくでしょう。
10月号では、SNS発信やネット集客の導線整備など、低投資でできる施策で成果をあげたケースから、資本とノウハウを集中投下して世界進出まで見据える事業構想まで、さまざまな目的でインバウンド獲得に挑戦する事例をご紹介します。