月刊専門料理2018年7月号
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――今月はコイの前編。栗栖正博氏、荒木稔雄氏、石川輝宗氏、髙橋拓児氏、中村元計氏が調理を行なう。 コイがテーマの前編。秋~春先を旬とするが、鯉のぼりにちなみ、端午の節句の時季にも好んで食される。この時季、産卵期を迎えるが、今回調理担当5人全員が卵を使わず魚体のみを使用している。味噌漬けという手法でアプローチを試みたのが栗栖氏と中村氏。栗栖氏はあぶってから夏野菜と合わせ、酸味のきいた和えものに、中村氏は皮を残してシンプルな油焼きに仕立てている。比較的淡白な身質なだけに、味噌の強い旨みとの好相性を一同再認識したようだ。一方、石川氏はコイのウロコ付きの刺身を披露。ウロコをゴマ油でパリパリになるまで焼き、身は生としているが、この温度差や触感が心地よくないとの声も聞かれた。鯉こくの他、ウロコ煎餅など昔からウロコを使った定番の仕立てがあるだけに、そうした伝統から学ぶことも多そうだ。また今回、川魚特有の生臭さに対し、硬水を使ってアタックをしたのが荒木氏だ。強塩をしたアラに硬水と昆布、酒を合わせてだしを引き、臭みをいっさい感じさせないクリアな吸い地に仕立てて一同の関心を買った。ことコイに限らず、めざす味わいに応じて水の硬度を変えることが、今後重要になっていくかもしれない。柴田日本料理研鑽会石川 村田 石川 栗栖 石川 村田 (食べて)手強いなぁ(笑)。荒木 園部 確かに生ぬるい刺し身というの今日は僕の料理からお願いします。今回コイをいろいろ食べてみる中で、意外と皮とウロコもおいしいなぁと思いまして。それらを食べてもらうための刺し身を考えました。この赤いのは何?タレですね。玉味噌をベースに、コイの臭みを消すために梅肉とレモン果汁を加えて混ぜたものです。辛子酢味噌のイメージです。ウロコは食べられるん?はい。コイの泥臭さを和らげるために、香りの強い太香ゴマ油を熱したフライパンで、骨切りしたコイをウロコ側だけ加熱してパリパリに仕上げました。身には火が入らないように急冷して。で、提供直前にまたウロコだけ軽く香ばしく仕上げています。確かに輝ちゃんの言うように皮のパリパリ感は表現できていておいしいと思うんですけど、コイ自体、味がそんなにないからこの味噌ダレの味にもう少し食べやすかったかもしれません。あと個人的にはこの温かいウロコと冷たい身、という温度差がどうも心地よくなくて……。は気持ちのいいものではないですね。コンフィみたいに低温の油で加熱するすべて持っていかれている気がしますね。せめて皮と身を別々にして、タレを好きにつけて食べる仕立てにしたらよかったんちゃうかな。実は今回コイがテーマに決まってから、コイ料理専門店に行って勉強したんですよ。そしたらウロコ煎餅とお造りは別々に出すのが定番みたいやったから、それと同じことをしても仕方ないよな、と思ったんです。専門店の人らは身と皮を一緒にして出すのが無理あると判断したから別々にしてはるんちゃう(笑)?私もこの仕立てには少し無理があると思いますわ。ウロコは確かにパリパリやけど、皮の下のゼラチン質のところが残っていて噛みにくくて。あとこの味噌ダレの硬さも気になりますね。身とよく和えてあればいいと思うんですが、硬いテクスチャーやから合わさりにくくて、口の中でコイとなじむ前に、先にコイのにおいのインパクトが来てしまうんですよね。か何かで、コーティングされていたらなり、身にも何かしら火を入れたほうがいい気がします。まぁ、おもしろいことをしようとする前に、定番の仕立てをふり返ってちゃんとヒントを得たほうがええと思うわ。何年も受け継がれてきた仕立てっていうのは、それなりに理由があ石川 村田 一同 中東 髙橋義 村田 そうですね。味噌ベースの餡コイって案外皮とウロコもおいしいなぁと。それらを食べてもらうための刺し身を考えましたテーマ今月の前編コイ14279   笑 

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