月刊専門料理2018年7月号
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フランスには、料理を学びに世界中  から多くの人々が訪れます。確立された技術と長く継承されてきた伝統、多様な食材などの魅力が相まって、興味を引くのでしょう。私自身は以前はレストランで、今は料理学校で、フランス料理文化の伝達に取り組んでおり、技術はもちろん、季節ごとの食材や生産者のことなど、幅広く伝えています。今回紹介する二皿も、食材と技術の両方が揃って初めて完成する品です。 フォワグラは伝統的にはテリーヌが定番で、ポワレなどの温かい料理は1970年頃に誕生した比較的新しい仕立てです。フォワグラの温菜の中ではエスカロップのポワレが一般的ですが、火加減の見極めなど高度な技術が必要。そこで私が着目したのが〝真空調理〟です。低温でやさしく熱することで、組織を壊さずに均一な火入れが可能となります。当然ロティールやポワレもできますよ、手と火を駆使する技術を叩き込まれたわれわれの世代はね(笑)。でも今は時代も違いますし、便利な技術はどんどん活用すべきです。フォワグラは丸ごと真空にかけ、65℃、を入れます。代表作「ジビエのピティヴィエ」のように私は分け合う料理が好きで、「フォワグラも肉料理のように塊をデクパージュしては?」と思い、約20年前から丸のまま調理するレシピをいろいろ考案してきました。もう一品の牡蠣とアスパラガスの組合せは、昔からポピュラー。ジョエル・ロブション氏の店に勤めていた時、牡蠣のクリーム仕立てにグリーンアスパラガスを合わせた料理がありましたっけ。ただ私はグリーンよりも、より酸味と苦みが強いホワイトアスパラガスのほうが牡蠣に合うと思います。牡蠣はほんの少しスチームコンベクションオーブンで温めて表面を凝固させ、風味を逃さずにプリッとした触感にするのがポイント。一方のホワイトアスパラガスは落し蓋をしてゆでて風味を凝縮させ、香り高いクリームとします。数年前からは甘草のシロップを加え、アニスのような香りでまろやかな二つの食材を引き立てています。住所/13-15 Quai André Citroën, 75015 Paris 電話/01 85 65 15 00 https://www.cordonbleu.edu/paris/accueil/fr56℃と2段階の加熱で、じんわり火エリック・ブリファー1961年ブルゴーニュ生まれ。'88~'89年にロイヤルパークホテル(東京・水天宮前)料理長を務める。帰国後「ジャマン」でジョエル・ロブション氏の右腕を務め、「ル・レジャンス」、「レ・ゼリゼ」、「ル・サンク」(すべてパリ)のシェフを歴任。'94年M.O.F.取得。2016年にル・コルドン・ブルー・パリのシェフ・エグゼクティブ&料理文化ディレクターに就く。ル・コルドン・ブルー・パリ1895年にパリに創立した、フランスを代表する料理学校「ル・コルドン・ブルー」。今や世界20ヵ国以上に学校を持つ。その旗艦となるパリ校は2016年に、15区はセーヌ河岸の総面積4000㎡の新校舎へ移転。最新の厨房設備を備える他、屋上には野菜やハーブなどの菜園、養蜂箱なども設ける。プロの料理人やパティシエ、ソムリエをめざす人のための専科コースの他、プロ向けの技術向上コース、一般向けのアトリエなど、多くのプログラムを提供し、世界中から、フランス料理を学びに来る人々を受け入れている。'16年から、シェフ・エグゼクティブ&料理文化ディレクターに、エリック・ブリファー氏が就任し、より充実した教育内容を提供している。

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