月刊専門料理2018年7月号
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Florilege——今回は夜のコースを紹介いただきます。「投影」、「サスティナビリティー」など、印象的なメニュー名が目立ちますね。 大きな厨房を囲むようにカウンター席が配された、〝劇場型レストラン〟の最たる例とも言える「フロリレージュ」。オーナーシェフの川手寛康氏は、環境に配慮して生産された国産食材を中心に使った品々を、その内装を生かしたライブ感あふれる楽しいプレゼンテーションで提供する。メニューは昼7000円(約7品)、夜1万3000円(約11品)のおまかせコースのみ。2015年の移転から1年半ほどは、まず全品それぞれのテーマを決めてから次に食材や味をあてはめるスタイルを採っていたが、最近は「サスティナビリティー」といった、店の核とし続けたいテーマの品を定番として残し、他はテーマにとらわれずより季節感や前後の緩急を意識した品々でコースを構成。ワインやカクテルペアリング(各9000円~)の他、ノンアルコールカクテルペアリング(7500円~)を備えるなど、ドリンクメニューでも独創性を打ち出している。このようなメニュー名は、今はコース内    に4~5品ほどで、これでも以前より減らしたほうなんですよ。というのも、もともと移転して1年半ほどは、皿ごとに「季節を投影する」、「サスティナブルな食材を使う」といった明確なコンセプトを決め、全品に強いメッセージ性を込めたコースを提供していたんです。その頃は「本質」、「風土」、「再生」、「ヘテロ」など、コンセプトに基づいたメニュー名を全品につけていたのですが、今は食材や味わいから料理を考えることも多く、そういう品は食材名だけを並べたメニュー名としています。実は最近、コンセプチュアルすぎるレストランから脱却しようと思いはじめまして……(笑)。テーマに縛られると、料理表現が窮屈になってしまうと気づいたからです。私が料理やこの店を通して伝えたい考えが変わったわけではないので、現在はその考えの核となる部分である「投影」、「サスティナビリティー」、「分かち合う」、「贈り物」などを定番として残し、他の品を食材の仕入れごとに変えるスタイルとしています。なお定番品も、サスティナビリティー以外は、メニュー名とコンセプトは同じでも季節ごとに使う食材を変えています。今回はアミューズ、前菜5品、魚料理、肉料理、デザート3品、プティ・フールの12品ですが、品数も食材と各品のポーションによって前後しますね。私は「日本から発信するフランス料理」を大切にしているので、日本の風土の特徴である季節感はコースに欠かせない要素。1皿目のアミューズ、「投影~」はまさにそれを象徴したもので、旬の野菜を主役とした品を「季節を投影」する意味で毎回お出ししています。今回はヤングコーンのポレンタをその皮に詰めたものと、ナスの皮で作ったタルト生地にナスの果肉のムースを詰め、スプーンに盛ったもの。それぞれ単体で出すこともあり、その場合、たとえばヤングコーンは籠に複数を盛って提供し、川手寛康162018年7月号撮影/合田昌弘 取材・文/源川暢子

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