月刊ホテル旅館
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とデザインの価値を社会に問う実験でもあり、既存の価値観を変える挑戦でもあった。セミラミスは東京で比較するなら立地的にも自由が丘という印象の富裕層が多いキフィシアにあるのだが、建設時は奇抜なデザインのため市の許可がなかなか下りなかったという。ホテル自体を目的地として、滞在を非日常エンターテインメントにまで昇華させた提案は、インターネットの波に乗って世界に知られるようになった。国別に宿泊客が多いのは自国ギリシャとイギリスからの宿泊客で約2割ずつ。アメリカからが1割弱で、その後にイギリスとカナダが続く。 デザインのコンセプトは曲線とロリポップカラーで、プールや会議室に至るまでコンセプトは統一されている。特徴的なのは透過性のあるカラーアクリルが多用されていることである。単にインテリアとしてだけでなく、テーブルはもとよりシャワールームとの仕切りであったり、洗面所自体がアクリルであったりとふんだんに使われ色彩を放っている。それはカラフルではあるがサイケデリックではなく、派手ではあるが清潔感があり好感が持てた。また、オーナーの美術コレクションで構成されているホテル内の展示アートも半年ごとに変え、リピーターも常に新たな楽しみが持てるようになっている。35▲ロビーからメインエントランスを見る。この赤い空間が、外とホテル内のデザインワールドとの境目になる。待ち合わせだけでなく境界の気分を楽しめるよう、椅子も置かれている。▶ロビーから屋外のレストランカフェに向かう。乾燥したエーゲ海の国では屋外で食事することが一般的で、快適でもある。▼プールのデザインも個性的で、色調もカラフル。海の国ギリシャにおいて、ホテル内には独自の世界が展開されている。  

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