月刊ホテル旅館2017年10月号
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花見小路建仁寺自然光が入る中庭に面した地下フロアの客室ドアは蔵で使われた引き戸を用いるというこだわり方だ。フロント横には伝統工芸品を飾る年代もののショーケースが配置されている。フロントから広がるロビーラウンジは、バーやレストランと一体化し、ワンフロアで構成。宿泊客がいろんなスタイルで「滞在」を楽しんでもらえるようなスペースとしている。ロビーラウンジには、キモノ作家&キモノデザイナーの斉藤上太郎氏によるキモノファブリックや着物のディスプレイ、クッションを置き、ヨーロッパで購入した年代物のサッカーゲーム、マテリアル感覚の照明やアンティークなダイニングテーブルを設置するなど、和洋の文化をみごとに融合させた、居心地のよい空間を創造している。隣接するバー「KONJIKI金色」(以下KONJIKI)とレストラン「TAKEDOKORO竹処」(以下TAKEDOKORO)も細部に至るまで日本文化を取り入れた。ウイスキーのボトルが並ぶ棚は、船底に使用された古木を用い、背景には和室の欄間を組み合わせてインテリアにしている。屏風風の壁や金属風に加工した柱、劇場で使用していた椅子などがさりげなく置かれるなど、クリエイターの感性が光る空間である。地下に設置した大浴場「KOMOREBIこもれび」も、日本の伝統文化に最新の海外の技術を取り入れた、幻想的な雰囲気を体感できる空間となっている。男女各1ヵ所備え、ロッカー数は15個、洗い場は6ヵ所ある。脱衣室、浴槽の仕様は男女で同じだが、浴室内にある庭が異なる。男性用が岩、女性用が木で、そこに当たる光が自然光に近い最新の技術を用いているのである。この技術は、インスブリア大学(イタリア・コモ市)の物理学者であり、光学分野の教授であるPaolo di ロ・ディ・トラパーニ)氏が開発した太陽光と見分けがつかない人工光なのだ。これを調節して、朝と夕景のシーンを演出する。浴槽に光が差し込み、水面がゆらぐと、なんともいえない幻想的な空間となる。鳥海貴義支配人は次のように話す。「付帯施設としては、ジムという選択肢もあったのですが、市内では大浴場を併設しているホテルが少ないことから設置が決まりました。地下にありながら自然な光を感じる幻想的な浴場はたいへん好評ですね」営業時間は18時~午前1時まで、朝は6時~11時まで。部屋着では難しいが、部屋内のスリッパを履いたままでも利用できる。女性客にはチェックイン時に入浴専用キーを渡し、入退室をしてもらう。また客室階を含めて各階のエレベTrapani(パオータホールでは、「サインとしてのアート」計画に取り組んでいる。地下1階~地上4階までのエレベータホールには各階のサインとして、アートの組み合わせを採用。ルネ・グリュオ、アントニオ・ロペスを筆頭にファッション雑誌『VORGUE(ヴォーグ)』の表紙を飾った作品など、20世紀を代表するイラストレ―ターのコレクションから「世界の女性と京都」をテーマにセレクトした作品をサイン代わりとするなど、細部に至るまでアートの香りが漂う。主要施設となる客室は全105室、基本的に1室2人収容で計213人収容。床は絨毯、フローリング、畳敷きの3つの仕様があり、すべてフラットのバリアフリー設計だ。畳はオリジナルサイズの縁なし長方形で、グランベルブランドでは今回初めて靴を脱いで入室するスタイルを採用している。客室と客室廊下の絨毯は、壁画を             を、床面に表現した。石畳の上に映企画・制作しているアーティスト、はやしまりこ氏の作品「祇園の夜」59  月刊ホテル旅館2017年10月号●京都グランベルホテル立地図●京都グランベルホテルフロアマップ

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