月刊食堂19年7月号
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売却も立派な経営判断のひとつ金額が200万円と手が出る金額だったこともあり、09年8月にその運営会社をM&Aしました。のの、当時の私には現場を指導していく力がなかった。結局、経営を立て直すことができず、2年間で2000万円の赤字を出してしまった。本業の業績がよかったのが不幸中の幸いで、M&A仲介業で稼いだ利益で給食事業の赤字を補填していました。ただ、こうした状況が続くようでは本業にも悪影響をおよぼす懸念が出てきました。そこで11年10月に知人の外食経営者に1円で株式譲渡し、2500万円の負債もそのまま引き継いでもらいました。事業再生の計画を立てていたもいまにして思うともっと早いタイミングで判断すべきだったと思います。ただ、当時は私自身も買い手がつくと思わず、相談相手がいないこともあってなかなか行動に移せませんでした。その決断ができたのは、11年4月に唯一黒字だった店を施設側の意向で撤退しなくてはならなくなったことがきっかけです。背に腹は変えられぬ状況に追い込まれたからなんです。高い授業料を支払いましたが、    この経験があるからこそ仲介業者として売り手や買い手に細かく対応できるようになったと自負してます。当社が中小企業の救済、事業の選択と集中といった案件を中心にM&Aの仲介に取り組んでいるのは、こうした経営判断を下せずに悩んでいる経営者を助けたいからなんです。これまでは事業を興したら、最後まで走り続けることが美徳とされてきました。しかし、その結果が倒産では悲惨です。いまや転職が当り前になったように、経営者も状況に応じて経営を手放すことを考えるべき。会社を売ることは勝ち負けではありません。経営判断として冷静に考えていただきたいというのが私の主張です。新連載現代の文脈では、外食M&Aというと成長戦略か事業承継の₂つの側面から説明されることが多い。しかし、現実には止むに止まれぬ事情から会社や事業をM&Aで売却せざるを得ないケースもある。たとえば不採算事業を抱え、自社の力だけでは再生が難しいケース。こうした時にM&Aを活用することで最悪の事態を回避できることもある。本連載では救済型案件に強いM&A仲介業の㈱ウィットの三宅宏通社長が事業の厳しい局面をM&Aによって脱した事例を解説していく。第₁回は三宅社長自らが体験した給食事業の売却についてとりあげる。㈱ウィットの三宅宏通社長のM&A体験談には続きがある。2011年10月に知人の外食経営者に給食会社を1円で売却した際に、2500万円の債務も手放せた。しかし個人の連帯保証が外れていなかったのだ。三宅氏にとってはそこに合意したうえでの売却だった。というのも、連帯保証に6人が名を連ねていたため、万が一のことがあっても返済できると考えていたのだ。ただ、いざ給食の運営会社が倒産した時に、6人中4人の連帯保証人がすでに自己破産していた。そのため、三宅氏とその前オーナーの2人に2500万円の返済義務が生じたのだ。 このように会社としての負債はM&Aで解消できても、個人としての連帯保証は残る。これでは本当の意味での安心にはつながらない。負債処理を目的とした救済型M&Aを考えるのであれば、債務を一括返済してもらう、あるいは新たな借入れを起こしてもらうなどの手段を講じて連帯保証を外すことが重要だ。91㈱ウィット東京都渋谷区恵比寿南1-7-8 恵比寿サウスワン ☎03-6452-2190連帯保証㈱ウィット三宅宏通社長のM&Aホット

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