そばうどん2020
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京都・北山すぎばやしたかゆき杉林隆行氏(65歳)が電動石臼を初めて自作し、福井・大野の畑を訪ねたのは1994年、39歳のとき。開業は翌95年1月。時代は三たてブーム真っ只中で、「じん六」もその1軒かと思われた。しかし、杉林氏の言葉がほかのそば店とは異次元であることに一部の同業者やそば愛好家たちが気づきだす。その言葉とはたとえばこうだ。「石臼はまわっていればいいのではなく、目立て、回転速度、落とし込みの量などをコントロールできていなければ意味がない」「ゆがく時間が1秒、いや0・25秒違うと風味が変わる」「そばは冷やすのではなく、そのときどきの適正温度にしてこそ味と香りが出る」 90年代において、とくにそば店やそば打ち職人には衝撃の言動の連続だった。歯に衣着せぬ杉林氏を変人扱いする人も大勢いた。しかし、見出した知識や技を惜しみなく人々に伝えようとする姿勢は人一倍強く、ともに歩むそば店や理解を示す職人が増え、やがては全国から大勢が駆けつけるようになり、杉林氏の発言は重みを増していった。杉林氏に教えを請う人は数えきれない。昨今注目を集めている都内の某有名店の主人、京都の外資系高級ホテルの和食料理人、二八そばを身上とする著名な一門の1軒、勤めていたそば店を退職し一から勉強しなおしたいという職人――。また、製粉所や機械メーカーの技術者たちもやってくる。さらには、異次元の論理が人々を魅了0301955年、京都生まれ。会社員時代にそば打ちをはじめ、電動石臼を自作したり、産地に原料を仕入れに行くようになる。95年、退職して「じん六」を開業。15年、店があった土地にマンションが建ち、その1階で「蕎麦屋 じん六」としてリスタートする。蕎麦屋 じん六杉林隆行すぎばやしたかゆき住所/京都市北区上賀茂桜井町67電話/075-711-6494URL/http://www.zingrock.com営業時間/11:45~17:00(L.O.)     そばがなくなり次第終了定休日/月曜、第4火曜店舗規模/20坪21席開業/1995年(再開業/2015年)  

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