cafe-sweets vol.189
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{ pa i   n stock }右/厨房では、朝5時から夕方5時まで平山さんを含めた常時7人が製造に携わる。スタッフもオーブンもミキサーもフル稼働。14坪の厨房から日商90万円に達する量のパンを送り出すべく、仕事は綿密に分担。左/小麦粉は、仏・デコローニュ社の1種(写真右)以外は国産。梅野製粉(福岡・八女)から筑後小麦の全粒粉を毎週挽きたてで配達してもらうなど、産地に近いからこそできる仕入れがパンづくりに生きている。感じとりにくくなる。だから、僕は形のきれいさとか大きく膨らませることは求めません。パンづくりの主役は人間ではなく、酵母や乳酸菌や酵素など生地の中にいるもの。環境をととのえたらなるべくさわらず、何が起きるかを楽しみに待ちたい」低グルテン志向の背景には、小麦アレルギーの人もパンを楽しめるようにとの願いもある。タンパク量ばかりを求める小麦栽培への疑問もある。自然に育つ日本の小麦で無理なくおいしいパンをつくることを考え、平山さんが膨らみの代わりに重視するのは、すっと舌になじむ口溶けのよさだ。これはpHや本来小麦がもつ分解酵素の働きをみて調整するのだという。もともと何についてもじっくり考えるのが好きな平山さんにとって、ハード系のパンは「研究対象」。すぐに結果が出なくても、自分なりに調べて理解する。その積み重ねが自身のパンづくりの根となると話す。たとえば、めざすイメージに合わせて小麦粉や酵母をブレンドする。生地の要素を「でんぷん」「タンパク質」「水」、さらには分子の種類にまで分解して考えるから、米や野菜も生地の一部になり得るし、副材料のナッツやフルーツも生地に油脂分や甘みを加えるものととらえて使う。多彩な素材を自由な発想で組み合わせ、独自のパンを生み出している。食事パンで他店と差別化!ハード系パンで目的客をつかむオーナーシェフ生地を分子レベルで考え、新しいパンを発想する033大学卒業後パンの道に進み、福岡、パリ、東京で計12年間修業。当時師事した志賀勝栄氏(現「シニフィアン・シニフィエ」オーナーシェフ)などの影響から2010年の開業後もパンの可能性を探り続ける。米など小麦以外の穀類を生かす製パンも最近のテーマ。19c Baguette「19世紀の製法」をテーマに開業時からつくり続けるバゲット。ポイントは、最小限のイーストで長時間発酵。「めんたいフランス」(47頁参照)用も含め1日800本焼く。(260円)じゃがいもとローズマリーのルヴァンジャガイモのピュレを練り込み、もちもちと食べやすく仕上げたパン。具材でなく生地の一素材として野菜を使う考え方がユニーク。ブリオッシュ生地にカボチャの例も。(300円)筑後小麦の全粒粉とくるみのルヴァン毎週届く挽きたての地元小麦の全粒粉に大麦粉、クルミなどを加え、しっとりとした食感に。「体によくて毎日食べられるパン」というお客の要望にこたえて誕生。(1/2個・500円)カカオ・ルージュ・ショコラフルーティな酸味、香り、渋み。ココア入りライ麦生地でカカオの魅力を表すルヴァン。クランベリーなどの乾燥果実が長時間熟成で生地と一体化し、凝縮された味に。(380円)パンストック「パンの保存(ストック)」という店名を具現化したライ麦パンは、「冷凍できる、もちもちのルヴァン」がコンセプト。みずみずしい生地と穏やかな酸味が特徴。(1/2個・260円)熊本産小麦と無農薬玄米のリュスティックサンプルで届いた「くまきらり」(発売時期は未定)の「お米のような甘み」に着目し、有機玄米を混ぜて加水率100%で生地に。餅のような食感とやさしい甘みのパン。(160円)Profile平山哲生さん

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