菓子店パン店開業読本
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200万円×3ヵ月=600Q1Q2自己資金はどのくらい貯める?2014年3月の制度改訂時に自己資金開業に必要な自己資金は「開業資金の3分の1以上」が目安。たとえば、開業費用が1200万円なら、自己資金として400万円以上を蓄えておくことが望ましいでしょう。菓子店、パン店の開業者が資金調達のの A 3142 A要件は「開業資金の手段としてよく利用する日本政策金融公庫でも、以前は自己資金要件を「開業資金の3分の1以上」に設定していました。更されましたが、自己資金の比率が下がれば、そのぶん返済負担も大きくなります。標準的な菓子店、パン店の収支モデ上」に変ルであれば、開業後の資金繰りから逆算すると、開業資金の3分の1以上、最低でも4分の1以上を用意しておく必要があります。また、融資の審査で自己資金をどうやって工面したかも重視されます。一般的には手元にある資金はすべて自己資金ととらえがちですが、金融機関ではとらえ方が異なります。金融機関は「タンス預金」などの現金は原則として自己資金とはみなしません。借金などで一時的に手にした「見せ金」の可能性があるためです。実際に積み立ててきた資金でも、タンス預金と見せ金の違いを客観的に説明することはできませんから、資金は金融機関に振り込んで通帳などに資金を積み立ててきた履歴を残すなど、下記の自己資金の注意点を踏まえて計画的に自己資金を蓄えるようにしましょう。開業資金というと設備資金ばかりに気をとられがちです。しかし、菓子店、パン店の運営には仕入れ代金や人件費、家賃、水道光熱費などの経費がかならず発生します。通常は売上げをそうした経費にあてますが、開業当初は売上げが安定しませんから、不足分を補うための運転資金をしっかりと準備しておく必要があります。経費を切り詰めれば、思うような商品のクオリティを維持することはできません。つねに営業に本腰を入れられるようにするには、たとえ売上げがなくても3ヵ月分の経費を賄えるだけの運転資金を用意しておくのが理想的です。月商250万円、営業利益率20%(営業利益50万円)であれば、月あたりの経費万円が運転資金の目安になります。1971年東京都生まれ。獨協大学大学院経済経営情報専攻 財政学研究修了後、98年にOAG税理士法人に入社。2009年に㈱OAGコンサルティング取締役、12年に代表取締役社長に就任。企業の経営改善および再生支援を請け負うかたわら、飲食店の開業や成長のための経営支援を数多く手がける。㈱OAGコンサルティング財務、会計を中心に幅広いサービスを提供するOAG税理士法人のコンサルティング部門を独立するかたちで2009年に設立。中期事業計画や事業再生などの支援事業をおもに手がけ、そのほかにも事業計画書の作成や資金調達の支援といった起業サポートの実績も豊富に有する。121自己資金の注意点資金積立ての履歴を残す資金援助は「贈与」のみ開業資金の3分の1以上が必要「見せ金」は厳禁見せ金との区別を明確に示すため、自己資金の積立ては通帳などにしっかりと履歴を残しておく。積立ての履歴は、資金を計画的に貯めてきたか、事業に対してどれだけ熱意をもっているかなどを確認するバロメーターの役割も果たす。親族、知人などからの資金援助は「贈与」の場合のみ自己資金として認められる。無利子で、返済期間を設定していなくても、返済が必要な場合は「融資」となり、自己資金に含めることはできない。日本政策金融公庫の融資制度は改訂によって「開業資金の10分の1」まで自己資金要件を下げている。 ただ、融資の割合が大きいとそのぶん借入金の返済負担が大きくなる。標準的な菓子店、パン店の収支モデルに鑑みると、自己資金は開業資金の3分の1以上が必要だ。借金などで一時的に手にした資金は自己資金とは認められない。また、自己資金を多めに見積もって融資を申請し、それを審査で見破られれば、数年間にわたって融資が受けられなくなる恐れもある。取材・構成/栗田利之 イラスト/島内美和子㈱OAGコンサルティング田中繁明さん代表取締役㈱OAGコンサルティング/東京都千代田区五番町6-2 ホーマットホライゾンビル ☎03-3237-8008(代)菓子店、パン店を開業するには、1000万円単位の多額の費用が必要となりますが、どう開業資金を工面するかに頭を悩ませる人も多いでしょう。想定していた資金を得られず、開業を断念したり、思いどおりの店をつくれずに開業後に苦労するケースも少なくありません。そこで開業者がつまずきがちな“お金の問題”について財務、会計のプロがわかりやすく説明します。10分1以運転資金はどれだけ必要?“お金の問題”に答えます開業時における

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