cafe-sweets vol.184
17/19

{ChandOt '}1243      iseau 独立してから7年が経った今は、焼き菓子に限らず、自分のおいしいと思う菓子を素直につくれるようになりましたね。開業当初は気負いもあって、フランス菓子にこだわっていた部分もあったのですが、最近ではオーストリアやドイツの菓子もつくるし、和素材も積極的に使っています。コンセプトをとくに設けずに、自分が出合って魅力を感じた菓子をつくっているイメージです。焼き菓子に関しては、定番商品だけでなく、パン・ド・ジェンヌのようなフランスの郷土菓子や修業先のベルギーでつくっていたスペキュロスなど、特色のあるアイテムもそろえています。その一方で、最近、自分が子どものときに好きだったバタークッキー――「ミスターイトウ」でしたっけ(笑)――から発想した「ガレットオブール」もつくりはじめました。こうした日本人になじみのある菓子から新しいアイテムをつくることで、商品の幅を広げて、地元の方から愛されるような菓子店になっていきたいです。とはいえ、必要以上に地元の方の嗜好に合わせないように心がけています。当店は住宅街も近いので、主客層は地元住民の方々です。だからといって、ご来店いただいた10人のうち10人においしいと思ってもらう必要はなく、10人のうち1人でも2人でもいいから当店のファンになってほしい。「シャンドワゾーの菓子が好き」というコアなお客さまがいなければ、競合店がひしめき合っているこの業界で生き残っていくことはできないからです。焼き菓子のルセットは、日々改良を続けていますね。とくに質感については気を遣っています。粉やバターの風味ももちろん大切ですが、それ以上に口に入れたときの質感が重要だと考えるからです。質感を左右する要素の一つが砂糖で、グラニュー糖の代わりに粉糖を使えば、より繊細になるし、ヴェルジョワーズを使えばザクッとした口あたりになるというように。こうして理想とする質感をめざしているのです。現在、当店における焼き菓子の売上比率は2割程度。生菓子に比べて原価も低く、ロスも出にくい焼き菓子が安定して売れているので、経営的にはとても助かっています。パティスリーの焼き菓子、注目のアイテム焼き菓子は口に入れたときの質感をとくに重視1.埼玉県内のJR川口駅から徒歩7〜8分の場所に立地。駅前から続く商店街がちょうど切れたあたりに店を構えている。店を通り過ぎると住宅街が広がっており、地元住民が主客層だ。 2.白とダークブラウンで統一された店内。入口を入って正面に生菓子用のショーケース、その右隣にチョコレート用のショーケースなどを設置。焼き菓子は、右手の棚と中央の陳列台に並べている。3.売り場中央に設置した陳列台には、個別包装のサブレやクリアケース入りの小ぶりのギフトボックスを陳列。クリアケース入りのギフトは、サブレなどを詰め合わせて1000円前後の使い勝手のいい価格設定にしている。 4.売り場右奥が贈答用菓子のコーナー。1000円台〜3000円台の焼き菓子の詰合せを陳列している。065オーナーシェフ村山太一さん1979年埼玉県生まれ。「パティスリー シェーヌ」、「パティスリー アカシエ」を経て渡欧。ベルギーの「ヤスシササキ」、「コルネトワゾンドール」で研鑚を積み、2010年に独立開業。17年9月にアイスクリームとチョコレートの専門店を出店。焼き菓子の陳列棚。下段にはパウンドケーキやマドレーヌなど個別包装した焼き菓子を並べ、上段にはサブレやメレンゲ菓子といった菓子をビニールで包装して陳列している。写真は定番のマドレーヌやフィナンシェ、ガレットやパウンドケーキなど14品を詰めた「ギフトボックス(中)」(2070円・税別)。住宅街に近い立地のため、地元の人が贈答用に購入するケースが多い。型にはまらず、自分のつくりたい菓子を提供する

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る