新・フードコーディネーター教本2020
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第1章食の歴史と文化と風土10人類の食生活を考えてみよう。まず、狩猟、採取という、そこにあるものを食べていた時代からはじまり、農耕、牧畜の発展へと続く。これは人間の食生活を根本から変えたといえる。定期的に食物を得ることができるようになると、調理という技術がそこに生まれ、習慣と形式という方向へと発展していく。また、気候風土や自然という人間の力ではいかんともしがたい大きな力に対して、限りなく寄り添い、理解していくうちに、人間は食物の性質をじっくりと学ぶこととなった。そんな根本的な食へのかかわり方から、さらに、社会的・政治的なことまでも包含して食の歴史は進展する。つまり、支配階級の出現により、食は新たに洗練と様式美の方向へと向かっていくのである。洋の東西を問わず、一部の支配階級によって食は文化的側面を充実させながら進化をたどりはじめる。もっとおいしく、もっと楽しくという欲望は、調理技術はもとより、食べ方、サービスの仕方にまで、幅広く変化をもたらした。すべてのフードコーディネーターにとって、本章の歴史、文化、風土といった知識は将来直接仕事と結びつくものではないかもしれない。しかし、これらはまぎれもなく食のおもしろさの醍醐味そのものでもある。食の奥深さを一生第1節 概説

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