追悼

渥美俊一先生

流通革命を先導した
「日本のチェーンストアの父」



 鞄本リテイリングセンター代表取締役で、チェーンストア経営研究団体「ペガサスクラブ」を主宰する渥美俊一先生が2010年7月21日、逝去されました。享年83歳でした。
 謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
 渥美先生は1962年にペガサスクラブを旗揚げして以来、一貫したチェーンストア理論のもとに日本の流通革命を先導してこられました。ペガサスクラブから育ち、ビッグストア化(年商50億円以上)を果たした企業は約700社。しかしそうした数字以上に、チェーンストア産業の育成を通じて大衆の生活をより豊かにしたこと、その産業に働く人々に勇気と誇りをもたせたことが、渥美先生の最大の功績といえるでしょう。
 もちろん、われわれ外食産業もその一員です。
 渥美先生は小社の月刊誌『月刊食堂』の創刊以来、50年にわたって毎月、誌上で提言を発表してこられました。柴田書店と月刊食堂の歩みは、常に渥美先生とともにありました。
 渥美先生の指導の中で、とりわけ一貫していたのが「ビジョンの重要性」です。今から50年も前に、飲食店でも100店、年商100億円のチェーンがつくれる、と主張し、そのために経営革新に取り組めと説かれました。
 その言葉に勇気づけられ、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン、すかいらーくといった企業が、先生の主張を見事に実現してきました。渥美先生の主張に触発され、その薫陶を受けた人々によって、日本の外食はそれまでの“水商売”から“産業”へと脱皮していったのです。

「飲食業のチェーン化志向企業の目的は、尽きることのない社会貢献である」

 これは2009年12月に小社より刊行された『フードサービス業 チェーン化入門』にある言葉です。先生が掲げた流通革命の本質を、これほど明快に表現した言葉はないでしょう。
 8月20日発売の月刊食堂では、渥美先生の追悼記事と合わせて、月刊食堂の創刊号に掲載された先生の巻頭提言をそのままの形で収載しています。その主張がいまなお新鮮な響きをもって伝わってくることに、驚きを禁じえません。そして同時に、先生が半世紀前に業界に提示した経営目標はいまだ完遂されていないこと、日本の外食業界には絶えざる経営革新が必要であることを痛感させられます。
 われわれ柴田書店もまた、これからも渥美先生の遺志を継ぎ、日本の外食産業のさらなる発展に貢献してまいります。

株式会社柴田書店
代表取締役社長 土肥大介


 



『フードサービス業 チェーン化入門』

チェーン理論の第一人者が解き明かす、
外食産業の21世紀戦略!

渥美俊一 著

発行年月:2009年12月20日


『月刊食堂 2010年9月号』

特集:居酒屋経営、次なる一手

〈追悼〉渥美俊一先生
日本のチェーンストアを育てた、その偉大な功績

〈特別再掲載〉『月刊食堂』創刊号(1961年8月号)より
巻頭提言「これからの食堂経営はどうなるか」

発行年月:2010年8月20日




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