健康やダイエットが大きく注目される昨今。「軽い料理」、「胃の負担にならない料理」はもはや時代の要請であり、現代のレストラン──とくに「重い」と言われがちなフランス料理店──に課せられた命題ともいえます。しかし、ただバターなどの油脂を排除し、野菜を多用すればいいというものではありません。レストランで提供するおいしさには、適切な量の油脂や動物性タンパク質も不可欠。大切なのは、きちんとフランス料理のおいしさを求めつつも、食べた時の印象を軽く、胃の負担にならないように仕立てること。
本書では、「水の料理」で知られる故ベルナール・ロワゾーの哲学を受け継ぐ山口浩氏が、「ソースは野菜のピュレでモンテする」など、普段から実践している「軽くておいしい料理」を作るためのテクニックをプロセス写真付きで紹介。それを踏まえた「軽さの料理」も125品収録しています。
*本書は、月刊『専門料理』2006年1月号から12月号で連載していた「フランス料理 軽さのテクニック」をもとに、大幅に加筆・訂正して1冊にまとめたものです。
「軽さ」はとても曖昧なものです。たんに摂取カロリーを減らすことを目的とするなら、動物性素材の使用を減らしたり、油脂を使わない調理法を採用していけばいいわけですが、レストランではそうはいきません。レストランに求められるのは「軽くて“おいしい”料理」。おいしさにはバターなどの油脂や肉類、フォワグラなどの素材、そしてボリュームも大切な要素です。これらを切り捨てるのではなく、しっかり使いながらも「重くない」「胃の負担にならない」料理に仕立てるには?
──これが本書のテーマです。フランス料理ならではのクラシックなおいしさや凝縮した味を踏襲しつつも、食後感を軽やかにする数々の工夫を本書では「テクニック」ととらえ、その背景にある考え方と具体的な手法をていねいに解説しました。
本書は、
(1) 軽さを実現するための考え方や具体的なテクニックと、
(2) それを踏まえて作った料理を紹介する二部構成になっています。
前半は、軽さを実現するために山口シェフが普段から行なっている野菜や油などの使い方、盛りつけや皿の構成の工夫を、プロセス写真付きで紹介しています。
具体的には、
・野菜のテクニック(野菜の調理法、野菜のピュレの活用法など)
・油のテクニック(加熱油のテクニック、ソース・ヴィネグレットなど)
・「軽さ」を表現するテクニック(食感で演出する軽さ、皿の構成法、効果的な盛りつけなど)
・その他のテクニック(機器で作り出す軽さ、砂糖を控えたデザートなど)
・「軽さ」を支える基本アイテム(塩、ジュ、トリュフ、キャヴィア、鳥類のさばき方とソースの仕立て方)
そして後半は、前半で紹介したテクニックを用いた料理を「軽さの料理」として、アミューズから冷前菜、温前菜、魚料理、肉料理、デザート、野菜料理(ムニュ・レギューム)まで合計125品紹介しています。
各料理解説の最後には、その料理における「軽さのポイント」を挙げ、検索しやすいよう対応する前半のテクニックのページを書き添えました。
本書では、こうした工夫もひとつの「テクニック」ととらえ、神戸北野ホテルの山口浩シェフに、普段から実践している野菜や油脂の使い方などの具体的な手法を教えてもらいました。
山口シェフは、「水の料理」で知られるヌーヴェル・キュイジーヌを代表する故ベルナール・ロワゾー氏の料理哲学を受け継ぎ、ホテルという幅広い客層が集まる場所で、軽さを意識した料理を作り続ける人物。テクニックを紹介するページには、プロセス写真はもちろん、「なぜそうすると軽やかな印象に仕上がるのか」というシェフの解説と「具体的なポイント」「テクニックの応用」を添えることで、より深く理解できるようになっています。
また、後半には神戸北野ホテルで実際に提供する料理を125品ほど掲載。この部分だけでも読みごたえのある内容です。