2011年12月09日
『魯山人と星岡茶寮の料理』
『魯山人と星岡茶寮の料理』
著者:柴田書店編
発行年月:2011年12月14日
判型:B5変 頁数:152頁
定価:2,310円(税込)
入社して2年目の秋、京都出張は数えるほどしか経験していなかった頃のこと。取材先の料理人さんに教えてもらった知る人ぞ知る板前割烹の実力店へ、その日のうちに飛び込みで食事に参りました。夕方に電話を入れてすぐに押しかけるという、いま思えばずいぶん失礼なお客ですが、やる気だけはあるところを買ってもらえたのか、ご主人と意気投合。コノワタを肴に夜中まで話らいました。そのときに見せていただいたのが、ご主人がよそから借りていた星岡茶寮の機関誌『星岡』の復刻版。いわく、「柴田書店はもっとこういう本を作らなければいけないよ」。
泊まっていきなさいとおっしゃってくれているのを強引に辞して、深夜の京都をあてもなく歩きました。碁盤の目の京都の街は三方を山に囲まれているので、慣れない酔っ払いにはどの角を曲がっても同じように見えて、どっちに向かって歩いているかわからない。いつかご主人をうならせる本を作ってやろうと考えながら、夜の京都をぐるぐるぐるぐる……。
一晩のコノワタの恩義に報いるため、『星岡』の復刻本を送ろうと古本を探したのですが、結局現物を手に入れるのに6年近くかかりました。苦労して探し出してくれた古書店主いわく、「秦秀雄も罪な人だよねえ。自分が関わった雑誌しかまとめなかったのだから」。なぜか22号から80号までと全巻の半数しか収録しておらず、発行部数もわずかにとどまった復刻雑誌。どうも魯山人の周囲にはいろいろと複雑な事情がありそうだと薄々感づきました。
実は陶磁史を研究していたので学生時代に魯山人の文章は読んだことがあったのですが、独力で学んだ人ならではの地に足がついた芸術論や料理論を期待したら、うわすべりのご託宣でがっかり。白崎秀雄の小説はひどい内容だと噂にきいていたのでまったく開いたことがないままでした。ところが雑誌でだしの特集を組んだとき、戦前はどんな方法だったのだろうと、魯山人著作集を開いてみたら文中にテレビが出てくるのにびっくり。どうにもこうにも合点がいかない。いつかは魯山人と対決しなけりゃならんと腹を決め、ついに器と盛り付け特集号の別冊 『日本料理の四季』で取り上げました。今から3年前の話です。
どこをどう調べればいいかは昔とった杵柄で、ちょっとつつくだけでいくらでも新資料が出てきます。うれしかったのは、魯山人が書道展覧会で褒状をとった際の新聞記事がどうしても見つからず(いま思えばそんなものは世になかったのですが)、図書館で白崎の小説をもう一度確かめようとしたとき。同じシの棚に島崎藤村の短編小説集があって、「そういえば彼は星岡茶寮で結婚式を挙げたんだっけ…」となんとなくパラパラ開いたら、魯山人をモデルにした小説が目に飛び込んできたのです。また同じ週の天皇誕生日には神奈川近代文学館で、星岡茶寮の献立の実物にたどりつきました。資料タイトルは「今年竹出版記念会献立表・受領書」とあるだけで、実見して初めてそれとわかったものです。あの日の横浜はクリスマスイルミネーション一色で、思いがけないサンタの贈り物に浮かれました。平日は雑誌編集作業があるので仕方なく、土日祝日をすべて魯山人調査に投入した半年でありました。

そうした成果のまとめを掲載して、京都の夜に出された宿題をようやく提出したつもりでいたのですが、いつになっても魯山人に関する新知識が世に広まる様子がありません。『料理王国』が2冊も文庫化されたり、「現存する資料のほぼすべてに目を通し」た立派なご本が文庫化されたりしているのに。『日本料理の四季』には私が編集した号以外にも、吉田耕三先生の連載記事や、当時の編集部が総力を上げて作った魯山人特集号があるのですが、一向に参考図書に入る気配がありません。
そこでせっかくなので2つの別冊を単行本にまとめました。ご購入ずみの方には申し訳ないので、その後に発見した戦前の婦人雑誌中の魯山人情報を大幅追加いたしました。これでようやく、魯山人に関する資料の末席に連ねてもらえるのではないかと思います。

投稿者 webmaster : 10:09
2011年06月17日
ごはんの魅力、再発見!『旬ごはんとごはんがわり』 編集担当者より♪
『旬ごはんとごはんがわり』
著者:田中博敏
発行年月:2011年6月27日
判型:B5変 頁数:212頁
定価:2,940円(税込)
目次をながめていただくと気づかれるかもしれませんが、
第二章の炊き込みごはんの段に、新玉ねぎ、新生姜、新牛蒡、新丸十と、
“新”のつくごはんがいくつかあります。
これはその年の一番最初に収穫した野菜です。
“新”は持ち味がちがいます。
新玉ねぎは水分をたっぷり含んでいるので、肉厚です。
甘みもあります。新生姜は清々しい独特の香りと辛みがあります。
新牛蒡はやわらかです。新丸十は皮がとてもやわらかい。
これらの持ち味を生かした炊き方を紹介しています。
これがプロの仕事です。
本書にはこのような技が詰まっています。
「面倒で難しいのでは?」そんなことはありません。
なにしろ“ごはん”ですから。
でも、知っておくのと、知らないのでは、雲泥の差となって、味にあらわれます。
私の一番のお気に入りのごはんは
“りんご粥”です。
熱々の七分粥に、
粗おろしにしたフレッシュなりんごを混ぜるだけです。
りんごの甘酸っぱい香りと酸味が、
なんともいえません。
風邪をひいてお腹をこわしたときなどに、
試してみたいですね。
お茶漬けの頁をご覧ください。
“あさり山椒煮茶漬け” “しらす地芽煮茶漬け” “茗荷焼き味噌茶漬け”
“榎木茸時雨煮茶漬け” “野沢菜茶漬け”などなど。
熱いごはんの上に、佃煮風の常備菜をのせて、 お茶やだしをかけるのですが、
なんとここだけで11種類もの常備菜のつくり方を紹介しています。

これらは、お茶漬けだけでなく、熱いご飯にのせて食べていただいてもいいし、
もちろん白いごはんに混ぜてもいいでしょう。
一つのレシピで一つの料理と決めないで!
みなさんのアレンジ次第では2つにも3つにも広がります。
焼き餅三種。
香ばしく焼いた磯辺巻きですが、
みなさんのところでは、
いつも醤油味ばかりではないですか?
ここでは、あぶった切り餅に、
ぴりっと辛い柚子胡椒醤油を塗ったり、
胡麻塩だれを塗ったり、蕗の薹味噌を塗ったり……。
醤油と塩と味噌ベースのたれを塗って
趣向を凝らした焼き餅です。
もちろん“焼きおにぎり”に塗ってもおいしそうですよね。
投稿者 webmaster : 09:49
2010年11月15日
幾多の味を表現!「日本料理 味つけ便利帳」編集担当者より♪
『日本料理 味つけ便利帳』
著者:野崎洋光
発行年月:2010年11月25日
判型:四六 頁数:324頁
定価:3,360円(税込)
野崎さんは、超忙しい。
野崎さんはこの本の著者で、
「分とく山」という都内にある人気の日本料理店の料理長。
毎日あちこちを飛び回っているのに、
夜は必ず店のカウンターに立ちます。
お国訛りがちょっと残っていて、
どんなに忙しくてもいつもにこにこ温かく、
来店客を迎えます。
今回の撮影はいつも午後2時から開始。
でも野崎さんは昼からの料理教室を終えたばかり。
食事をとる暇もなく、すぐにカウンターに入って撮影開始です。
「あっ、これパンにも合うよ。ちょっとパンを買ってきて」と野崎さん、
店のスタッフに声をかけます。
なるほどこの“ナッツ和え衣”すごくパンに合う!
“胡桃和え衣” “絹さや胡桃味噌”もいけるじゃない?
日本料理の和え衣なのにパンに合うなんて!

いつもうちでつくってるキンピラや鯖の味噌煮。
どうして野崎さんがつくるとこんなにおいしいんだろう。
“彩きんぴら”は本当にゴボウがおいしく仕上がります。
きちんと火が通っているんだけど、なぜかシャキシャキ。
「それは酒を使うからですよ。水を使っちゃだめ。
水は煮汁が詰まるまでに時間がかかっちゃうでしょ。
ゴボウの繊維がやわらかくなりすぎてしまいます。
その点お酒を使えば早く煮詰まるんです」
なるほど、で、シャキシャキなのか。
“鯖の味噌煮”もとてもジューシー。
日頃鯖の味噌煮があまり好きじゃない
カメラマンのエビちゃんもびっくり!
こんなにおいしい鯖の味噌煮は初めて食べたって!
「サバは火を通しすぎてはいけないんですよ。
サバに限らず魚の切り身は10分以下で煮てください。
それ以上煮ても味はしみません。肉がぱさつくだけ」
おどろいたのが、“若菜あん”をかけた“蒸し鶏”。
とってもやわらかい。
野崎さん、この鶏、由緒正しい鶏なのですか?
それとも魔法でもかけたのかしら?
「いえいえ、普通のブロイラーですよ。低温で蒸してるんです。
蒸す温度が高すぎると肉が締まってしまいます。
温度の調整が大事なんです」
お肉って高温で加熱するものだと思っていたけど、間違っていたんですね。
私のお気に入りナンバーワン。
忘れちゃいけないのは、“カレー和え衣”と“磯チーズ和え衣”。

子供も大人も大好きだと思います。
どんな味って? うーん言葉にできません。
ぜひぜひお試しを。
和え衣さえ用意すれば、こんなに簡単にできるんです。
さて、いかがでしたか?
この料理にはこれを使って、といった定番の味もいいものですが、
たまには頭を柔軟にして本書を使ってみてください。
同じ素材や料理でも、味つけを変えるだけで、
別の料理に生まれ変わります。
「次の世代に新しい味を伝えたい」
そんな思いで野崎さんはこの本をつくってくれました。
投稿者 webmaster : 18:13
2010年09月06日
伝統と独自の解釈を織り交ぜてつくる“うまいもん” 編集担当者より♪
『割烹 うまいもん』
著者:上野 修
発行年月:2010年9月3日
判型:B5 頁数:240頁
定価: 3,675円(税込)
カウンターの中では、独特な“
川用語”が飛び交っている。
たとえば、“おまかせスタイルの割鮮”だから、
『おまかっせん』なのであり、
これが何気ない刺身・造りと思いきや、
一つひとつにさり気ない“仕事”が施されている(詳細は作り方参照)。
それをなに食わぬ顔をして顧客に提供、
おっと驚く顔にほくそ笑む。
おそらくカウンター割烹の愉しみ方は、
主客のそうした同じ磁場、空気の交流にあると思われる。
非常に礼儀正しい厨房だが、スタッフの笑い声は絶えない。
そんな仕事場を垣間見せていただいた
(この取材現場はホンマ、おもろかったデ)。
が、雰囲気を少しでも伝えようと、
くだけた表現をレシピ原稿に落とし込んでも、
ごく真っ当な文章に書き換えてくる。
根は生真面目な著者を物語る逸話である。
ちなみに創業者(上野修三氏)は現在、
浪速野菜の研究者として活躍しているだけでなく、
著者ともども食都・大阪の食文化、
観光面などを国内外に向けアピール、
情報発信する仕事にも携わっている。

投稿者 webmaster : 09:59
2010年09月03日
今こそ、役に立つ 日本料理版 冠婚葬祭便利帳! 編集担当者より♪
『日本料理 祝儀 不祝儀ハンドブック』
著者:長島 博
発行年月:2010年9月3日
判型:A5 頁数:168頁
定価:2,625円(税込)
今回初めて、水引の結び方や和紙飾りの折り方を学びました。
普段まったくやらないことなので理解するまでは大変でしたが、
自分で実際に何度かやってみると、なるほどとその基本構造が納得でき、
きれいに作るコツも少しずつわかってきて、けっこう病みつきになります。
今では不器用な私でも、淡路結びや、雄蝶、
雌蝶飾りといった銚子飾りまでお手のものです(笑)。
[結びの基本]
◎淡路結び
祝儀袋や箸包みなどに
水引を掛けて結んでいく方法。
[酒器飾り]
◎雄蝶飾り
婚礼の儀式で銚子や提下、燗鍋などの
酒器に付ける和紙の飾り。
[箸包み]
◎箸包み
開口部を着物の襟合わせのように斜めに重ね、
紅色の紙を見せた華やかさのある箸包み。
典型的な祝箸用の「折形」。
[熨斗]
◎熨斗包み
贈答品などを、丁寧に差し上げるいう気持ちを込めて
和紙で包む際の「折形」の一つ。
自分で和紙と水引を買ってきて、熨斗袋を作り、
水引きを掛けてお祝を贈る、あるいは、
お屠蘇飾りを毎年自分で作ってみる、
なかなかステキなことだと思いませんか。
しかも、そういう知識は、
料理の現場で本当に役に立つことばかりです。
椀物のあしらいや、お祝の口取、器使い、
和紙や水引を使った演出、その他たくさんの場面で。
約束事の基本を知っていれば、
自分なりの応用も自信をもってできるようになります。
表現の幅もぐっと広がって、新たな世界が開けることでしょう。
外国人のお客さまにも、また違った意味で喜んでもらえると思います。

投稿者 webmaster : 13:34
2009年11月04日
懐石のことが、手に取るようによくわかる。 編集担当者より

『懐石入門』
著者:高橋英一
発行年月:2009年11月5日
判型:B5変判 頁数:256頁
定価: 4,410円(税込)
懐石というと、堅苦しくて難しくて…と敬遠される方も多いかもしれません。
でも、実は巷にあふれる一般的な会席料理と比べて、懐石料理はむしろシンプルです。
もともと茶の湯では、ゴテゴテと飾らず、素材を生かしたごく簡素な料理を出すのがスジなのです。
たとえば焼きもの。
本書でよく登場する「味噌柚庵焼き」は、酒、醤油、ミリンの柚庵地に白味噌を加え、ユズとともに魚を漬け込んで焼くだけのもの。どんな魚種にもよく合い、懐石では焼きたてのアツアツを提供するのが原則ですが、冷めても固くならず味も落ちないので、お弁当などにも適した調理法です。
また、和えものの「菊菜と腹子の菊花和え 山葵風味」。
菊菜はゆがいてうす味の地に浸け、
菊花は酢水でゆがいて水にさらし、
イクラの醤油漬けとともに、ワサビをきかせた地で和えるだけ。
しゃれた一品のでき上がりです。
素材別の索引も利用しながら、手に入らない素材があれば適当に工夫をして、
一度チャレンジしてみてください。
実際につくってみたら意外と簡単で、日常の食事に応用できるものもたくさんあります。

投稿者 webmaster : 15:57