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   <title>編集部だより</title>
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   <updated>2012-02-01T05:26:01Z</updated>
   <subtitle>　―担当者からのひとこと―</subtitle>
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   <title>料理本のソムリエ ［vol．３７］</title>
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   <published>2012-02-01T03:47:57Z</published>
   <updated>2012-02-01T05:26:01Z</updated>
   
   <summary>【 ｖｏｌ．３７ 】 カレーとボルシチと中華饅頭が ひとつの店に同居するわけ 　...</summary>
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         <category term="料理本のソムリエ" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
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      <![CDATA[<font size="3"><font color=#FF3300>【 ｖｏｌ．３７ 】</font></font>
<p style="line-height: 200%"><font size="+2"><font color=#0066FF>カレーとボルシチと中華饅頭が
ひとつの店に同居するわけ</font></font></p>

<font size="2">　前回、“ひょんなことから相馬家の食客になった…”と思いっきりはしょらせてもらった、インド独立運動家のラス・ビハリ・ボースと新宿中村屋の縁。実はこの“ひょん”の部分を細かく掘り下げると本が１冊できてしまいます。ホントの話でして、白水社刊の<font color=#0000FF>『中村屋のボース』</font>がそれです。日本政府に利用されつつもいかに独立のため戦い続けたか…彼の姿を軸に、戦前の日本におけるインド独立運動をまとめた新進研究者の力作です。</font>

<font size="2">　インド総督の爆殺や独立蜂起を計画した若き日のボースは、イギリス植民地政府に追われる身。大正３（1914）年に日本に渡りますが、当時イギリスと同盟を結んでいた日本政府は国外退去命令を出します。オウムの平田君風情とは比べものにならない重要人物を、大国の顔色をうかがう政府の手から守り、民族独立という大義に賛同してかくまう。そんな気骨あるパン屋が中村屋の相馬愛蔵・黒光夫婦でして、当時の人たちからも喝采を浴びました。この本にはサスペンスドラマよろしく、右翼の大物の頭山満宅に居たボースを捕らえようとする警察からの脱出劇や、相馬家での潜伏生活に関する考察もあります。</font>

<font size="2">　明治大正時代のインドは、お釈迦様の国として日本人から今以上に親しみと尊敬を向けられており、右翼も社会主義者もその独立を支援する空気がありました。たとえば<a  href="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/2011/12/07_1706.html" target=_blank>vol34</a>でちょっと触れた禄亭こと大石誠之助は、明治23（1890）年に渡米してオレゴン大とモントリオール大で学んだ医学者でして、のちにシンガポールとボンペイに渡り、熱帯の風土病を研究しています。そんな彼が社会主義に関心をもったのは、インド時代に見たイギリスの植民地経営に対する義憤から。ちなみに大石はアメリカ留学中に苦学していて家政夫として働いた経験があり、インドからの帰国後には甥の西村伊作（御茶ノ水の文化学園の創立者ですね）とともにレストラン「太平洋食堂」を和歌山に開いたりもしております。妻が作る料理には満足いかずに自分で厨房に立ち、「カレーライスにウニと海苔をかけると至極結構です」と『家庭雑誌』で紹介した大石は、なかなかのグルメではないかとお見受けしております（試してみたらテレビのちょい足しなんぞよりもずっといけました）。なにせ禄亭という号は、都々逸の師匠の鶯亭金升から授かったものですが、この人がまた食いしん坊だからねえ…。</font>

<font size="2">　おっと寄り道はこれくらいにしてボースをかくまった相馬夫妻についてでありますが、かなり変わった経歴の持ち主です。愛蔵は内村鑑三の薫陶を受け、長野で養蚕指導をしていた農村改革運動家。妻の黒光のほうはなんだか武将みたいな名前ですが、本名は“良”でして、“こっこう”は『女学雑誌』への寄稿でついたペンネームです。相馬黒光については多くの本が出版されており、聞き語りの回想録<font color=#0000FF>『黙移』</font>は平凡社ライブラリーや日本図書センターの自伝シリーズにも入っていますが、彼女の個人史を通観するのであれば、宇佐美承氏の<font color=#0000FF>『新宿中村屋 相馬黒光』</font>がよいでしょう。ただし400ページ以上もある厚いこの本の中で、ボースはごく一部に登場するにすぎません。なにしろ相馬黒光の一生は、朝の連続ドラマのモデルにしようものなら1年かけて放送しても終わらないほどエピソードがてんこ盛り。ハードな展開にお茶の間から「朝っぱらからこんな重い話は…」と非難囂々まちがいなしでしょう。</font>

<img alt="ninkinopan.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/ninkinopan.jpg" width="243" height="188" align="right" hspace="5"><font size="2">　そもそも中村屋の始まりは本郷の東大正門前にあったパン屋さん。上野の東京芸大にもパンを納める（木炭画に必要ですからね）地元では知られた店でした。ところが元のオーナーの中村萬一氏が米相場で失敗して売りに出されます。それを明治34（1901）年に32歳の相馬愛蔵が購入し、屋号とともに引き継ぎました。東京専門学校（早稲田の前身）を卒業して札幌農学校で養蚕を学んだ愛蔵と、宮城女学校とフェリスを飛び出して明治女学校で学んだ黒光ですから、客商売は初めての経験です。それでも明治37（1904）年シュークリームをヒントにクリームパンとクリームワップル（なぜかワッフルではないんですねえ）を発明して大ヒットさせます。なお中村屋のクリームパンは丸くて、今のようなグローブみたいな形ではありませんでした。クリームは焼くと蒸気が出るので、空気抜きとして切れ目を入れていたのが、あの形に発展したそうです。</font><br clear="right">

<img alt="nakamuraya_1.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/nakamuraya_1.jpg" width="152" height="232" align="left" hspace="5"><font size="2">　相馬夫婦はパンがあまり売れない冬の売り上げを伸ばすために和菓子の分野にも乗り出すなど、型にとらわれないアイデアでぐんぐん店を大きくしていきます。明治42（1909）年には新宿に支店を開き、翌々年には今の場所に移って本店にします。新宿が今のような大繁華街になるはるか以前、街道沿いの土ぼこりっぽい町で、紀伊国屋書店さんがまだ炭屋だった時代にもかかわらず、当地の将来性を見抜いたのですからたいしたもの。新宿では彫刻家の荻原碌山や画家の中村彝にアトリエを貸したり（ボースが隠れたのもここでした）、店の２階をロシア文学研究会の会場として提供して、秋田雨雀や島村抱月などのいろいろな文化人と交流します。ちょっと<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/2010/11/22_1808.html" target=_blank>vol12</a>の「メイゾン鴻乃巣」を彷彿とさせますね。
　夢見勝ちでどこか風来坊の愛蔵と姉御肌で外交的な黒光のコンビは、多くの人たちと出会い、その経験をもとに、店で取り扱う商品をどんどん広げていきました。ちょっと見ただけではいろいろな国の食文化の寄せ集めのように思えますが、実はひとつひとつに濃厚なエピソードと必然性がついてまいります。</font><br clear="left">

<img alt="nakamuraya_2.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/nakamuraya_2.jpg" width="152" height="229" align="left" hspace="5"><font size="2">　たとえば中華饅頭は、新宿に百貨店が進出してきてピンチに陥った相馬夫妻が、大陸視察旅行中にヒントを得て取り入れたもの。菓子職人を中国から呼び寄せようとしたところ、前例がなくて労働許可がおりなかったために、じゃあ料理店なら問題なかろうと、厨房も作って中国料理も提供し始めてしまいます。水羊羹の缶詰はブラジルに渡って夭折した息子のことを思って、日本の味を海外に届けられるように開発したものです。</font><br clear="left">

<img alt="roshiagashi.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/roshiagashi.jpg" width="152" height="240" align="right" hspace="5"><font size="2">　中村屋の喫茶部のメニューにはボルシチがありますが、これはボースの後に食客となったロシアの盲目詩人、エロシェンコから学んだもの。海外から船便で運んでいては提供できない生チョコレートを自社で製造すべく、破格の給料でロシア人の菓子職人も雇います。ついでにペチェーニエ（焼き菓子）やガドセック（ガトーセック？）といったロシア菓子も販売しており、これらがロシアクッキーやロシアケーキといったどこか懐かしい日本の洋菓子の源流となったもようです。なお現在新宿中村屋ではロシア菓子は販売しておりませんが、千葉の館山の中村屋さんで味わうことができます。新宿移転後の本郷店をまかされたのは、生え抜きの店員だった「みいどん」こと長束實氏。4畳半に住み込みの従業員、３畳間に相馬夫婦と息子が生活していた本郷時代に苦楽をともにしたスタッフの一人です。その息子の七郎氏の代に当地に移りまして、ロシア菓子の技術を今に伝えているのです。</font><br clear="right">

<font size="2">　ちなみに山崎製パンや進々堂の初代社長も中村屋の出身。社員の独立は中村屋の社是でもあり、21歳までは月給の３分の２、27歳までは半分を資金として貯金する制度がありました。そのほか、従業員全員に自社株をもたせたり、売上高に応じて配当を出したリ、従業員のために学校を設立したり、亡くなった社員の慰霊祭を毎年行なったり（長束實氏もその一人）と、やることなすこと桁はずれ。“企業は人なり”をモットーに、廉価販売やリベートを許さなかった中村愛蔵の経営精神については、岩波書店の<font color=#0000FF>『一商人として』</font>にまとめられており、<font color=#0000FF>『相馬愛蔵・黒光著作集２』</font>にも収録されています。</font>

<font size="2">　また実際に中村屋に勤めていたスタッフの回想としては、同社菓子部門だった関口保氏による<font color=#0000FF>『ピロシキとチョコレート』</font>があります。この本は同じ話が何度もでてきたり、“前に書いたように”とあるのにどこにも見当たらなかったりと、本としての出来がよくないのが残念ですが（編集者出てこーい）、戦前の中村屋の空気を伝えてくれる貴重な証言です。前回のゴロナのエピソードもこの本に出てまいります。
　関口氏から見た愛蔵と黒光はなかなか厳しい人でもありましたが、いかにも明治男と明治女らしい感じですね。戦中は食材の調達に苦労したうえ、過労から娘婿のボースを亡くし、戦後も新宿駅前を占拠して闇市を開いていたやくざと法廷で争ったりと、苦労は続きますが、けっしてくじけず見事に会社を復活させてみせました。</font>

<font size="2">　ところでボースの同志の一人にインドから京都大学へ留学していたA.M.ナイルがおります。彼は昭和３（1928）年に中村屋でボースに出会い、その人となりと行動力に感銘を受けます。卒業後は満州国に渡り、ラマ僧やイスラム教徒などに扮してモンゴルで対英工作活動を行ない、戦後は東京裁判のパール判事の通訳を務めたりもいたします。こちらは朝の連続ドラマどころか007の映画に登場しそう（あっ、でも敵役になっちゃう…）。ところがインド政府を牛耳る国民会議派からはうとまれ、帰国がかなったのは実に祖国独立の14年後。のちに彼は<font color=#0000FF>『知られざるインド独立闘争―A.M.ナイル回想録』</font>で、文字通りインド独立運動に殉じたボースを正しく評価するよう訴えています。</font>
<img alt="moukaru_curry.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/moukaru_curry.jpg" width="257" height="188" align="right" hspace="5"><font size="2">　この革命志士が、日々の糧を得るためのよすがとして44歳のときに開いたのが銀座の「ナイルレストラン」です。目玉焼きも作れないA.M.ナイルをサポートして、今のような有名店に育てた２代目のG.M.ナイルは、テレビなどにもよく登場するのでご存じかもしれませんね。<font color=#0000FF>『ナイルさんのカレー天国!!』</font>で面白おかしく描かれているように、自ら“変なインド人”を演じる、取材慣れしたタレント気取りの経営者という印象を持つ人も多いかも。</font><br clear="right">

<font size="2">　こうした色眼鏡を吹き飛ばすのが、昨年出版された<font color=#0000FF>『銀座ナイルレストラン物語』</font>です。インド料理専門店の先駆者であるG.M.ナイルの破天荒な性格と人生は、波乱万丈の初代にもなかなか負けておりません。初代にとっての料理店経営は意図せず迎えた第二の人生でしたが、２代目にとっては、戦後の混乱をたくましくのりきってきたわが家そのもの。学生時代から店に立ち、カレー粉を輸入し、インドから料理人を招聘するルートを開拓するなど、日本とインドの間に立って苦労してきたからこそ、彼は自信たっぷりでテレビカメラの前に立つことができたのです。ところが全力を注いできたこの店は、あろうことか平成９（1997）年に隣家の火事で焼けてしまいます。茫然自失の彼を尻目に、地上げを狙ってうごめくやくざたち。店舗存続の最大の危機が訪れ……おっとネタばれはこれくらいで。</font>

<font size="2">　さまざまな商品展開を行なった中村屋と、たとえインドから料理人を招いてもひたすらカレー一本に絞ってきたナイルレストランとでは、商売の仕方がずいぶん違いますが、どちらも個性的でスケールの大きい経営者であることはまちがいない。「不況に強そうだから外食でもやってみるか」というデモシカ経営者や、ネットの世界に向かってつぶやくばかりの国士きどりたちは、まずは刺激たっぷりなカレーを食べて目を覚ましてくださいね。</font>

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   <title>『毎日食べたい　食パン』</title>
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   <published>2012-01-24T01:17:25Z</published>
   <updated>2012-01-24T09:25:14Z</updated>
   
   <summary>『毎日食べたい　食パン』 著者：柴田書店編 発行年月：2012年1月26日 判型...</summary>
   <author>
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      <![CDATA[<img alt="06133.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06133.jpg" width="72" height="96" align="left" hspace="10"><a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00613300" target=_blank><font color=#FF6633>『毎日食べたい　食パン』</font></a>
著者：柴田書店編
発行年月：2012年1月26日
判型：B5変　頁数：92頁
定価：1,890円（税込）<br clear="left">

<b><font color=#CC00FF size="3">プロのレシピは一筋縄ではいかないのだ。</font></b>

パン屋さんのプロセス撮影は朝早い。
そう覚悟して始めたものの、まさかここまで早いとは・・・。
♪あさいちばんはやいのは、ぱんやのおじさん♪
という歌詞は、本当だったんですね。


撮影開始 ＠ Kベーカリー、午前2：45。
朝・・・じゃなくて夜だ（真っ暗な空に星がきらきら）。

寝ぼけ眼でぼーっとつっ立っている我々撮影隊に、
すでにエンジン全開のＫシェフが、てきぱきニコニコと段取りを説明。
説明中にもシェフの手や足が止まることはありません。
常に複数の作業を同時進行。
しかも、夕方までずっとこの調子。

シェフ達の頭の中には、一体いくつ部屋があるのでしょう。
50種類から多い店では100種類ものパンを日々焼くという仕事は、
並大抵のことではないのでした。
なんだか、社会科見学に来たみたい・・・。


ところでパン好きのみなさん、
本のレシピの分量・時間・温度はすべて撮影時に実際に計測した数値ですが、
シェフ達は毎日、同じことを単純に繰り返しているわけではございません。
同じパンでも、水の量は日々調節。
粉の配合も季節によって、材料の状態によって変えています。
生地の発酵時間も、様子を見ながら早く切り上げたり、のばしたり。
パンチや丸めの手加減も、感触から判断して強くしたり、そっと扱ったり。
オーブンに入れてからも、膨らんでくるタイミングや焼き色から判断して、
途中で温度や時間を微調整……とまぁ、何から何まで手加減が加わっており、
一筋縄ではいきません。

これこそ、何百回も同じパンを焼き続けている経験のなせるワザ。
それがプロであり、職人である所以です。
一朝一夕にできる仕事ではございません。

おまけに、早起き（！）　。
ついつい深夜までDVDを見ちゃったり飲んだくれたり、
なんていう自堕落な生活とは縁を切った、崇高な世界がそこにはあるのでした。


さて、掲載したパンの一部をちらりご紹介。


<b><font color=#CC0000 size="3">◆ 「アングレ」　カタネベーカリー</font></b>

<img alt="06133_1.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06133_1.jpg" width="325" height="150" />

さっくり心地よい歯ごたえは、山形パンの王道。
発酵バターといちごジャムの重ね塗りが、
シェフとマダムのおすすめの食べ方です。


<b><font color=#CC0000 size="3">◆「S100」　ダン ディゾン</font></b>

<img alt="06133_2.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06133_2.jpg" width="325" height="150">

豆乳100％で仕込んだ動物性材料不使用の食パン。
ハードパン並みの力強い歯ごたえにびっくり。
野菜やきのこなどの惣菜と一緒に食べてみてください。


<b><font color=#CC0000 size="3">◆「コンルーバ」　トラスパレンテ</font></b>

<img alt="06133_3.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06133_3.jpg" width="325" height="150" />

国産小麦100％、二段仕込みのレーズンパン。
もちもちして味わい深い生地と香ばしい耳の対比が絶妙。
トーストしてあっさり煮上げたジャムをのせて。


<b><font color=#CC0000 size="3">◆「抹茶＆大納言」　パナデリーア ティグレ</font></b>

<img alt="06133_4.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06133_4.jpg" width="325" height="150" />

抹茶ペーストと小豆を練りこんだリッチで甘い食パン。
トラ柄とほろほろの食感は、一度食べたら忘れられないインパクト。
カスタードソースを添えるとうるわしいデザートに。


最後に、微に入り細に入りの取材撮影に応じてくださったベーカリーの皆様、
本当にありがとうございました。

カタネベーカリー・片根シェフ／ダン ディゾン・木村シェフ
トーストネイバーフッドベイカリー・鈴木シェフ／トラスパレンテ・森シェフ
とらやベーカリー・森岡シェフ／ネモ・ベーカリー＆カフェ・根本シェフ
パナデリーア ティグレ・望月シェフ
ブーランジェリー・エ・カフェ マンマーノ・毛利シェフ
ブーランジェリー＆パティスリー カルヴァ・田中シェフ
ブーランジェリー パサージュ ア ニヴォ・大和シェフ　　（店名五十音順）

日々の仕事だけでもてんてこまいなのに、厨房だって決して広くないのに、
こころよく受け入れてくださって本当に感謝しております。
この本をきっかけに、ひとりでも多くのお客さまが貴店を訪れ、
おいしいパンに出会いますように！


<img alt="06133_5.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06133_5.jpg" width="420" height="40" />]]>
      
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   <title>料理本のソムリエ [ vol．３６]</title>
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   <published>2012-01-17T08:35:38Z</published>
   <updated>2012-01-17T09:31:36Z</updated>
   
   <summary>【 ｖｏｌ．３６ 】 恋と革命は、サラリとして辛口なもの 　あけましておめでとう...</summary>
   <author>
      <name></name>
      
   </author>
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      <![CDATA[<font size="3"><font color=#FF3300>【 ｖｏｌ．３６ 】</font></font>
<font size="+2"><font color=#0066FF>恋と革命は、サラリとして辛口なもの</font></font>

<font size="2">　あけましておめでとうございます…からずいぶん経ちましたね。
みなさん、おせちやカレーはお腹一杯召し上がりましたか？ 年もあらたまったというのに当ブログは昨年の話の続きであります。</font>

<img alt="kiji.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/kiji.jpg" width="152" height="240" align="right" hspace="5"><font size="2">　実は前回、国際こども図書館に所蔵されているカレー本であえて採り上げなかったものがありました。辛島昇先生の岩波ジュニア新書<font color=#0000FF>『インド・カレー紀行』</font>です。この本、ジュニア向けなものですから国会図書館のほうでは所蔵しておりませんし、辛島っていう姓がなんだかペンネーム風だしで、「口当たりのよいやさしい内容だろう」となめてかかると痛い目にあいますよ。岩波ジュニア新書のシリーズは普通の岩波新書より字が大きくて写真がたんまり使われておりますが、時々とんでもないハードな内容のものもまじっておりまして、この本も、昨今の新書（タイトルが無駄に長かったり疑問形だったりするやつ）ですら読むのが億劫という子供舌の人にはお勧めできません。辛島教授は押しも押されもせぬインド史の第一人者でして、取り上げる資料はインドにとどまらず、『エリュトゥラー海案内記』だの『諸蕃志』だのギリシャや中国の文献までぽんぽん出てきます。とはいえ机の上の世界にとどまらず、インド留学時代の寮の食事やスリランカでの客員教授時代の見聞、料理の具体的なレシピなどを盛り込んでおり、読みやすさにも配慮されております。<br clear="right"></font>

<font size="2">　そもそもインドにはカレーっていう料理は存在しない、という話は皆さんどこかでお聞きおよびかと思います。本来は個別にちゃんと料理名がある各種インド料理を、ややこしくって面倒だとばかりに「カレー」で総称しちゃったんですね。大阪のおかんにとってゲーム機は、PS Vitaだろうとドリームキャストだろうと「ピコピコ」なのと同じ心理ですな。

<font size="2">　それではこの料理名は何からつけられたのか。本書にはそれに関する考証もあります。インドのスパイシーな汁たっぷりの料理をカリル（karil）と呼び始めたのはポルトガル人。その理由はインドではソースのことをカリーと呼んでいたため…とする説もありますが、南インドのタミル語やカンナダ語の辞書には“kari”は野菜、肉、コショウの意味とあって、ソースではないそうです。野菜と肉とコショウが同じ単語で表現されるとはいったいどういうこと？という疑問がわきますが、辛島教授はスープ料理の具をカリと呼んだのが、ポルトガル人に誤解されて料理名として伝わったのではないかという仮説を立てています。</font>

<font size="2">　本書はこのように料理を通してインドの文化交流史を語る内容でして、ちょっとやそっとの辛さや知的刺激では物足りないカレーマニアも満足いく内容になっております。カレー屋さんにいくとシークカバブだのビリヤニだの、やけに中東料理に似た料理を見かけると思ったら、ペルシア文化の影響を受けたムガール帝国の遺産なのだとか。日本人の抱くインド像というのはステレオタイプなものですが、実は文化も料理も多彩かつ重層的で、一筋縄ではいきません。</font>

<font size="2">　さて、そんな辛島先生もお勧めなのが、<font color=#0000FF>『インドカレー伝』</font>。こちらはさらにインド料理と歴史との関わりに焦点を絞って考察したもので、翻訳書なので厚くて注もびっしり。辛島教授の本と比べて辛さ…じゃなかった難易度３倍ってとこでしょうか。ポルトガルやイギリスの植民地文化にまで考察を広げているのが特徴です。
<img alt="bindaru.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/bindaru.jpg" width="250" height="186"  align="right" hspace="5">カレーがイギリスに渡って小麦粉のルーでとろみをつけるシチューっぽい料理に変わったのと同じように、カツレツがインドではスパイシーにアレンジされたりと、相互に交流があったりします。酸っぱくて辛いのが特徴のビンダルーの原型は、ポルトガル料理のカルネ・デ・ヴィーニョ・エ・アリョスなんですねえ。どこのおかんのせいでこんなに短い名前になっちゃったんでしょう。<br clear="right"></font>

<font size="2">　ポルトガルの植民地文化の料理は、はるか昔の戦国時代に日本に伝わった可能性がありますが、この分野を扱った本はこれまで見あたらなかったので、干天の慈雨であります。大げさですって？　いえいえ、こちとら大真面目です。たとえばスリランカにもポルトガルから伝わったテンプラードワという料理があると<font color=#0000FF>『南の島のカレーライス』</font>にありました。これはポルトガル語の「味をつけた、調理した」という意味のテンペラードゥからきていて、油炒めのことだそうです。現在天ぷらの語源については諸説ありますが、これは実に興味深い報告です。あ、ちなみにこの本、カレーライスというタイトルではありますが、スリランカ料理全般について考察したものでありまして、ココナツやモルディブ・フィッシュ（スリランカの鰹節）を活用するこの国の料理はインドとはまた異なる体系をもっています。</font>

<font size="2">　さて日本にインドのカレーを初めて紹介したとされるのが、ラス・ビハリ・ボースです。インド独立革命の志士だった彼は日本に逃れ、ひょんなことから新宿でパン屋の「中村屋」を開いていた相馬家の食客となります。のちに帰化して中村屋の娘と結婚したボースは、日本でカレーと呼ばれている食べ物は小麦粉でとろみがつけてあり、母国の料理とほど遠いことに不満をもちます。そこで中村屋が昭和２年に喫茶部を開くにあたって、名物料理としてボース発案のカレー（ただし呼び名はカリーです）を提供し始めたわけです。</font>

<img alt="nakamuraya.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/nakamuraya.jpg" width="182" height="175" align="left" hspace="5"><font size="2">　同店がカレーを売り出すにあたっての情熱と力の入れようは、半端なものではありません。具の鶏肉を調達するために専用の農場を開いて軍鶏を飼育し、米は別名“御殿米”と呼ばれた埼玉の“白目米”を使います。ちなみに例の「星岡茶寮」も朝鮮米の早丁租を用いるようになる前は、この白目米を使っていたそうです。
　戦前の中村屋のカレーのレシピについては、<font color=#0000FF>『カレーなる物語』</font>に昭和７年の『主婦之友』に載ったものが紹介されていますが、ここではせっかくですから開業初期の昭和３年の『婦女界』のレシピをば。『主婦之友』では骨からスープをとったり、ジャガイモを炒めたりしていてこれとは若干違います。大量に仕込まねばならない店のレシピそのままではないでしょうが、多めの油にスパイスの香りを移すところがミソですね。ジャガイモでとろみをつけるのはインド本来のやり方かどうか…。小麦粉のルーに対抗しての措置かもしれません。<br clear="left"></font>

<font size="2">　鶏はメスの400匁（1500g）ぐらいのサイズで、屠鳥してから６時間くらいのものを使用します。皮ごと骨つきのまま１寸（３cm）くらいのぶつ切りに。タマネギ150匁（562・5g）は四割りにして、1分（３mm）の厚さに小口切りに、ジャガイモ200匁（750g）は皮をむいて２つに切っておきます。バターはたくさん使いまして、鶏に対して２割の80匁（300g）ほどです。鍋に溶かして、タマネギを入れてきつね色に色をつけ、鶏肉を入れて弱火でしばらく加熱します。少し骨ばなれがよくなったところでカレー粉を茶さじ３杯ほど、コショウ、塩を適当に入れ（もし牛乳かヨーグルトがあれば１合ほど入れます）、材料より２寸（６cm）ほど上まで湯を注ぎ、静かに煮ます（水を入れると肉が固くなります）。香料（月桂樹、丁子、肉桂）などがあれば、よく煎じてその汁を少し肉の中に入れます。弱火で１時間ほど煮ると骨ばなれのよい肉になりますから、この時にジャガイモを入れて、柔らかくなって少し形が崩れ、汁がどろりとしてきたら火からおろします。箸休めにはダイコン、キュウリ、トマト、キャベツなどの酢の物を添えます。

<font size="2">　なお原文では香料（香辛料）の説明で月桂樹とベイリーブスがだぶって登場しているうえ、煎じ方や使うタイミングがよくわかりません。カレー粉については、インドでは家族の口に合うように14種類を配合するが、日本の家庭で作って好まれるのはＢＣ缶（Ｃ＆Ｂ社）でしょう、とありますが、ちょっと加える量が少ないような気が…。
<img alt="fukugen.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/fukugen.jpg" width="182" height="174" align="left" hspace="5">当時の茶さじは今でいう小さじにあたるのですが、それにしても…。高価だったせいなのでしょうか。逆にタマネギはもっと多くてもよいのでは？　いろいろ疑問に思いつつ再現してみたところ、昨今のジャガイモは優秀なようでしてそう簡単に煮崩れてくれません。
どろりとするどころかスープカレーよりもスープっぽくなる始末。べ、べつにあんたに食べさせたくて作ったわけじゃないんだからね！　このブログってなんか小難しいし、本の映像ばっかりじゃさみしいかなって思っただけなんだから！<br clear="left"></font>

<font size="2">　とつぜんツンデレ風でごまかしているのは、この印度式カリーのキャッチコピーが「恋と革命の味」だったもんで。中村家に訪問してボース手作りのカレーを実際に食べた子母澤寛の<font color=#0000FF>『味覚極楽』</font>によると（『カレーなる物語』ではこれを回想として紹介していますが、それは単行本化の加筆部分のことでして、初出は当時の東京日日新聞の連載記事です。レシピも簡単に紹介していますが、これまた『婦女界』とも違います）、ボースは｢本当のカレーはそんなにからいものではない、食べる時にすうーっと甘くて、後から少しずつ辛味が舌に沸いて来るのがいいのです」と語っております…って、しまったあ、これじゃあツンデレの逆じゃないかー。<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/2010/11/08_1107.html" target=_blank><font color=#FF3300>vol.11</font></a>で触れたパウリスタのコーヒーといい、この時代の恋ってのはずいぶんと大人な味ですなあ。</font>

<img alt="567.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/567.jpg" width="152" height="229" align="right" hspace="5"><font size="2">　一方甘ーい“初恋の味”で一世を風靡したのはカルピスでありますが、この会社が昭和７年から“５６７十八青春の味”のキャッチコピーで、満を持して売り出した飲み物がゴロナ（５＋６＋７で18歳ってわけ）です。「星岡茶寮」の納涼宴でも使われましたが、タンニンのオリがたまるために不良品が続出して持て余し、のちに原料や技術をそっくり中村屋にひきとってもらったというエピソードがあるそうです。技術移転を受けた中村屋ではジンをたらすことでオリの発生を防ぎ、喫茶部で提供したとか。ただゴロナって、今でいうガラナのことなんですけど、これってウソかホントか強壮効果があるともいいますよね。“青春の味”ってちょっとストレートすぎますけどよかったのかしら？<br clear="right"></font>

<font size="2">　ところで中村屋って、中華饅頭や水羊羹の店だとか思ってた方はいませんか？　こちらもなめてかかるととんでもないことになりますからね。この話、まだ続きます。</font></font>


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   <title>『人気のパン☆ヒットパレード』</title>
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   <id>tag:www.shibatashoten.co.jp,2011:/dayori//13.1460</id>
   
   <published>2011-12-26T00:53:19Z</published>
   <updated>2011-12-26T00:53:38Z</updated>
   
   <summary>『人気のパン☆ヒットパレード』 著者：柴田書店編 発行年月：2011年12月26...</summary>
   <author>
      <name></name>
      
   </author>
         <category term="製パン" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/">
      <![CDATA[<img alt="06131.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06131.jpg" width="72" height="97" align="left" hspace="10"><a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00613100" target=_blank><font color=#FF6633>『人気のパン☆ヒットパレード』</font></a>
著者：柴田書店編
発行年月：2011年12月26日
判型：B5変　頁数：152頁
定価：2,520円（税込）<br clear="left">

アイデアマンで段取り上手。
サービス精神も抜群！
繁盛パン屋さんは、そんな“デキる”方々でした。

人気のパン屋さんで、
 ピカリ<img alt="kira.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/kira.jpg" width="15" height="18" />と光るアレンジパンのレシピをうかがった本書。

レシピ数は１店につき最低４品、多いお店では７品から８品。
しかも、もれなくパンづくりの工程写真撮影までお願いしてしまおうという
盛りだくさんな取材を、快く <b><font color=#CC00FF size="4">ＯＫ</font></b> してくださったのが、
本書に登場する11人のシェフたちです。

取材時間は、仕込みのスタートに合わせて<img alt="taiyo.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/taiyo.jpg" width="60" height="28" />朝４時半から、
あるいはお店用の仕込みが一段落した夕方から、
あるいは２日にわたって……と、各店色々でしたが、
どのシェフにも共通するのは目を見張るような段取りのよさです。

必要な発酵や焼成の時間を見積もり、
「はい、じゃあＡのパンのミキシングが終わったから、
発酵させている間にＢのパンを成形しますね。
Ｃのパンは発酵させておきましたので、この次にやりましょう。
そのころには、Aの発酵が終わるでしょうから……」といった具合に、
別々のパンの作業を交錯させてテキパキとすすめるシェフ。

そして、最後にはすべてのパンがこんがりと焼き上がる。
それは、まるで綿密に構築された
オムニバスドラマのようにも思えるのでした。

しかし、80種から100種にも及ぶパンを毎日つくるシェフたちにとっては、
そんな段取りは当然の仕事だといいます。

<font color=#0066FF>おいしいパン、楽しいパンを考え出すアイデア力。
毎日決まった時間に、それらのパンをつくり上げる段取り力と持久力。
そして何より、もっとお客さまを喜ばせたいと
日々新たなパンづくりに取り組むサービス精神。</font>

そんなシェフたちの人間力が、
そのままパン屋さんとしての魅力につながっています。

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   <title>料理本のソムリエ [ vol．３５]</title>
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   <published>2011-12-21T06:57:36Z</published>
   <updated>2011-12-21T09:54:58Z</updated>
   
   <summary>【 ｖｏｌ．３５】 カレーの王子様が 密かに進める日本印度化計画 　前回は、最近...</summary>
   <author>
      <name></name>
      
   </author>
         <category term="料理本のソムリエ" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
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      <![CDATA[<font size="3"><font color=#FF3300>【 ｖｏｌ．３５】</font></font>
<p style="line-height: 200%"><font size="+2"><font color=#0066FF>カレーの王子様が
密かに進める日本印度化計画</font></font></p>

<font size="2">　前回は、最近のカレー本をちょっとくさしたりしましたが、それは歴史に関する記述に限っての話でありまして、実のところ、カレー関係の著作は料理本の中ではまあまあのレベルだと思います（商品開発やテレビ番組への協力などおいしい話がほうぼうに転がっているせいか、片手間仕事になってきている感じの本もおみかけしますが）。欧風カレーやインドカレーなどいろいろなタイプがあって、視野が広くなければならないからでしょうか。</font>

<font size="2">　またカレーマニアには自分でも厨房に立つ人たちが多いように思います。食べ歩き本でも作り手の立場から見るので、まがりなりにも分析しようという姿勢がみられますし、自分が好みではない皿に出会っても頭からこれはダメと決めつけない。カレーという料理全般に対する愛情がそこここに感じられます。その点、世の料理評論家と称する方々やグルメサイトの投稿マニアはといいますと…。その昔、カレーを食べすぎると舌が馬鹿になるとか、辛いものを食べすぎると頭が悪くなるとかいう説を聞いたことがあります。もしかしたらですよ、彼らは辛口評論家を名乗ろうとしたあまり、カレーマニアが驚くくらいの尋常ならざる量のカレーを食べて食べて食べまくったのでしょうか。それもきっと自腹で…。なんと過酷な道を選んだ勇者たちか！</font>

<font size="2">　カレーはもはや日本の国民食だそうですから、料理本が充実しているのは当然なのかもしれません。みごと国民食の座を勝ち得た理由については、いろいろ言われています。ご飯にかける洋食なので日本人にもなじみがよいから。軍の食事に取り入れられたため兵役経験者を通じて津々浦々まで広まったから。ご飯消費拡大をめざして学校給食に取り入れられたから…などなど。</font>

<font size="2">　私はもうひとつ、もともと子供に好まれやすいメニューであったから、というのも挙げたいですね。学童どころか幼児のうちからカレーはおなじみの料理です。のびてしまう麺類と違って冷ましてもそこそこいけますから、猫舌の子供でも大丈夫。箸が使えなくても食べられますし、柔らかい。</font>

<font size="2">　握りのおすしは骨はないし手づかみで食べられるのでなかなかの対抗馬ですが、子供の口にはちょっと大きいし、うまく食べないとくずれてしまう。そもそも回らないすし店は、お子様連れはご遠慮願ったりしていてせっかくの市場をスポイルしていますよね。散らしずしで作るものですが、「雛ずし」なんていう習慣があるくらいですから、本来すしは子供となじみがいいのに。小さく握るとネタが多く必要なうえに手間がかかるからですかね？</font>

<font size="2">　ラーメンやハンバーグもお子様がたの大好物でありますが、インスタントや冷凍食品となると手抜きという感じがどうしてもしてしまう。その点、カレーなら市販のルーで作れば簡単な割合に豪華そう。野菜もいろいろ入れられるし。レトルトだってこっそり使えば、お母さんの面目が立ちます。一家団欒というイメージもあり、“おふくろの味”の一角を占めるのもむべなるかなであります。</font>

<img alt="somurie_05916.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/somurie_05916.jpg" width="132" height="184" align="left" hspace="10"><font size="2">　思えば子供向けに特別に仕立てた味でかわいいパッケージの商品が、普通にスーパーにずらっと並んでいるっていうのもなかなか珍しいですよね。一人っ子を大事にする中国に行っても「麻婆豆腐小皇帝」なんて見当たらないものねえ。もっとも、これはこれで売れそうな気もするぞ。子供向けの味つけの麻婆豆腐のレシピは<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00591600" target=_blank><font color=#0000FF>『TOFU和と中華のおいしい豆腐料理』</font></a>に載っておりますので、中国で商品化を目指す方は勉強してください。</font><br clear="left">

<font size="2">　さて本題。こうしたイメージ戦略が効を奏したのか、料理関係の児童書を見ていますとカレー本がやたらに多いことに気づいたのですよ。子供に受けるし、ご両親も買って与えたくなる種類の本なのでしょう。昔はカレーがメインの絵本なんて洒落たものはなかったような気がするのですが、いつの間にやら大増殖しているようです。</font>

<img alt="kodomotosyoka.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/kodomotosyoka.jpg" width="130" height="193" align="right" hspace="10"><font size="2">　こちとら児童書はまったくの門外漢なものですから、専門図書館へ行ってまいりました。会社から歩いていける上野公園内に「国際子ども図書館」があります。ぞうさんやきりんさんの絵が描かれた原色っぽい建物と思いきや、威風堂々たる重厚なたたずまい。テラスのカフェも併設していて博物館のよう。実はこの建物は明治39年に建てられたもので、つい10年ほど前までは国立国会図書館上野支部だったんです。そういえば児童書専門の神保町ブックハウスも格調高いですが、こちらも元は洋書専門の北沢書店の新刊コーナーでしたっけ。ちょっとよそいきな感じなほうが、やんちゃな子供たちも神妙にしてくれていいかもしれません。ただ吹き抜けで天井が高い石造りの洋風建築は、お子様が泣かれますとわんわん響いてなかなかすごいことになります。</font><br clear="right">

<img alt="jidobungakukan.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/jidobungakukan.jpg" width="130" height="193" align="right" hspace="10"><font size="2">　一方大阪には日本一の蔵書数を誇る｢国際児童文学館｣がありますが、こっちは立派な本館とは別なところに入口が設けられ、ちょっとちんまりしておりまして、子供向けというよりは研究者向けかも。もともと千里の万博公園内にあったのが、東大阪の府立中央図書館に統合され、建物横にあったレストラン跡に移転したからであります。児童書ってえのは、空いた建物を転用するのが決まりなんですねえ。レストランの居抜きを選んだのは、いま流行りの絵本カフェをめざしたわけではないので、当然カレーメニューもおいてありません。経費節減のためでして、大阪人が好きなんは文楽よりも新喜劇とちゃいまっか、とかいう前知事によるご英断であります。</font><br clear="right">

<font size="2">　さてカレーが出てくる児童書ですが、カレー絵本コーナーなんて棚があるわけないし、そもそも専門図書館は原則閉架なので、パソコンの検索機能を使って探すことになります。ところが検索ワードに入れた音引き（“ー”のことです）は省略されてしまうので、うかれだぬきだのおしゃれカレンダーだのカーレンジャーだのすてきな彼だのカレーと関係ないタイトルもぞろぞろ引っかかって、探しづらいこと探しづらいこと…。用語を組み合わせたり絞ったりと苦心して拾い出したのですが、昼間からカレー絵本ばかりをやたらと借り出すおっさんていうのはかなり不気味ですね。</font>

<font size="2">　探せば出てくる出てくる。<font color=#0000FF>『カレーやしきのまりこさん』『ねえカレーつくってよ』『カレーをつくろう！』『まほうカレー』『カレーライスはこわいぞ』『かえるとカレーライス』</font>などなど…。こうして並べるとひとつのつながったストーリーみたいです。カレー屋敷で作ってもらったカレーを食べたら、魔法にかかって蛙になっちゃった、ってな感じ。</font>

<font size="2">　最後の本は実際にはもっとシュールな話でして、山が噴火したらカレーが流れ出てきて、それを蛙が食べるというストーリーです。別に酔っ払っているわけではありません。ナンセンスストーリーを得意とする長新太らしい作品です。文章は落合恵子で、彼が絵のみを手がけた<font color=#0000FF>『カレーライスのすきなぺんぎん』</font>も、カレーを食べていたらコップの氷水に小さいペンギンがいたという話。直木賞作家の井上荒野作<font color=#0000FF>『ひみつのカレーライス』</font>は、カレーの中から出てきた種を庭に植えたら、カレーの木が生えてきて…。大人的にはこういう理屈抜きの作品が面白いけど、子供受けはどうなんでしょうか。</font>

<font size="2">　カレーは不思議なスパイスや外国のイメージと結びつきやすく、魔法や王様となじみがいいことも、絵本や童話のテーマにとりあげられやすい一因でしょう。<font color=#0000FF>『いたずらまじょ子とカレーの王子さま』『カレーだいおうのまほう』『王さまのまほうカレー』</font>なんていうのもありました。『王さまのまほうカレー』は絵よりも文字が多い童話ですが、カレー作りに奮闘する王様ストーリーがなかなか読ませます。</font>

<font size="2">　ただし<font color=#0000FF>『カレーライスは王さまだ』</font>は現実の話であります。給食の調理現場の写真ルポでして、社会科の副読本のようです。人気のカレーにかこつけて、お勉強してもらおうという大人の欲が見え隠れるする本が多いのも、この分野の特徴ですね。もっともカラー写真をふんだんに使ってあったりして、大人の社会科見学みたいで意外と楽しめました。藤田千枝<font color=#0000FF>『カレーライスの本』</font>は料理を実験になぞらえて、段取りの大切さを説いたり、加熱で細胞がどう壊れるかを説明したりと、なかなか高度な内容です。</font>

<font size="2">　そもそも前回紹介した『カレーライスと日本人』の森枝卓士氏は、この新書本と同時進行で子供向きの『たくさんのふしぎ』という月刊誌にも執筆しておりまして、のちに<font color=#0000FF>『カレーライスがやってきた！』</font>というタイトルで独立した本として刊行されております。吉田よし子氏も<font color=#0000FF>『カレーライス　はじめはどこで生まれたの？』</font>という本を監修しています。カレーを通じて世界の国々や文化を学んでもらおうという企画は結構多い。<font color=#0000FF>『おどろうつくろうABC DEカレー』</font>なんていう英語を学べる本もありまして、カレーだけで学校の授業が組めそうなくらいです。</font>

<font size="2">　うーん、これだけいろいろあるとなると脳みそは完全にカレー漬け。日本人は将来ますますカレー好きになること間違いありませんな。インドの秘密結社の陰謀でしょうか？
　あ、ちなみに私が幼少のみぎりによく読んだ絵本は<font color=#0000FF>『モチモチの木』</font>でありました。なぜなら木の実で作るおいしそうなもちが出てくるから。あと絵本といったらこれくらいしか持っていなかったから。ついでに同じ斎藤隆介・滝平二郎コンビの<font color=#0000FF>『ちょうちん屋のままッ子』</font>も話の後半で、主人公の長吉が料理店に修業に入るところばかり気に入って繰り返し読んでおりました。そうかあー、器は底の真ん中を一生懸命洗うといいのかあ、とか子供のくせに納得したり。見事に日本料理ファンとして洗脳されております。</font>

<font size="2">　さて、この与太ブログの更新も今年はこれでおしまい。最後に明治40年12月30日の読売新聞で紹介されました「ハイカラ年越蕎麦」を紹介いたしましょう。東京割烹女学校が考案したライスカレー式蕎麦料理であります。</font>

<img alt="haikarasoba.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/haikarasoba.jpg" width="240" height="180" align="left" hspace="10"><font size="2">　まず豚肉100匁（375ｇ）を細かくつぶし（刃叩き？　それともミンチのこと？）、水１升の鍋でアクが煮上がるまで煮上げ、アクをすくい取ります。椎茸20匁（75ｇ）、油揚げ３枚、タマネギ大２個、青カブ大１個を細かくさいの目に切ったものを加えてかき混ぜ、それが柔らかくなるまでもう一度煮上げます。さらにミリン少量を落とし、醤油と食塩を加えて味をととのえます。別に蕎麦の玉10個をざるに入れて熱湯をかけ、湯気をとっておき、かねて煮溶かしたバターの中に入れてかき混ぜ、適宜の容器に盛ります。先の煮上げた材料をかけてできあがりです……ってこれのどこがライスカレー式なのか。上から具をかけているから？　それともカレー粉を入れ忘れているんでしょうか…。</font><br clear="left">

<font size="2">　このレシピの蕎麦はゆでおきのようですが、もちろん普通に乾蕎麦をゆでてもOK。タマネギやカブから甘みが出るので、ミリンは加えなくてもよいかもしれません。ちょっと味が物足りない方は、ほんとにカレー粉を入れてもいいですよ。
　ともあれ100年前の“すこぶるハイカった料理”のできあがり。話の種にどうぞお試しください。</font></font>

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   <title>『魯山人と星岡茶寮の料理』</title>
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   <published>2011-12-09T01:09:10Z</published>
   <updated>2011-12-09T01:09:40Z</updated>
   
   <summary>『魯山人と星岡茶寮の料理』 著者：柴田書店編 発行年月：2011年12月14日 ...</summary>
   <author>
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         <category term="日本料理" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/">
      <![CDATA[<img alt="06132.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06132.jpg" width="72" height="93" align="left" hspace="10"><a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00613200" target=_blank><font color=#FF6633>『魯山人と星岡茶寮の料理』</font></a>
著者：柴田書店編
発行年月：2011年12月14日
判型：B5変　頁数：152頁
定価：2,310円（税込）<br clear="left">

　入社して２年目の秋、京都出張は数えるほどしか経験していなかった頃のこと。取材先の料理人さんに教えてもらった知る人ぞ知る板前割烹の実力店へ、その日のうちに飛び込みで食事に参りました。夕方に電話を入れてすぐに押しかけるという、いま思えばずいぶん失礼なお客ですが、やる気だけはあるところを買ってもらえたのか、ご主人と意気投合。コノワタを肴に夜中まで話らいました。そのときに見せていただいたのが、ご主人がよそから借りていた星岡茶寮の機関誌『星岡』の復刻版。いわく、「柴田書店はもっとこういう本を作らなければいけないよ」。

　泊まっていきなさいとおっしゃってくれているのを強引に辞して、深夜の京都をあてもなく歩きました。碁盤の目の京都の街は三方を山に囲まれているので、慣れない酔っ払いにはどの角を曲がっても同じように見えて、どっちに向かって歩いているかわからない。いつかご主人をうならせる本を作ってやろうと考えながら、夜の京都をぐるぐるぐるぐる……。

　一晩のコノワタの恩義に報いるため、『星岡』の復刻本を送ろうと古本を探したのですが、結局現物を手に入れるのに６年近くかかりました。苦労して探し出してくれた古書店主いわく、「秦秀雄も罪な人だよねえ。自分が関わった雑誌しかまとめなかったのだから」。なぜか22号から80号までと全巻の半数しか収録しておらず、発行部数もわずかにとどまった復刻雑誌。どうも魯山人の周囲にはいろいろと複雑な事情がありそうだと薄々感づきました。

<img alt="06132_2.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06132_2.jpg" width="102" height="139" align="right" fspace="10">　実は陶磁史を研究していたので学生時代に魯山人の文章は読んだことがあったのですが、独力で学んだ人ならではの地に足がついた芸術論や料理論を期待したら、うわすべりのご託宣でがっかり。白崎秀雄の小説はひどい内容だと噂にきいていたのでまったく開いたことがないままでした。ところが雑誌でだしの特集を組んだとき、戦前はどんな方法だったのだろうと、魯山人著作集を開いてみたら文中にテレビが出てくるのにびっくり。どうにもこうにも合点がいかない。いつかは魯山人と対決しなけりゃならんと腹を決め、ついに器と盛り付け特集号の<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=08073800" target=_blank><font color=#3399FF>別冊 『日本料理の四季』</font></a>で取り上げました。今から３年前の話です。<br clear="right">

　どこをどう調べればいいかは昔とった杵柄で、ちょっとつつくだけでいくらでも新資料が出てきます。うれしかったのは、魯山人が書道展覧会で褒状をとった際の新聞記事がどうしても見つからず（いま思えばそんなものは世になかったのですが）、図書館で白崎の小説をもう一度確かめようとしたとき。同じシの棚に島崎藤村の短編小説集があって、「そういえば彼は星岡茶寮で結婚式を挙げたんだっけ…」となんとなくパラパラ開いたら、魯山人をモデルにした小説が目に飛び込んできたのです。また同じ週の天皇誕生日には神奈川近代文学館で、星岡茶寮の献立の実物にたどりつきました。資料タイトルは「今年竹出版記念会献立表・受領書」とあるだけで、実見して初めてそれとわかったものです。あの日の横浜はクリスマスイルミネーション一色で、思いがけないサンタの贈り物に浮かれました。平日は雑誌編集作業があるので仕方なく、土日祝日をすべて魯山人調査に投入した半年でありました。

<img alt="06132_1.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06132_1.jpg" width="413" height="135" />

　そうした成果のまとめを掲載して、京都の夜に出された宿題をようやく提出したつもりでいたのですが、いつになっても魯山人に関する新知識が世に広まる様子がありません。『料理王国』が２冊も文庫化されたり、「現存する資料のほぼすべてに目を通し」た立派なご本が文庫化されたりしているのに。『日本料理の四季』には私が編集した号以外にも、吉田耕三先生の連載記事や、当時の編集部が総力を上げて作った魯山人特集号があるのですが、一向に参考図書に入る気配がありません。

　そこでせっかくなので２つの別冊を単行本にまとめました。ご購入ずみの方には申し訳ないので、その後に発見した戦前の婦人雑誌中の魯山人情報を大幅追加いたしました。これでようやく、魯山人に関する資料の末席に連ねてもらえるのではないかと思います。


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   <title>料理本のソムリエ [ vol．３４]</title>
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   <published>2011-12-07T08:06:02Z</published>
   <updated>2012-02-01T03:49:49Z</updated>
   
   <summary>【 ｖｏｌ．３４】 第一発見者は別人だった！ 船上で侍ボーイが見た謎の外国人、 ...</summary>
   <author>
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         <category term="料理本のソムリエ" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
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      <![CDATA[<font size="3"><font color=#FF3300>【 ｖｏｌ．３４】</font></font>
<p style="line-height: 200%"><font size="+2"><font color=#0066FF>第一発見者は別人だった！
船上で侍ボーイが見た謎の外国人、
その手にはいったい何が!?</font></font></p>

<font size="2">　前回またまたカツ丼の話なんかに寄り道した挙句の果てに、カレー粉の本の話になっちゃいまして、カレーの本は結局まともに登場しませんでしたね。いよいよもってトンカツ偏執者、違ったトンカツ編集者の烙印を押されそうなので、今回こそカレーの本の話といたしましょう。</font>

<font size="2">　そもそも私はトンカツじゃなくて、スパイスの歴史を研究して香料諸島に行くのが学生時代の夢だったのですよ。それがどこかで道をまちがえまして、どっちも果たせずになぜかここでこうしてこんなブログを書いています（遠い目）。月刊誌の編集者時代にエスニック特集が組まれたときはそりゃあ嬉しくてサンバルとかカピとか集めて張り切ったものですが、その号はあんまり売れずにがっかりしましたよ（さらに遠い目）。当時としては聞いたこともない香りも知らないスパイスやら調味料の話っていうのは、あんまり関心を引かなかったのかもしれません。
<img alt="06022.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06022.jpg" width="102" height="142" align="left" hspace="5">ですから４年前に小社からカレー専門店から東南アジア料理店まで33店のレシピを集めた<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00602200" target=_blank><font color=#0000FF>『カレーのすべて』</font></a>が出たときは、読者がついてくるのかひやひやしたものです。ところが意外やアマゾンのレビューをみるとプロ以外の人も買って試しているようで（そのため分量が料理店仕様で多すぎるとかいう不評もありますが、これは小社の本の宿命でして…）、隔世の感がありますねえ。<br clear="left"></a></font>

<font size="2">　いまや素人だって各種スパイスを手に入れて汗をかきかき本格的なカレー作りに挑戦する時代。カレーに関する本も汗牛充棟、本棚からこぼれ落ちそうなほど出版されています。レシピ本やガイド本は例によって割愛しても、薀蓄本、雑学本がずいぶん増えました。</font>

<font size="2">　その嚆矢は1983年の江原恵の<font color=#0000FF>『カレーライスの話』</font>あたりでしょうか。74年に『庖丁文化論』で鮮烈デビューした江原氏は“料理学”の論客をめざした人でありまして、家庭料理の店を経営したこともあり、実体験に裏打ちされたユニークな着眼点が学者さんにない持ち味です。ただし代用教員から料理人になったという経歴のせいか、生粋の料理人を終生の敵と捉えている節があるうえに、高価な料理や外国料理は特権階級のものであるという階級史観臭が全体をおおっておりまして、アジ調っぽい内容です。第一章は友人との会話スタイルになっているのですが、それがまどろっこしくて成功しているとは思えません。料理の理解が中途半端で、敵の姿がはっきり見えないままにいきんでいます。まあ、全共闘世代が好みそうではありますが…。</font>

<img alt="curryko.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/curryko.jpg" width="150" height="250" align="left" hspace="5"><font size="2">　続いて1989年の森枝卓士の<font color=#0000FF>『カレーライスと日本人』</font>は、海外旅行が珍しくなくなったバブル時代の本らしく、インド人に日本風カレーを食べてもらって感想を求めたり、カレー粉のブランドとして戦前から名高かったC＆B社（ちなみに同社の製品は今でも現役です）を訪ねてイギリスに渡ったりと実に活動的です。ポストモダンの80年代というよりは小田実の「何でも見てやろう」的スタンスなのですが、机の上にとどまらずに実地で調べてやろうという姿勢に好感が持てます。ただ取材ルポルタージュという形でまとめてしまったがために、当時はビビッドだった著者の感想や説明が逆にあだになって、今読み返すとどうしても20年前の本という印象を受けてしまう。難しいものですねえ。</font>
<font size="2">　文句ばっかりですがこの２冊、著者の個性がはっきり出ている点が、昨今のカレー本とは一味違うところです。現在のカレー本の基礎を作ったといってもいいでしょう。<br clear="left"></font>

<font size="2">　続いて92年には吉田よし子の<font color=#0000FF>『カレーなる物語』</font>が出版されます。熱帯植物の専門家が語るスパイスの説明が売り物なのですが、この本にはひとつ問題が。日本で最初のカレー目撃談として「飯の上にトウガラシ細味に致し、芋のドロドロのようなものをかけ、これを手にて掻きまわして手づかみで食す。至って汚き物なり」と、幕府の第二回遣欧使節団に参加した三宅秀の日記を紹介しておりまして、2000年の井上宏生の<font color=#0000FF>『日本人はカレーライスがなぜ好きなのか』</font>や08年の水野仁輔の<font color=#0000FF>『カレーライスの謎』</font>などいろいろな本にも引かれております。刀を差した若侍が初めて日本の国を離れ、船中で外国料理を見て目を白黒させる…なんていうエピソードは世の人の好むところでありますから。</font>

<font size="2">　ところが02年の小菅桂子の<font color=#0000FF>『カレーライスの誕生』</font>では、「三宅秀関係書籍にあたったかぎり目撃情報はどこにもなかったので真偽のほどはわからない」とあります。どうやら軍配は小菅氏に上がるようでして、<font color=#0000FF>『サムライ使節団欧羅巴を食す』</font>や<font color=#0000FF>『拙者は喰えん！ サムライ洋食事始』</font>では、ほとんど同じ文が同じ使節団の岩松太郎の日記にあることが指摘されています。ただし「汚き物なり」ではなくて「きたなき人物の者なり」。カレーが見苦しいのではなくて、食べ方が見苦しく感じられたのですね。ちなみに文久４年２月５日（1864年３月12日）の岩松日記には、この食べ方をしていたのはインド人ではなくアラビア人とあります。彼らは夕陽に向かって三拝したりと（ムスリムの礼拝でしょうか）、日本人の目には奇妙に映ったようです。</font>

<font size="2">　まあ正直な話、ほとんどの人にとっては最初にカレーに出会ったらしいお侍が三宅君でも岩松君でも構わないでしょう。ただ94年の<font color=#0000FF>『丁髷とらいすかれい』</font>では、表紙にカレーを手にした羽織袴の三宅秀の似顔絵が描かれており、ちょっと勇み足でした。</font>

<font size="2">　なお井上氏は三宅秀の日記からと紹介しておきながら、「汚く人物の者なり」と引用しておりまして、吉田氏の本とも微妙に違います。いったいどこが誤りの震源なのかしら。三宅秀のエピソードは何々の本から採りましたと明記してあれば話は簡単だったのですが、それがないからわからない。料理関係の薀蓄本にはよくある話です。お固い研究書じゃないからいいじゃない、というのが理由でしょうが、固くない料理の話こそいろんな本に丸写しされやすいので、間違いが広まりやすくて危険です。書き写していくうちに誤解も生じます。伝言ゲームみたいなものですね。時間が経つにつれて研究が進み、真実に近づいていくかと思いきや、むしろどんどん遠ざかったりします。おまけに今はネットっていう厄介なものもありまして、試しに三宅秀＋カレーで検索してみるとぞろぞろぞろぞろ…。</font>

<font size="2">　それにつけても皆さんカレーを初めて見た日本人とか、カレー南蛮の発明者とか、ホント初めてが好きですよねえ。いま私がちょっと気になっているのは、日本初の即席カレー「ライスカレーのタネ」を売り出したとされている神田松富町（今の外神田）の「一貫堂」についてでして。</font>

<font size="2">　この製品は明治39（1906）年の新聞の広告によると「カレー粉及極上生肉等を調合乾燥し固形体となしたる」とあり、熱湯で溶かしてご飯にかけて食べるそうです。で、さらに続けて「尚流行の蒸パンや（に?）バタの代りに着けて召し食（あが）ると至て結構です」と謳っております。カレーパンの実用新案特許は1927年に出されていると『カレーライスの誕生』にありまして、カレーとパンの組み合わせとしてはずいぶん早いですよね。イギリス人だってカレーはパンじゃなくてライスと食べます。ナンやチャパティの代わりかしら？</font>

<img alt="risecurry.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/risecurry.jpg" width="180" height="270" align="right" hspace="10"><font size="2">　実は一貫堂は蒸しパン用のセイロやパン種の発売元なんですよ。だからこんなに蒸しパン推しなんですね。本業はいったい何だったのでしょう。さらに付け加えるとほぼ同時期、同じ神田でも猿楽町の「蔦の家岡島商店」という店が、やはりライスカレーの種を売り出しております。東京朝日新聞の広告では、こちらの出稿のほうが2ヵ月早いくらいでして、どちらが先に売り出したのかはよくわかりません。翌年３月の広告によると「ライスカレーノ種」で商標登録をとったようですし（一貫堂のほうの広告は「ライスカレー種」「ライスカレイ種」というのがありましたがライスカレーのタネというのは見つかりませんでした）、一貫堂がシチュウ種を発売すればハヤシライスの種を発売するという具合で、手ごわいライバルだったと思うのですが、各種カレー本ではまったく取り上げてもらえていません。</font><br clear="right">

<font size="2">　湯で溶くだけではたしておいしく食べられたのかちょっと疑問でありますが、この年の『家庭雑誌』12月号「カレーの話」には、「近頃盛んに広告せられているライスカレー種と言ふもの」というくだりがありまして、結構話題になったようです。ちなみにこの雑誌、堺利彦の創刊でこの号の編集人は大杉栄。また即席の既製品に頼らないカレーの保存法をとくとくと解説した大石禄亭は、大逆事件に連座した大石誠之助のペンネーム。全共闘かぶれなんぞは裸足で逃げだす布陣であります。</font>

<font size="2">　そもそもこの製品、｢肉を調合乾燥｣ってフリーズドライみたいですが、誰の発案で、どのように製造したのでしょう。ほかにも同じような商品に取り組んだメーカーはあったのでしょうか。ここんとこをもう少し掘り下げたいところですね。明治37年から38年の日露戦争の頃に湯に溶かすと中から国旗やらが出てくる懐中汁粉が流行ったそうですが（以前、松江の和菓子屋さんが復刻発売しておりました）、その辺からの発想だったんですかねえ。世のカレー本はずいぶん増えましたが、まだまだわからないことはありそうです。</font>

<font size="2">　振り返ってみますと、江原・森枝両氏の本が、岩波新書の向こうを張った三一新書と講談社現代新書に収められているのに対し、吉田・小菅両氏は筑摩プリマーブックスと講談社選書メチエで、井上・水野両氏は平凡社新書に角川SSC新書。時代が反映されてますね。料理の話題がどんな本で語られてきたか、出版文化上どんな扱いを受けてきたかがなんとなくうかがえます。濃い欧風カレーの時代から、本格派をうたったインドカレーが一般にも広まって、近年わっとスープカレーブームが起きたのとなんだかちょっと似てますねえっていうと、たとえが悪いですかね。いやいやいや、スープカレーや井上・水野両氏が本格的じゃないって言ってるんじゃけっしてないですよ。スープカレーは江原氏がいうところの汁かけ飯タイプのカレーの復権であり、カレーの新しい道を示しています。井上氏の本はノンフィクション作家らしい手練なまとめ方だし、水野氏の本はルーやレトルトといった日本のカレー文化の根本を支えている商品にスポットを当てている点でなかなか読ませます。ただ、最近の新書はどっかで読んだことのある話が多くて、ちょっと薄いんですよねえ。まあ、これも好みの問題でありますが。</font>

<font size="2">　ちなみに著者のはっきりしないカレー雑学本のたぐいは、それこそ既存の本の寄せ集め色が強いのでここでは取り上げませんでした。ただし84年の<font color=#0000FF>『カレーライスの本』</font>は別格でして、カレー写真、じゃなかったカラー写真で阿佐田哲也が我が家のカレーの作り方を伝授したり、官公庁の食堂のカレーライスを食べ比べたりとなかなかひねった内容です。この本はフタバブックスというシリーズで、新書版なのに丸背の上製本というちょっと豪華な作り。のちに双葉文庫から出た<font color=#0000FF>『カレーライス物語』</font>と比べるとデザインも企画力も古きよき時代を感じさせますな。</font></font>


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   <title>『フレンチテクニック　パイ料理』　編集担当者より♪</title>
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   <published>2011-12-01T02:41:39Z</published>
   <updated>2011-12-01T02:49:40Z</updated>
   
   <summary>『フレンチテクニック　パイ料理』 著者：柴田書店編 発行年月：2011年12月2...</summary>
   <author>
      <name></name>
      
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         <category term="フランス料理" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/">
      <![CDATA[<img alt="06130.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06130.jpg" width="72" height="98" align="left" hspace="10"><a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00613000" target=_blank><font color=#FF6633>『フレンチテクニック　パイ料理』</font></a>
著者：柴田書店編
発行年月：2011年12月2日
判型：B5変　頁数：128頁
定価：1,890円（税込）<br clear="left">

　秋から春にかけて、根強い人気のメニュー<font size="3" color="#CC0033">「パイ料理」</font>の登場です。

　「パイ料理」は私の好物の一つでもあります。
小さい頃に読んだローラー・インガルス・ワイルダーの『大草原の小さな家』に、
トウモロコシ畑を食い荒らすムクドリを鉄砲で打ち落とし、
肉汁がしたたるジューシーなムクドリパイを母ちゃんがつくってくれた、
というくだりがあったと記憶しています。
まだ見ぬムクドリパイへの憧れが、
私のパイ料理好きのはじまりだったのかもしれません。
さて、昔話はここまでにしておきましょう。

　今回も５名のシェフにご登場いただきました。
日本人ではじめてアランシャペル氏に師事した音羽シェフ、
そして神戸ポートピアホテルのレストラン「アランシャペル」で修業をした
小峰シェフ（アランシャペルつながりですね）。
そして何度もご登場いただいている花澤シェフと荻野シェフ、
初登場の松本シェフによる「パイ料理」の饗宴です。

中が見えないパイ包み焼きの<font color="66CC00"> 余熱を使った火入れの技</font>、
<font color="66CC00">軽く焼き上げるためのコツ </font>など、ヒントが満載。
どうぞ参考になさってください！


<img alt="06130_2.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06130_2.jpg" width="150" height="225" align="left" hspace="5"><font size="3" color="#CC0033">◆小さなパイの盛り合わせ</font>
<font size="3">　 （オトワレストラン）</font>


一つのパイ生地で、
違う味の一口パイが何種類もできました。
立食パーティなどのカナッペにも便利。<br clear="left">


<img alt="06130_3.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06130_3.jpg" width="150" height="225" align="left" hspace="5"><font size="3" color="#CC0033">◆ブレス産雌鶏とリー・ド・ヴォー、
　フォワグラのパテ・アンクルート</font>
　<font size="3">（ラ・ターブル・ド・コンマ）</font>

高さのある大型のパテアンクルート。
圧巻です。表面に施されたパイ飾りも見事！
切り分けるのが惜しかったなあ・・・。

<img alt="06130_4.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06130_4.jpg" width="67" height="80"><br clear="left">


<img alt="06130_6.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06130_6.jpg" width="150" height="225" align="left" hspace="5"><font size="3" color="#CC0033">◆鮎のパイ包み焼き</font>
<font size="3">　（ボンシュマン）</font>


かわいらしい姿！
シェフによるとアユの塩焼きのイメージとか。

でも私にはぬくぬくと布団にくるまれた
アユとしか思えないんです。
ボンシュマンのスタッフの生まれ故郷、
郡上からアユが届きました。<br clear="left">


<img alt="06130_5.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06130_5.jpg" width="150" height="225" align="left" hspace="5"><font size="3" color="#CC0033">◆ウナギパイ （笑）</font>
　<font size="3">（オギノ）</font>


浜松銘菓「うなぎパイ」にちなんで、
こう名づけたそうです。

これが受けて、
お客様に親しみをもっていただいたメニューの一つ。
ウナギはマトロット風に赤ワインで煮てあります。<br clear="left">


<img alt="06130_7.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06130_7.jpg" width="150" height="225" align="left" hspace="5"><font size="3" color="CC0033">◆うずらの爽やかな香りを
閉じ込めたパイ包み焼き</font>
　<font size="3">（メルヴェイユ）</font>

中にはオレンジの皮とタイム、
グリエしたウズラが入っています。
このまま客席でパイの蓋を切りはずし、
立ち上る香りを堪能していただくという趣向。
こうした演出ができるのもパイ料理の魅力。
<img alt="06130_8.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06130_8.jpg" width="67" height="80"><br clear="left">
<br>

====　<font color=#009900>“フレンチテクニック”　シリーズ</font>　=========================</font>

<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00608200" target=_blank><img alt="06121_4.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06124_6.jpg" width="80" height="109" border="0"></a>　<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00608300" target=_blank><img alt="06124_7.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06124_7.jpg" width="80" height="109" border="0"></a>　<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00610900" target=_blank><img alt="06124_8.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06124_8.jpg" width="80" height="109" border="0"></a>　<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00612400" target=_blank><img alt="06130_1.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06130_1.jpg" width="82" height="109"  border="0"></a>]]>
      
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   <title>『図解　飲食店の店舗設計』　編集担当者より</title>
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   <published>2011-11-29T09:02:21Z</published>
   <updated>2011-11-29T09:03:14Z</updated>
   
   <summary>『図解　飲食店の店舗設計　30業態徹底解剖』 著者：竹谷稔宏、青島邦彰　共著 発...</summary>
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         <category term="経営書" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
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      <![CDATA[<img alt="15327.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/15327.jpg" width="82" height="114" align="left" hspace="10"><a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=01532700" target=_blank><font color=#FF6633>『図解　飲食店の店舗設計　30業態徹底解剖』</font></a>

著者：竹谷稔宏、青島邦彰　共著
発行年月：2011年12月2日
判型：B5変　頁数：196頁
定価：2,940円（税込）<br clear="left">

近年、街場の生業店がなくなりつつある。
後継者難ということもあり、寿命が尽きる。
まあ、戦後も一回転したということだろう。

他方、還暦・再生の道もあるわけで、
若い人を中心に新しいタイプの店も輩出している。
しかしながら、新店はできるものの長続きせず、
どうかすると半年も経ずして閉店というケースも散見される。

その要因として、開店自体が優先され、
どういう飲食店、どのようなスタイル・業態の店をやりたいのか、
はっきりしないまま、空間デザイナーとかマーケッターの言葉を鵜呑みにして、
走り出してしまうことが多いようだ。

結果、何ともちぐはぐな店づくりに堕してしまう。
あるいは、よく言われるように、開店が目的化する場合もある。

開店は、あくまでスタートラインにすぎない。
したがって入念な準備が必要であり、この前提が崩れると、
需要を吸収できないまま短期間で閉店という怖いことも起きる。

拙速で大事な“虎の子”を失わないように、
店舗設計は念には念を入れ、慎重を期したいものだ。


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   <title>料理本のソムリエ [ vol．３３]</title>
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   <published>2011-11-24T05:37:47Z</published>
   <updated>2011-11-24T09:09:38Z</updated>
   
   <summary>【 ｖｏｌ．３３】 横浜で食べたと君が言ったから ６月２日はカレー記念日 　さて...</summary>
   <author>
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   </author>
         <category term="料理本のソムリエ" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/">
      <![CDATA[<font size="3"><font color=#FF3300>【 ｖｏｌ．３３】</font></font>
<p style="line-height: 200%"><font size="+2"><font color=#0066FF>横浜で食べたと君が言ったから
６月２日はカレー記念日</font></font></p>

<font size="2">　さて今回はトンカツの揚げ方にかこつけて、出張のたびにフィルム現像が上がるまで飲み食いして時間をつぶした大阪のトンカツ屋さんや、５年生のときに引っ越したトンカツ屋のマアちゃんの思い出をしっぽり語って、昭和気分にどっぷり肩まで浸かる気満々でいましたが、あまりにくどいので自重します。なんだかトンカツフリークと思われかねないし。「現像って会社のＰＣでやるんじゃないの？」とか言われかねないし。前回出オチを書籍部のツイッターでばらされちゃったあげくに、ポテトが芋カツ呼ばわりされてるし。芋カツはサツマイモで作るもんだいっ。どっちもポテトだけど…。</font>

<font size="2">　<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/2011/10/13_1141.html" target=_blank><font color=#FF3300>vol30</font></a>ではカツカレーに、<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/2011/10/26_1053.html" target=_blank><font color=#FF3300>vol31</font></a>では『西洋料理通』のカレーのレシピに触れたことですし、今度はカレーの本の話にしましょうか。カレーといえば暑い時期の料理書フェアの定番でして、わが社のカレー関連本も夏のほうが動きがいいとか。ちょっと季節はずれな感じもありますが、熱々のカレーは冬食べてもいいもんですよ。「おせちに飽きたらカレーもね」という先賢の格言もあることですし。</font>

<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/list.php?cid=11" target=_balnk><img alt="curry.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/curry.jpg" width="284" height="132" /></a>

<font size="2">　それに、なんでも12月１日は、料理研究家や業界有志が立ち上げた団体「カレーうどん100年革新プロジェクト」によって、昨年「カレー南蛮の日」と定められたようですよ。なぜまたこの日かといいますと、カレー南蛮を発明したと言われる「目黒朝松庵」の２代目ご主人、角田酉之助さんの誕生日なんですって。ちなみに「カレーうどん」の日のほうもありまして、８月２日です。６月２日が「カレーの日」、７月２日が「うどんの日」なので、その流れで８月に割り振ったのだそうです。</font>

<font size="2">　旧暦の７月２日は半夏生で、香川県の農家の人は田植えを終えたこの日にうどんを食べる風習があったから、ずいぶん前に県の麺業界がこの日をうどんの日に定めたってのは知ってましたが（うどん業界は「おせちに飽きたらうどんもね」と、３年前から「年明けうどん」を提唱し始めたりと、行事化に熱心ですね）、６月２日はカレーの日だったんだあ。なんで？と思ったら、横浜開港記念日にちなんで「横浜カレーミュージアム」が決めたのでした。カレーは横浜から入ってきたから、というのがその名目ですね。じゃあきっと、６月２日は「ホールクコツトレツの日」や「シトルトスプウンの日」の有力候補でもあるんですね。あ、「トンカツの日」のほうはもう決まってまして10月１日だそうですから、６月２日にしちゃだめですよ。10（トン）＋１番（勝つ）だから10月１日。日本記念日協会に一件７万３５００円もかけて登録されているんだから、勝手に変えちゃあ困りますからね。</font>

<font size="2">　このほか協会に認定された記念日には、「イタリア料理の日」（９月17日はきゅういちなな→クチーナ）、「鯛の日」（10月10日はかつての体育の日→鯛食う日）なんていうアイデア５割にこじつけ５割のもありまして、いわれがどうのとか由来がこうのとか言うほうが野暮みたい。とはいえこういうのは、販促に活用したくて決めるもの。だったら、思い切りふざけて笑いをとるかまじめかのどちらかに徹したほうが宣伝効果があるような気も…。創案者の誕生日とかいうのは、冗談なんだか本気なんだかちょっとビミョーですよねえ。そもそも「カレーうどん100年」っていうのがねえ…。おおっと、よせばいいのにご隠居の大人げない物言いがまたぞろ始まりましたよ。
　だって、去年はカレーうどんが「日本全国に浸透」してから100年になるっていうのがプロジェクトの旗揚げ理由なんですが、誕生じゃなくて浸透っていうのがなんだか歯に物が挟まったような感じですっきりしないじゃないですか。何をもって浸透したとみなしたのでしょう。カレーうどんが1910年の流行語のトップに躍り出たから？　「この味がいいね」と村井弦斎あたりが言ったからでしょうか？

<font size="2"><img alt="05852.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/05852.jpg" width="82" height="117" align="left" hspace="10">　カレーうどんの起源は寡聞にして存じ上げないのですが、カレー南蛮の起源については小社刊<font color=#0000FF>『蕎麦の事典』</font>に３つの説が挙げられています。<br clear="left"></font>

<font size="2">１） 明治42（1909）年に大阪の谷町５丁目の「東京そば」の角田酉之介が始める。翌年東京に戻って始めたが、東京のそば店は保守的なので苦労し、軌道に乗り始めたのは大正３、４年から。</font>

<font size="2">２） 明治43（1910）年に食料品店田中屋の杉本チヨが、そば店向けのカレー粉を研究して、「地球印 軽便カレー粉」の名称で商標登録した。</font>

<font size="2">３） 明治40（1907）年に早稲田の「三朝庵」が売り出した。</font>

<font size="2">　新島繁さんは学究肌の人ですから、諸説あるのでとりあえず並列させたのでしょう。１の説が100周年の根拠（もっとも東京での販売開始ですね。だから浸透なのか？）で、これならまあ２の顔も立ちます。ただし３をとると、去年はカレー南蛮103年になっちゃう。</font>

<font size="2">　ちなみに三朝庵は、例のカツ丼を発明したと言われている店でもあります。初代加藤朝治郎氏が大正７，８年に余ったカツを使って今のような卵でとじる和風のカツ丼を始めたとか。これに対しvol30にて紹介した早稲田大学学生発明説は『早稲田大学史記要』２巻１号に載っております。中西敬二郎氏が入学した大正９年当時、早稲田のまわりで昼食を食べられる店は「三朝庵」「大野屋」「高田牧舎」など十指に満たないくらい。中西青年は毎日同じような料理を食べるのに飽きてきて、ひいきにしていた｢カフェーハウス｣という店に提案して、カツを切ってご飯にのせてメリケン粉と煮合わせたソースをかけて特売品にさせたとか。びらを書いてやって店頭に掲げたところ大当たり。大正10年２月のことでありました。うーん、これでは卵でとじた和風のカツ丼のほうが先で、ソースカツ丼のほうが後に誕生したことになりますね？</font>

<font size="2">　中西氏は文楽の研究で早大に奉職しており『早稲田大学八十年誌』の執筆者でもあります。これは早稲田の公式見解なのかなあと思いきや<font color=#0000FF>『ベストオブ丼』</font>には、『早稲田学報』に別の説も載っていると紹介されておりました。さすが学問の府ともなると談論風発ですね。1983年の２・３合併号をさっそく見たところ、84歳の卒業生の回想によると、大正６年早稲田の鶴巻町にソースをかけたカツ丼を出す店があったとか。カツが冷めないように火鉢で温めていたなどディテールもリアルで、記憶違いではなさそうです。今は福井県に移転した「ヨーロッパ軒」はもともと早稲田に店を構えており、この回想にある店と同一という見方もあるようです。同店のＨＰによると、そもそもの始まりは主人の高畠増太郎氏が大正２年の料理発表会で披露したものであるとか。</font>

<font size="2">　おっと、これまた複数の説が対立しておりますね。ソースカツ丼のほうが先に生まれたほうが自然ですから、大正10年よりも大正２年誕生説というのは有力ですが、この年に開かれた料理発表会ってのは具体的に何でしょうか…。また先の早稲田学報には続きがありまして、同じ頃に穴八幡のほうには卵とじのカツ丼を出す「高田舎」という店があったというのです。この店は先述の「高田牧舎」の姉妹店だそうですから、中西氏も知っていておかしくないような気も…？　さらにカツ丼中西氏発明説を報じた朝日新聞には、当時78歳の読者が旧制中学の頃（入学したばかりならこれも大正６年頃ですね）、甲府の駅前にカツ丼を提供する店があったという反論の投書も寄せられていたとか…。</font>

<font size="2">　こうしてみるとカレー南蛮もカツ丼の発明も、どの店で発明されたと断定するのは難しい。いろいろなところで同時並行して誕生した可能性もありますし。となると団体名を「カレー南蛮誕生から約100年プロジェクト」にすれば、より正確だったのですが、うどんを前面にかかげないと困る事情もあったようです。</font>

<font size="2">　なお２番目の田中屋は屋号でして、正式名は杉本商店。今も業務用のカレー粉を扱う現役の企業でして、ＨＰによるとそば店向けに開発したカレー粉を商標登録したのは明治43年11月7日だそうです。この日をカレーうどんだか南蛮だかの日にするほうが、筋が通っていて簡単そうな気もしますけど…。</font>

<font size="2">　ところで話がちょっと飛びますが、先日、明治の末に出版された『毎日のお惣菜』という横長の料理本を手に入れましてね（表紙がとれちゃっているので200円）。執筆者は和洋料理教授会で、１年３６５日の献立を提案するという内容でした。料理名の羅列が中心で（毎日のおかずに頭を悩ませないように、今日の献立はこれにしなさい、というわけ）、安直な作りの本だなあと思って、ぱらぱら見ているうちに目が点に。</font>

<font size="2">　9月13日の献立に「豚肉に軽便カレー粉」という料理を提案したのを皮切りに、15日は「そばに軽便カレー粉」、17日は「きゃべつに軽便カレー粉」、19日は「牛肉と軽便カレー粉」と一日おきにカレー料理の波状攻撃。21日にまた「豚肉と軽便カレー粉」に戻ったと思ったらヒートアップして、キャベツ、まつたけ、牛肉、ネギとニンジンと、手を変え品を変え毎日カレー漬け。突然始まった軽便カレー粉の無限ループです。29日にいたってはただ「軽便カレー粉」とあるだけでして、そのままご飯にふりかけろとでもいうのでしょうか…。</font>

<img alt="mainichinoosouzai.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/mainichinoosouzai.jpg" width="402" height="252" />

<img alt="mainichinoosouzai_2.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/mainichinoosouzai_2.jpg" width="215" height="320" align="right" hspace="10"><font size="2">　この調子で年末までカレー三昧が続きまして、12月31日は「人参玉葱と軽便カレー粉」で締めくくるのでありました。これで年明け早々おせちの代わりにカレーが登場したら、一生恨まれそう…と思ったら、別のページでお年玉に軽便カレー粉を勧めておりました。いったい9月13日に何があったのでしょう。カレー粉の日か？</font>

<font size="2">　ちなみにこの本、レシピも少しは載っているのですが、手軽西洋料理法というコーナーに軽便カレー粉が登場します。牡蠣に水で溶いた小麦粉をつけてヘットで揚げる「牡蠣揚」に「軽便カレー粉を用ゆるも妙なり」。という但し書きがありました。あえてフライにしないでカレー風味のてんぷらにせよというところがこだわりっぽいですね。牛肉のひき肉に水に浸したパンを少し混ぜて、煮たキャベツで巻いて蒸し焼きにする「キャベツ巻」。これまた「軽便カレー粉を用ゆるも妙なり」。味付けがいまいちわかりませんが、ロールキャベツっぽい料理ですからカレー風味も合いそうです。ただ、卵の黄身３個に砂糖少しと煮た２合５勺の牛乳を加え、白身に砂糖を混ぜたものをのせて食べる（固まるのか？）という「煮カスタ」という料理にも、「軽便カレー粉を用意すべし」とありました。どこで使えという指示がないのですが、洋風二色玉子みたいなこの料理、なんだか甘そう。これこそ妙な味になりそうですけど、大丈夫でしょうか…。</font><br clear="right">

<img alt="mainichinoosouzai_1.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/mainichinoosouzai_1.jpg" width="287" height="223" align="left" hspace="10"><font size="2">　種を明かせばこの本の巻末に、杉本商店がどーんと広告を出しているんです。だからこんなにカレー粉ざんまい。発行は明治43年７月なので、商標登録を取る４カ月前です。100年前からメディアを使ってこんなに積極的に商品を売り込んでいたんですねえ。</font><br clear="left">

<font size="2">「●紳士曰く『僕は此の間友人の所で此のカレー粉を蕎麦に応用したのを喫つて見たが頗る美味かつた』●美人曰く『アラマアそんなに美味つて直に間に合ふものなら一瓶買つて見ませうか』●紳士曰く『一瓶と云はずに二三打（ダース）も買つて郷里の卿（おまえ）の御父様や親類の方々へ贈つておあげなさい　春夏秋冬何時でも用ひられる至極便利な食料品だ　而（そう）して価格も非常に低廉いから妙だ』」</font>

<font size="2">　うーん、すがすがしいほどストレートな宣伝っぷり。ただ、せっかくだから「そばに軽便カレー粉」のレシピも載せてほしかったなあ。まさかこの紳士が田舎の親類縁者に贈りまくったおかげで、作り方を説明する必要がないくらい、当時の人にとっておなじみの料理だった…ということではないですよね…？</font>

<font size="2">　なんていろいろ茶々を入れましたが、確かにカレーうどんはまだ革新できると思います。カレーのスパイスの種類やとろみのつけ方や濃度、うどんの太さや形状などなど、検討の余地ありでしょう。進化したカレーうどんが登場するのは諸手を挙げて大歓迎。ただ、100年目だとか適当な理由をこしらえてアドバルーンを派手に打ち上げただけでは、一過性に終わってしまいますよ。</font>

<font size="2">　いっそ来年は、横浜を抱える神奈川県がカレー県に改名して、香川県と一緒にキャンペーンをするっていうのはいかがでしょう。かながわとかがわって他人と思えないし。ついでに行政も提携して効率化を図り、隣の東京や大阪の向こうを張る。「カレーうどん連合から地方分権を！」というキャッチフレーズには、元大阪知事もたじたじかもしれませんよ。</font></font>


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   <title>料理本のソムリエ [ vol．３２]</title>
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   <published>2011-11-10T02:00:31Z</published>
   <updated>2011-11-10T03:08:37Z</updated>
   
   <summary>【 ｖｏｌ．３２】キャベツとソースはなぜデフォなの？ 　いやあ、前回は長かったで...</summary>
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         <category term="料理本のソムリエ" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/">
      <![CDATA[<font size="3"><font color=#FF3300>【 ｖｏｌ．３２】</font></font><br><font size="+2"><font color=#0066FF>キャベツとソースはなぜデフォなの？</font></font>

<font size="2">　いやあ、前回は長かったですねえ。お経みたいなレシピが続いてまあ退屈なこと。やれやれ、ようやくトンカツの話は終わりだと思ったでしょ？　ところがどっこい、終わったのは胃カメラの話だけで、トンカツ談義はまだ続きますよ。なにせ肉の話でおしまいになってたじゃないですか。これからいよいよ揚げる段階に入るわけですからね。くどくて、量が多くて、胸やけするって？　自覚はありますが揚げものが相手なだけに仕方ありませんなあ、と開き直りたいところですが、トンカツ屋さんに怒られちゃいますね。</font>

<font size="2">　これまでの洋食研究家の先生たちはどうもイタリア料理には暗いようでしたが、最近はだいぶ世間に知られるようになりました。洋食の歴史なんぞについてはネット上のマニアのＨＰのほうが詳しいくらいで、ウィンナーシュニッツェルやコトレッタ･アラ･ミラネーゼにも触れられています。ただ皆さん、残念ながら皿の上の料理でばかり考えるものですから、材料やら調理技術などの源泉をたどるまでには至っていないようですね。</font>

<img alt="nikutataki.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/nikutataki.jpg" width="132" height="102" align="right" hspace="5"><font size="2">　まず第一に日本のトンカツで独特なのはその厚さです。仔牛の骨つきロースで作るカツレツはいきおい骨１本ぶんの厚さになりますが、下ごしらえの工程として肉叩きでぺちんぺちん叩いて平たくします。火の通りが早くて繊維が縮みやすい仔牛肉は、叩いてほぐしてやるとよいそうです。とくにミラノ風の場合は、下粉の小麦粉は打たず、叩きながら衣をなじませるために大事な工程です。確かに明治時代の料理本のカツレツのレシピを見ていても、おおむね肉叩きがちゃんとでてきます（『西洋料理通』には書かれていませんが、まあ、あれはちょっと特殊なので）。しかし現代のトンカツのレシピでは筋切りせよとはあっても、肉叩きは必須とはなってないですね。肉を扱う歴史が浅い日本人はこの肉叩きの効用がわかっていないとは、実家が肉屋さんでもある吉川シェフの弁であります。</font><br clear="right">

<font size="2">　そういえばむかーし肉屋さんには中肉とか上肉っていう分類がありましたが、今では聞かなくなりましたよねえ。なんだか経済格差っぽい（笑）。肉を使う歴史の浅い日本では、バラやヒレはともかく、部位名で表現したところで普通の主婦にはなじみがなくて、使い分けられなかったからなのでしょう。</font>

<font size="2">　そもそも日本では、肉屋さんが切って売ってくれますけど、これって世界的にみたら異色じゃないですか？　塊のままのほうが絶対傷みにくいし、肉汁も逃げないのに。お刺身もそうですが、今ではトレイにきれいに並んでいるのが当たり前。これは肉を自分で触りたくないというお客さんの要望から生まれたサービスなんですかねえ。家庭用冷蔵庫の普及以前から行なわれていたのでしょうか。
　最近でこそスーパーでブロックの肉も売ってますが、生姜焼きやトンカツ、カレー用を除けば、薄切りのほうが普通というのも変な話。これは「片｣に切った肉を調理する機会の多い、中国料理の影響でしょうか？　単に肉といえば昔は鍋料理が当り前だったからでしょうか？それとも肉がまだご馳走だった時代、紙のように薄―く薄―く切って、たくさんあるように見せたかったからなのでしょうか？</font>

<font size="2">　自宅の隣家はかつては肉屋さんでして、けっして肉に縁遠かったわけではないのですが、ステーキなんて夢のまた夢という（ていうか、いまいちどんなものかぴんとこなかった）庶民にとっては、ぶ厚い肉にかぶりつく料理といえばトンカツだったような気がします。それでもおかずのメインはコロッケで（まれにメンチ）、トンカツは家族５人全体で２枚くらいしか買いませんでしたねえ。その代わり、ポテトフライはひとり２個か３個が割り当て。揚げたてをハトロン紙っぽい袋に入れて新聞紙でくるんでもらうのを待っている間に、お駄賃としてポテトフライを楊枝に刺したのを渡されるとうれしかったものです。
<img alt="Potet.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/Potet.jpg" width="150" height="134" align="right" hspace="5">ポテトフライを楊枝に刺せるかって？　棒状のフレンチポテトと勘違いしてませんか？　写真のような4つ切りにして衣をつけて揚げたものなんですけど、ご存じないかなあ。</font>

<font size="2">　こんなふうに肉屋さんが揚げものを売るというのは、ラードやヘットを有効活用しようという発想からなのでしょうが、これまたいつ頃からそうなったのでしょう？　コロッケと同列に語られる日本のトンカツは、もはや豚肉フライともいうべき別料理。厚くても芯まで火が通っていて、なおかつ柔らかさと肉汁を失わないようにするのはなかなか高度な技でして、フランス料理やイタリア料理のシェフでもトンカツの揚げ方に興味深々な人は多いようです。揚げる温度を低めから始めて時間をかけるのがコツなのでしょうか…。</font><br clear="right">

<img alt="derisouzai_80766.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/derisouzai_80766.jpg" width="206" height="138" align="left" hspace="5"><font size="2">　また肉の厚さのほかに、日本のトンカツの特徴には衣のかりかり感があるようにも思います（もちろん、薄い衣をめざしている蓬莱屋さんのような例もありますが）。中食市場の最新のトンカツ事情にも詳しい<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=08076600" target=_blank><font color=#0000FF>『デリそうざい２号』</font></a>によると、パン粉の衣がつんつん飛び出ていることを「剣が立つ」と表現するとか。確かに油でべしゃっとした感じがしなくておいしそう。日本独特の表現ですね。</font><br clear="left">

<font size="2">　これは推測なのですが、日本のパン粉は海外のパン粉とタイプが違うのは、用途がトンカツのせいではないでしょうか。粗いパン粉や生パン粉を使うことで油による長時間の高温加熱が可能となったのでは…。もっとも元になるパンの性質にもよりますし、コロッケはもう火が入っているからそんなに長時間加熱は必要ないし…。</font>

<img alt="itariakyohon_06110.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/itariakyohon_06110.jpg" width="102" height="146" align="left" hspace="5"><font size="2">　これは思いつきの仮説でして、小麦粉の専門家の意見をぜひ聞いてみたいと思ったら、<font color=#0000FF>『とんかつの誕生』</font>の岡田哲先生は日清製粉の出身でした。この本にはパン粉についても細かい説明がありまして、この点は出色です。ヨーロッパのパン粉は粟粒ほど細かい粒子で、揚げ油が汚れやすい（もっとも<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00611000" target=_blank><font color=#0000FF>『新版 イタリア料理教本』</font></a>によると、ミラノ風は生パン粉を使うようですが）。炒め焼きやバター焼き用だそうです。</font><br clear="left">
一方アメリカのパン粉はブレッダーと呼ばれ、ソーダークラッカー状のものを、細かく粉砕して作るのだそうで、フライドチキンやフィッシュスティック向けなんですね。それに対して、日本のパン粉は不揃いで大きく付着しやすいのだとか。岡田先生は衣がさくさくした歯ざわりで、適度な厚みになると指摘していますが、加熱時間の調整にも貢献していないのかなあ。</font>

<font size="2">　とまれトンカツの歴史について研究するには、パン粉の研究も欠かせません。あとは揚げ油に揚げ鍋、加熱機器や燃料の歴史もからんできますが（となると明治以降の天ぷらの歴史にも目配りする必要がありそうですね）、さらに付け加えればキャベツのせん切りも。コロッケやフライもそうですが、どうしてコールスローもどきのキャベツのせん切りが必ずついてくるのでしょう？　ドレッシングのかかっていない生キャベツのせん切りは日本独特の付け合せ。森まゆみ氏の<font color=#0000FF>『明治大正を食べ歩く』</font>によれば「煉瓦亭」の発明だそうで、日露戦争でスタッフが召集され、手が足りなくなったのがきっかけだとか。ちなみに料理本のソムリエっぽいコメントをはさみますと、この新書はシリーズものでして、<font color=#0000FF>『「懐かしの昭和」を食べ歩く』</font>がお勧めです。ご本人が食べた思い出のある店のルポは、ひと味違う臨場感がありますよね。</font>

<font size="2">　トンカツ屋のキッチンでアルバイトをしていたかつての上司の話によると、ウソかホントか、トンカツの利益率というのはキャベツで決まるのだそうです。豚もパン粉も卵も小麦粉も、そうは大きく価格変動しないのですが（最近の小麦粉は制度が変わったのでそうでもありませんが）、唯一キャベツは季節や気候に左右されやすいのがその理由。そんなに大変なら添えなきゃいいのにと思うのですが（どちらかといえば生で食べるよりも、煮たり炒めたりするのに向いている野菜ですよねえ）、お客さんが納得しないでしょうね。</font>

<font size="2">　西洋野菜の導入の歴史については、GHQ時代のような戦後の話はvol17の大木健二さんのような現場の人の声を聞きたいところですが、明治大正の事情については青葉高先生の<font color=#0000FF>『日本の野菜』</font>が頼りになります。野菜が登場する歴史文献を紹介しつつ、育種の立場からの説明が充実。文理両道の達人の読み応えのある本でして、昔は２冊組でしたが１冊にまとめられて使いやすくなりました（おお、前にどっかで聞いたことのあるようなセールストーク）。もっともそんな本書でも、キャベツの来歴については安政年間に栽培が始まり、横浜や函館でわずかに定着したこと、明治７年に勧業寮が山形など５県で試作させたこと、これとは別に北海道開拓使が栽培に成功した、とある程度。ところが明治26年の『蔬菜栽培法』では近年東京近在にて多く培養し、普通の蔬菜店にも販売するものあり、とあるそうです。20年も経たない間にいったい何があったのか。まだカツレツに添えるようになる前のはずなのに、いったい何に使われたのか。漬物ですかね？　やれやれ、素材も庶民的なものとなると、歴史をたどるのはなかなかしんどいです。</font>

<font size="2">　さらにキャベツといえばソースですよね。夏に書籍部のツイッターでソースをトンカツにかけるかキャベツにかけるかで、盛り上がってましたねー。煉瓦亭がキャベツを添えることを発明する前は、カツレツにソースはつきものだったのでしょうか？</font>

<img alt="twitter_sauce.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/twitter_sauce.jpg" width="470" height="298" />

<font size="2">　おっと、ソースといってもタルタルソースじゃないですよ。この仕事に就くまでソースっていうのはウスターソースのことと思っていました。ついでに上肉、中肉じゃあありませんが、中濃があるのだから少濃や特濃という呼び方もあるのかと思ってました（笑）。実際は通常のウスターソースととんかつソースの間の濃さなので、中濃なのだそうです。おまけに中濃はもともとは東日本ローカルな商品なのだとか。かつて東京の下町では中濃ソースもジョウゴで瓶に移して量り売りしておりましたが、どろり濃厚ソースが一般的な関西ではどうだったのでしょう？</font>

<font size="2">　それにしてもとんかつ専門というカテゴリーがあるとは、イギリス人もびっくり。生キャベツの表面はすべりやすくてソースがからみづらいので、とろみをつける方向へと発達したのでしょうか。リエするというよりは、もはやこれはタレづくりの発想ですよね。お好み焼きには刷毛でぬったりしますしね。</font>

<font size="2">　野菜や果物の甘みの溶け込んだこの焦げ茶色のソースは日本独特なものだそうです。気になって東京都ソース工業協同組合の業界史『道程』を閲覧したところ、原料に果物を使うようになったのは戦後の食料難の時代からで、果物は統制外だったからだとか。濃厚タイプのソースの普及も昭和30年代以降だそうで、意外と新しいのにびっくり。日本におけるウスターソースの導入と変遷、メーカーの興亡と普及の過程、地方差についてはさらに掘り下げる必要がありそうですね。これがはっきりしなくては、たこ焼きの誕生もお好み焼きの誕生もソース焼きそばの誕生もソースせんべいの誕生もわかりませんからね。</font>

<font size="2">　ほらこの通り、トンカツを糸口に知りたいことはいくらでも出てきます。トンカツという「洋食」はどこもかしこも日本化されてまして、その受容と変化を通して、日本の食文化の特徴が垣間見えてきます。本の１章をあてたくらいじゃ、ブログを３回に分けたくらいじゃ、こりゃとても足りそうにありませんよ。</font></font>

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   <title>『簡素なお菓子』　Part6</title>
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   <published>2011-11-02T01:01:55Z</published>
   <updated>2011-11-02T01:10:24Z</updated>
   
   <summary>『簡素なお菓子』 著者：河田勝彦 発行年月：2011年5月14日 判型：B5変　...</summary>
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         <category term="製菓" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
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      <![CDATA[<img alt="06112.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06112.jpg" width="72" height="98" align="left" hspace="10"><a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00611200" target=_blank><font color=#FF6633>『簡素なお菓子』</font></a>
著者：河田勝彦
発行年月：2011年5月14日
判型：B5変　頁数：96頁
定価：1,995円（税込）<br clear="left">


<font color=#996600><font size="4"><b>何がおいしさなのか？</b></font></font>

最近はきれいなデコレーションのケーキが
たくさん店頭に並ぶようになりました。
でも、心を揺さぶられるようなおいしさのお菓子は
影をひそめたように感じます。

よくわかりませんが、
「見た目」や「バリエーション」「流行り」に目を奪われて、
生地そのもののおいしさを追求するということが
少なくなったのじゃないのかな、とふと思う今日この頃です。

生地やクリームがおいしくなくて、
おいしいものがつくれるのかなぁ？

そんな疑問がふつふつと湧き起こり、
デコレーションがある複雑な構造のお菓子ではなくて、
ごまかしのきかないシンプルなお菓子で、
<font color=#FF6699>生地そのもの、クリームそのもの、
あるいはその食感や香りに心打たれるようなお菓子</font> が
つくれないかと河田さんに相談してできたのが、
この本なのです。

つくって食べて感じる。
簡素なお菓子ならばくり返し試せます。
そのくり返しの中で、何かを発見していただければと思います。

それから、素人の方にも簡単につくれて楽しい。
それもめざしたところです。

同書をつくるにあたり、河田さんは頭を悩ませていたと
あとでお店の人に聞きました。
かなりたいへんだったようです。
シンプルこそむずかしい、からです。

「簡単にできるシンプルなもので、でもおいしくつくってください」
と要望していたのです。
河田さんはそこに向かってまじめに取り組んでくださったのです。

でき上がったレシピは混ぜ方の細かい指示はほとんどないものでした。
混ざればいい。
泡をつぶさないように切るように混ぜる、
とか微妙な混ぜ方はほとんどありません。

撮影のたびに聞くといつも、「混ざればいいよ」と河田さん。
それでもできあがって試食してみると……、

「わぁ、おいしい！」と声が出るほど。

どれも<font size="3"><font color=#FF0099> 心底おいしくて豊かな気持ちになる </font></font>おいしさでした。

レシピ自体がおいしさをめざしているのです。

つくるのを楽しむだけではなく、どうぞ味わうことも楽しんでください。

食べてみて、にんまり微笑んでしまうようなレシピが同書にはあります。


<img alt="kanso_vol.6.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/kanso_vol.6.jpg" width="469" height="102" />]]>
      
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   <title>料理本のソムリエ [ vol．３１]</title>
   <link rel="alternate" type="text/html" href="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/2011/10/26_1053.html" />
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   <published>2011-10-26T01:53:46Z</published>
   <updated>2011-11-08T08:06:51Z</updated>
   
   <summary>【 ｖｏｌ．３１】「西洋料理通」を読む 　実は私、先月末ついに取締役に別室へ呼び...</summary>
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         <category term="料理本のソムリエ" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
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      <![CDATA[<font size="3"><font color=#FF3300>【 ｖｏｌ．３１】</font></font><br><font size="+2"><font color=#0066FF>「西洋料理通」を読む</font></font>

<font size="2">　実は私、先月末ついに取締役に別室へ呼びだされてしまいました。書類を片手に深刻な面持ちです。リストラ？　リストラなのか？　変なブログが原因か？</font>

<font size="2">　ところが開口一番「産業医の先生から、内視鏡検査を受けたほうがいいという連絡があった」。えええええっ！　またなの？　また飲めと？　…と思ったら、検査済みという連絡が先方に通っていなかったようでして。だいいち検査結果の正式な通知はもうもらっているんですけどね、軽い胃炎だったせいだか知りませんが「１年間経過観察のうえ再検査」なんですよ。また来年にはアレが控えているかと思うとストレスで胃に穴が開きそうなんですけど…。</font>

<font size="2">　ということで胃カメラの話は思い出すだけでも胃に悪そうなので、これでもうおしまい。トンカツの話の続きです。</font>

<font size="2">　 そもそもトンカツの前身である「カツレツ」のルーツをたどるのが大変でありまして、小菅和子氏が日本で最初のカツレツレシピとして紹介している文献からして大問題。『西洋料理通』の「ホールクコツトレツ」がソレなんですが、原文を見てびっくり。</font>

<img alt="gorinto.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/gorinto.jpg" width="260" height="213" />

<font size="2">　まずこの本についてですが、猫々道人こと仮名垣魯文先生の訳であります。教科書にだって出てくる明治の戯作者で、猫グッズマニアという意外な一面もある御仁。出版は明治５（1872）年で、全部で百十等（「等」は、今でいう「節」や「項」ですね）の料理メモが紹介されています。訳とはいっても、横浜に居留していた某イギリス人が使用人にむけて書いた指示とその訳が原書でして、それを校訂したものとか。原書はカタカナ書きだったところをひらがなに改めたが、外来語はカタカナを残したと凡例にあります。かながき先生なだけにカナの扱いにはうるさいですな。</font>

<font size="2">　もっともこうした注意書きが必要なのは、今のような日本語かな表記のルールが確立する前だからでありまして、この本はまだ江戸の出版物の雰囲気を色濃く残しています。木版刷りで、ひらがなは現行のものではなく変体がな（蕎麦屋の看板に書かれているやつです。上の魯文の石碑もそうですね）も混じっていて、促音や拗音の表示はないし（早い話が今なら小さい“っ”や“ゅ”で書くところが小さくなってない）、句読点で区切られてない。現代人には難物です。おまけにカタカナの音写は発音に忠実なような不慣れなようなビミョーな感じでして、本来ついているべきところに半濁点や濁点がなかったりで、ちょっと見なんのことかよくわかりません。たとえばパセリはハリセリイだったりハルセリーだったりペルセリーだったりパンセリーだったり…。いっそ英語のままにしてほしかった。西洋料理の知識があればどうにかこうにか解読できるレベルでして、こんなの当時の人の何の役に立ったのか、とも思いますが、外国の料理の紹介というだけで売れたんですねえ。うらやましいねえ。</font>

<font size="2">　そこで句読点を補って活字化したものが<font color=#0000FF>『明治文化全集』</font>風俗編に収められているのですが、昭和の初めの仕事なので漢字は旧字のままですし、ルビの振り方の不統一や誤植など結構ケアレスミスが見つかります。誰だい、校訂したのはと思ったら、若き日の高橋邦太郎氏でした…。料理通として有名なフランス語の翻訳家で、小社からも<font color=#0000FF>『パリのカフェテラスから』</font>を出版されています。英語なので手を抜いたのか？　もっとも編集者の校正ミスの可能性も…（くわばらくわばら）。ここではそこも修正しつつ紹介しましょう。ブログではルビがふれないので、随時カッコで補います。</font>

<img alt="seiyosyoritsu61.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/seiyosyoritsu61.jpg" width="474" height="236" />

<font size="2">　pork cutletのことらしき「ホールクコツトレツ」は、第六十一等にのっておりまして、文章は材料の列挙と「右製方（しかた）」の二つで構成されています。材料は「豚の腋（あばら）部の肉冷残（にあまり）の物／ボートル一斤の十六分目／葱二本／小麦粉ジトルトスプウン匙に一杯／三十八等の汁五合五勺／塩胡椒加減／酸（す）食匙に一杯／芥子を少々かき酸と交らす」。作り方は「豚の腋部の肉五分斬、脂肉（あぶらみ）を去り、葱を刻み、ボートルを鍋中に投下（いれ）て、豚の五分切及び刻み葱を投混（いれまぜ）て、薄鳶色に変ずるを目度とす。揚たる後に外の品々を投下（いれ）て、十ミニュートの間、緩々（ゆるゆる）煮べし」</font>

<font size="2">　ね、お経みたいで頭が痛くなるでしょ。ボートルはバターのことで、１斤を600ｇとするなら16分の１は37．5ｇ、ジトルトスプウン匙はほかのところではシトルトスプウンとして出てくるのですが、なんのことやら。柑橘用のシトラススプーン（sitrus spoon）のことでしょうか、あるいはバースプーンを当時はスティアドスプーン（stirred-spoon）とでも呼んだのでしょうか…。ネギはポロネギではなく、恐らくタマネギの代用品ですね。別のレシピではクローヴを刺したり、オニオンスープのところでもネギを使ったりしていますので。冷残の肉というのはいったん煮て冷ましたもののようです（保存のためでしょうか…）。まあ早い話、豚肉をタマネギとともに多めのバターでソテーして、引き揚げた後、焼き汁を煮溶かしてソースに仕上げる料理のように読めます。</font>

<font size="2">　なお約１リットルも加える「三十八等の汁」ですが、原文にあたりますと「クレビーフヲル。ロースト。ミート」でした。変換ミスじゃないですよ。なんでこんなところに句点が入っちゃったのか…。これは恐らくgravy for roast meatでしょう。「やきたる肉に用いる露物」と説明されていますし（グレービーをつゆ物って…）。材料は以下の通りです。「第二等の白汁種（しろにだし）を二合／ハルセリー二撮（つま）み細（こまか）に刻み／ボートル胡桃の実の大きさ／肉豆蒄（にくづく）の末（こな）／丹胡椒いづれも加減」。そんでもって製法は「パンセリー並にボートルを第二等の黒汁の中に投入（いれ）、緩火にて煮る事半時、雲母（きら）を去り善く陶（こ）す。丹胡椒、肉豆蒄を加減の上散投（ちらしこむ）べし」。</font>

<font size="2">　丹胡椒には「あかこしょう」とルビがふってあったので、てっきりレッドパッパーかな、と思ったのですが、当時の辞書をみたらカイエンヌペッパーの日本語訳のようです。雲母というのは表面に張った脂やあくの膜のことですかねえ。このレシピの中に今度は「第二等の汁」が出てきますが、いったい白いんだか黒いんだか…。その材料と作り方の詳細はえらくスペースを割くのでもうやめておきましょう。これまたわかりづらいレシピなのですが、牛スネほか鳥獣類の肉でとったブイヨンらしきもの。もっともバターと香辛料がたっぷり入っています。煮出す水の量は少なくて煮込み時間が意外と短めでした。燃料代が高かったからですかねえ。</font>

<font size="2">　率直に言って、これって名前がコットレツというだけでまったく違う料理ですよねえ。衣すらついていないし。事実、小菅先生は「いまでいうポークソテー」と説明しています。だったら初めから無視しなさいな。ソテーといっておきながら、原文の変体がなをことごとく読み間違えて「…薄鳶色に変たるを目度とし揚げ、さる後に…」と紹介しておりまして、揚げ物料理っぽい印象を与えております。おかげでトンカツの来歴を扱う本はことごとくふり回されっぱなし。<font color=#0000FF>『とんかつの誕生』</font>に至ってはどうしちゃったんだか終始「ホールコットレッツ」と紹介しているし…。fowl cutletでは鳥カツになっちゃいますよ？</font>

<img alt="seiyosyoritsu52.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/seiyosyoritsu52.jpg" width="237" height="244" align="left" hspace="5"><font size="2">　この他人の空似の第六十一等よりもですね、私は第五十二等の「コツトンツ、コールドモツトン」が気になってしかたない。お経だからって、面倒臭がらずにレシピを読まなきゃだめですよ？　隣の第五十三等のほうはカレーのレシピとかで、大変有名なのに…。
　材料は「綿羊の冷残肉を斬り／卵一個／パンの散肉（ちらし）及び三十七等の鳶色の肉汁（にだし）／丹茄子（あかなす）少々」。作り方は「綿羊の肉を厚く五分程に切、卵と共に攪転（かきまわ）し、中へ浸し忽（たちま）ち引揚、パンの散肉を投下て、その後、火にて炙りし時に滴りし獣の膏（あぶら）を鍋に投（いれ）、厚き斬肉を其中に入れて焙烙（いり）、<font size="1">但し鳶色になるを期とす。</font>丹茄子肉汁の中に煮熟汁（にえじる）を灌（そそ）ぐべし」。</font><br clear="left">

<font size="2">　ね？　こちらはちゃんと卵もパン粉もつけてまして、動物の油脂で加熱しています。焙烙は煎り焼きのニュアンスではありますが、ミラノ風カツレツを作るときの加熱法はこんな感じ。こちらこそが日本に初めてお目見えしたカツレツレシピではないでしょうか。コツトンツはコツトレツの誤植じゃないですか？　それが証拠に、この料理のモツトン（mutton）の「ン」の字は逆に「レ」によく似ていて取り違えやすそう…。なお材料の中の三十七等の煮汁はブラウン・グレービーのことでして、このレシピではいまいち使い方がわかりませんが、トマトを煮て加えるようです。</font>

<font size="2">　日本の「カツレツ」は英語圏から来た言葉のカットレットに由来するようですが、もとはフランス語のコートレット、つまり骨つきロース肉から来ています。西洋料理通に出てくる「コツトレツ」は元々の骨つきロース肉のほうの意味なんですね。その証拠にほら、「ホールクコツトレツ」も「コツトンツ、コールドモツトン」も料理名の脇に小さく「豚のきり肉の義」「綿羊の冷肉を斬の義」と説明されておりますでしょう？　本来はただ部位を表すだけの言葉なのに、典型的な調理法がパン粉揚げだったものですから、英語ではそれとイコールにとらえられるようになったというわけです。</font>

<img alt="itariakyohon_06110.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/itariakyohon_06110.jpg" width="102" height="146" align="left" hspace="5"><img alt="itariakyohon_06110_1.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/itariakyohon_06110_1.jpg" width="102" height="144" align="left" hspace="5"><font size="2">　さらに意味が広がって、骨つきロースでなくとも小判状にしてパン粉をつけて揚げた肉料理は英語では何でもカットレット、イタリア語ではコトレッタと呼ばれるようになりました。吉川敏明シェフの<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00611000" target=_blank><font color=#0000FF>『新版イタリア料理教本』</font></a>には、豚肉以外にもポレンタやモルタデッラに衣をつけて揚げるコトレッタが出てきます（二冊組だったのが、新版では一冊にまとまって引きやすくなりましたよー、とＰＲ）。とくに骨つきロース肉であることを示す場合は、コストレッタとするのだとか（元はラテン語で、フランスでも古語はcosteletteなのです）。</font><br clear="left">

<font size="2">　またミラノ風カツレツの項の説明によると、ミラノのコトレッタとウィーンのウィンナーシュニッツェルはどちらがオリジナルなのか本家争いをしているそうです。なるほど<font color=#0000FF>『月刊専門料理』</font>1999年７月号「イタリア情報」にその一端が載っておりました。18世紀初めからイタリア建国までの間、ミラノがオーストリア帝国の統治下にある間にウィーンからミラノへ伝わったというのがオーストリア側の主張。それに対してイタリア側は、ウィンナーシュニッツェルに使うのは仔牛のモモ肉で、パン粉をつけてから卵に浸し、ラードで揚げるなど、ミラノ風カツレツとの違いを強調。また1134年のメニューに出てくる「lombolos cum panitio」はパン粉をまぶした肩ロースという意味であること、オーストリアのラデツキー元帥が副官アテムス伯爵にあてた手紙でコストレッタについて説明しているということから、当時ウィーンにはカツレツがなかったというのがその主張です。いやはや、アジアの端っこでカツレツの起源を調べるのは想像以上に大変です。</font>

<font size="2">　ここで注目してほしいのは、イタリアでもオーストリアでも仔牛肉から作る料理であることです。フランス語ではレットは小さいという意味で、同じ骨つきロースでも牛だの豚だのの部位を示す場合はただのコートです。カツレツは、それよりはちょっと小さいサイズの肉が取れる家畜、つまり、仔牛や仔羊から作るのが本来の姿でしょう（もっともイタリア語では牛のロースはコスタータでも、豚のロースはコストレッタの組に入るようですが）。</font>

<font size="2">　ところが『西洋料理通』にはもうひとつ、第三十等に「サルモン。コツトレツ」が出てまいりまして、こちらは鮭をバターを塗った紙で包んで焙り焼いております。英語では鮭の切り身もまたcutletと呼ばれるようでして、早い話それっぽい形の切り身なら何でもありなんですねえ。おおざっぱといえば、おおざっぱ。ならば何の肉を使ってもパン粉揚げならカットレットとする心情もわかります。日本では仔牛肉にはなじみがありませんから、より手軽な白身肉ということで、鶏や豚から作るようになったのでしょう。最初はチキンのカツレツだのポークのカツレツだのといちいち断っていたのが、はしょって豚（とん）＋カツになっちゃった。一方関西のビフカツは、仔牛の代わりに成牛に走ったというわけですね。</font>

<font size="2">　豚と牛、どっちも仔牛の代用なことには変わらないのですが、ビフカツのほうが本式という文章も見かけます。やれやれ…。白身の仔牛肉（ヴィール）と赤身の牛肉（ビーフ）ではまったく別の素材でありまして、シンコをコハダ、いやコノシロと一緒にするくらいに無神経。そういえば23日、政府がＢＳＥ問題で2001年以降禁止していたフランスからの牛肉輸入の再開を検討し始めたというニュースが入りました。業界が嘱望しているのはフランス産仔牛肉なんだから、アメリカ並みに生後20カ月以下に限ってとっとと再開すればよかったのに、今頃何を言ってんだかなあ、という感じでありますな。</font></font>

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   <title>料理本のソムリエ [ vol．３０]</title>
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   <published>2011-10-13T02:41:11Z</published>
   <updated>2011-10-13T08:23:34Z</updated>
   
   <summary>【 ｖｏｌ．３０】内視鏡検査の〆はトンカツで 　先頃私、ついに定期健康診断でひっ...</summary>
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      <![CDATA[<font size="3"><font color=#FF3300>【 ｖｏｌ．３０】</font></font><br><font size="+2"><font color=#0066FF>内視鏡検査の〆はトンカツで</font></font>

<font size="2">　先頃私、ついに定期健康診断でひっかかって、胃カメラで再検査されるはめになりました。噂には聞いていましたが、なかなかつらいもんですねえ。太さは覚悟していましたが、管が思っていたよりも柔らかくない。「のどをもっと開いて飲みましょうかー」なんて気軽に言ってきますが、一本うどんをつるつるってえならともかく、こちらで自主的に飲んでるわけじゃないんだから。「こりゃ飲むじゃなくって、突っ込むいうんじゃあボケえ」と心の中で叫んでも、口は開いているのに言葉がでない。向こうも突っ込めなきゃこちらも突っ込めない。ボケ不在の漫才です。</font>

<font size="2">　そもそもなぜ当人の目の前にモニターを据えて、どこまでカメラが入ったか胃の中を刻々と見せるのですか。拷問？　拷問なのか？　フォワグラや北京ダックとなるために飼育されているアヒルになった気分です（もっともアヒルは痛覚が鈍くて、強制的に餌を食べさせられても苦しくはないそうですが）。「太らせなくったって食卓に上げるくせに、どうして動物虐待とか言うんだろう？　幸せ一杯健康的に育てられ、安心しきったアヒルの信頼を最後の最後で裏切るのとではどちらが罪深いのかしら？」とか「トマトが甘くなるようにぎりぎりまで水を与えないでいると、バケツと柄杓を携えた植物保護団体の運動家に妨害されるのだろうか？」とか哲学的命題を思索して気をまぎらわせましたよ……というのは嘘です。そんな余裕はありません。人間追い詰められると、目の前のことしか頭にありませんからね。とはいえ目の前にあるのはミョーにリアルなＲ‐15指定映像。苦しさとやるせなさから涙で視界がぼけてきました…。あ、そうか、目をつぶればいいんだ。</font>

<img alt="foiegras.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/foiegras.jpg" width="350" height="167" />

<font size="2">　こうしてさんざ苦労した挙句の果てが「軽い胃炎みたいですねー」だってさ。定期健康診断の前日は夜８時までに食事を済ませなくてはいけないとかで、あわてて近くのラーメン屋に飛び込んで担担麺を食べたんですが、そのせいでは…？　以前、丸呑みさえすれば調べたいところまで勝手に泳いでいって写してくれる、カプセル状ヒレつき胃カメラが開発されたという報道がありました。なんと一億総人間ポンプ計画！　ぜひとも実現してほしいものです。

<font size="2">　さて、検査の後は「がんばった自分へのご褒美」（笑）と思って、いそいそとトンカツを食べに行きました。上野近辺はトンカツ屋さんの名店が多くて有名ですが、まあまあ結構なお値段ですし、さすがにこの年齢になると昼にトンカツはちょっと重たくて…。その点、今日は特別だぞ。なにせ今回も夜８時以降何も食べるなっていわれてたからね。</font>

<font size="2"><a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00605500" target=_blank><img alt="06055.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06055.jpg" width="130" height="183" align="left" hspace="5"></a>　向かうは「本家ぽん多」。いかにも重そうな木製の立派なドアに臆して入れずにきた名店です。なるほどここのトンカツときたら、あんなに肉は厚いのに衣は色白で、さっくり軽くて油ぎれがよい。揚げ終わったらすぐに油を大きなボウルに移していたのをみて、どんなものを使っているのか会社に戻って<a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00605500" target=_blank><font color=#0000FF>『日本の洋食』</font></a>を調べてみたら、自家製のラードだそうです。むむむ、動物性油だからといって重たいとは限らないのですね。勉強になりました。<br clear="left">
　余勢を駆って日を改めて今度は「蓬莱屋」へ。こちらは純和風の建物とヒレ肉が売り物で、衣はごく薄くて濃い狐色と、何から何まで対照的。厚い肉の芯まで火が通るように、揚げてからすぐに切り分けずに、しばらく休ませていたのになるほどと思いましたね。</font>

<font size="2">　ところで上野はいつからトンカツの町になったのでしょう。昭和の初めにはすでにトンカツといえば上野のようでしたが、いつ、ここまで普及したのでしょう。</font>

<font size="2"><img alt="kawakin.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/kawakin.jpg" width="132" height="262"" align="right" hspace="5">　トンカツの歴史については、そのものずばり<font color=#0000FF>『とんかつの誕生』</font>という本がありますが、残念ながらトンカツについては巻末間近の第５章で取り上げられるのみです。著者の岡田哲先生はトンカツにはさほど思い入れはなくて、サブタイトルの『明治洋食事始め』が執筆テーマだったのに、編集者が売れそうなタイトルにしちゃったのでしょう。その証拠に本書ではトンカツの誕生に関する論考は富田仁氏の<font color=#0000FF>『舶来事物起源事典』</font>にゲタを預けております。明治28年に銀座の「煉瓦亭」が豚肉のカツレツを始め、大正10年には早稲田高等学院の学生がかつ丼を発明、そして御徒町の「ポンチ軒」島田信二郎が改良し、厚い豚肉を使って箸で食べやすく切り分けたトンカツを昭和４年に発明したというのがざっとのあらましです。さらに大正７年には浅草の「河金」がカツカレーを始めたというところが『舶来事物…』にはない新知見ですね。<br clear="right"></font>

<font size="2">　これによると豚のカツレツがトンカツと呼ばれるようになるまで30年以上かかった計算になります。おまけにカツカレーとかつ丼はトンカツのお兄さんのようですが、どちらも切り分けずにでーんと丸のまんまカレーや丼飯に添えていたんですかねえ。かつ丼はスプーンで食べていたのかな？</font>

<font size="2">　『舶来事物起原事典』は小菅洋子氏の<font color=#0000FF>『にっぽん洋食物語』</font>を参考にしており、トンカツの起源の項目はこの本が典拠であることがわかります。そんでもって『にっぽん洋食物語』はというと1970年刊の<font color=#0000FF>『事物起源辞典』</font>（まぎらわしいですね）を参考にしており、ここにはかつ丼とポンチ軒の話はでてくるのですが、煉瓦亭は登場しておりません。たどっていくと、新しい著者が次々と新知見を付け加えることによって、話が深まるどころかこんがらがっていく過程が見えてきます。うーん、Wikiみたいだ。</font>

<font size="2">　また岡田先生は、明治大正の料理文献で紹介されているカツレツのレシピを一覧表にまとめて、初出は明治28年の『女鑑』と紹介しています（これは明治24年から42年まで出版された婦人雑誌なのですが、引用中にも参考文献リストにも何月号なのか書かれていません。雑誌記事だってわかってんのかなあ）。うーん、これっぽっちの量で変化を追うのはちょっと危険ですね。なぜなら洋食の場合は翻訳も多いので、現実にその時代の日本のお店や家庭で行なわれている調理法を反映しているとは限らない。また単行本は過去に発表した記事をまとめて出版したりしますし、当時の人たちは（今の人も？）、ちゃっかりよその本のレシピを写したりもいたします。そのため昔の作り方の本と新しい今風の作り方の本が同時期に出版される可能性もありますので、かなりのサンプルを見つけて世の中の流れの変化をつかまねばなりません。</font>

<font size="2">　表を見ていると新聞、雑誌から採った情報の絶対量が足りません。本に載っているレシピや料理店なんてのは九牛の一毛、大海の一滴ですからねえ…。ところが岡田先生の本に限りませんが、明治大正の料理の由来を扱った本でみずから雑誌や新聞まであたって丹念に調べた例に出会った試しがありません。例外は、前坊洋氏の労作<font color=#0000FF>『明治西洋料理起源』</font>くらいでしょうか……（ちなみにこの本によると明治23年5月4日の新聞『時事新報』に「ポークカトレツト」が登場するそうです）。『にっぽん洋食物語』でこの分野の先鞭をつけた小菅氏は、<font color=#0000FF>『近代日本食文化年表』</font>では新聞記事などからの引用も挙げていますが、これは森銑三<font color=#0000FF>『明治東京逸聞史』</font>からの孫引きなどでして、ご自身で調べた形跡がどうもうかがえません。</font>

<font size="2">　まあ古い雑誌や新聞は所蔵先が少なくて調べるのは大変ですが、料理本にしたって公的な図書館の所蔵状況はけっして良いとはいえないんですよ。たかが料理の作り方の載った本なんか大学図書館では相手にしませんし、公立図書館でも実用書を大事に後世までとっておこうという心理が働きづらいのでしょう。おかげで稀観書の数たるやおびただしいこと…。料理本を調べるなら調べるで、相当な覚悟と手間が必要なんですぞ。</font>

<font size="2">　そんなわけでして、洋食の始まりに関する本はおおむね手放しで信じることはできません。自分の足で調べずに安易に過去の著作を孫引き、おっと違った「参考」にするものだから、いつまで経っても同じところで足踏みしていて謎が解明される気配がありません。</font>

<font size="2">　一例を挙げましょう。岡田氏の本は「明治洋食事始め」をうたっておきながら明治後半から大正にかけて流行した屋台の洋食の実態についてはほとんど考察しておりません。御維新の頃には珍しくて高級だった洋食も、あっという間に庶民のところまで降りてきまして、露天の屋台商が現れ、普及に一役買いました。当時の素人向け開業案内書に、うどん屋やおでん屋などと一緒に洋食の屋台も候補に挙げられておりまして、フライやシチューのような煮込みものを出していたことがわかります。衛生的にそのほうが安心だったからでしょうね。にぎわう浅草や上野は、そうした屋台の多い土地でした。</font>

<font size="2">　カツレツの歴史もこの屋台という業態抜きには語れません。岡田氏自身も例のカツカレーは、大正７年に「東京浅草で、屋台洋食を始めた河野金太郎が始めた」とさらっと紹介しておりますが、それがなんだかわかってない。あともう少し掘り下げてほしかったなあ。たぶん人気料理だから両方ともメニューにおいたものの、什器の数も洗い物の回数も省力したい屋台営業ですから、えいやっと一皿に合体させちゃったんじゃないですかねえ。</font>

<font size="2"><img alt="%EF%BD%88ouraiya.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/%EF%BD%88ouraiya.jpg" width="130" height="185" align="left" hspace="5">　実はあの「蓬莱屋」も屋台からスタートしています。昭和６年10月１日号の『実業之日本』によると、それは大正６年４月４日のことで、創業者の山岡正輝さんは当時42歳。愛媛県の造り酒屋だった山岡さんは家産が傾き、はるばる東京に出て小資本で始められる屋台の洋食屋に賭けたとあります。カツの揚げ方はまったくわからず、隣の天ぷらの屋台の主人に教わったとか。安くてうまいのをめざしたのはもちろんですが、繁盛したのはお客さんが山岡さんの気性にひきつけられたから。ぼろを着た労働者でも平等に扱い、その一方でごねて迷惑をかける酔客は許さない。この年齢だからこそできる客あしらいですね。10年で店を持つという夢には少し遅れましたが、昭和３年９月28日に同じ上野広小路の地で立派な店舗を持つことができたとのこと。記事をなんでもかんでも鵜呑みにするのは危険ですが、店舗開業から３年後に主人に直接取材した内容ですから、戦後の食べ歩きマニアの噂話なぞよりははるかに信頼性が高いでしょう。ご丁寧に日付まで入っていますしね。<br clear="left"></font>

<font size="2">　蓬莱屋のＨＰを見ますと二度揚げとヒレを使ったカツはここが始まりとありますが、残念なことにこの記事ではそこまで触れておりませんでした。ただ、経営誌なので料理の作り方に関心がなかったかもしれませんし、昭和６年以降の可能性も否定できません。ほかの戦前の文献を見ていると確かに蓬莱屋は昔からヒレカツを売り物にしていたようです。</font>

<font size="2">　正直な話、トンカツがらみの発明者はいろいろ候補が挙がっていまして、理路整然と説明するのは困難です。まず日本に伝わったカツレツがあり、それが普及し、進化を遂げた。その過程に関わっていろいろ工夫を加えた人たちがみな発明者として名乗りを上げているために、話が混乱していると思われます。誰が最初かどうかなんてのは、当人の思い込みもあるでしょうし、よそにも同じことを考えついた人がいてもおかしくないでしょうしね。</font>

<font size="2">　庶民的な料理ほど記録に残りづらく、起源を調べるのは実に難しい。それなのにテレビだの食べ歩き雑誌だのは、発明秘話を取り上げたがります。唐辛子の伝来じゃありませんが、「だいたい○○年くらい」でもいいと思うのですが、それでは企画にならないようです。
　そもそもトンカツの起源と発達史を語るには、オリジナルの「カツレツ」についても視野に入れて考察せにゃなりませんが、もはやスペースがありませんね。ちょっと胃カメラの話で熱くなりすぎました。続きは次回に。</font></font>

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   <title>『簡素なお菓子』　Part 5</title>
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   <id>tag:www.shibatashoten.co.jp,2011:/dayori//13.1389</id>
   
   <published>2011-10-06T04:32:17Z</published>
   <updated>2011-10-06T04:37:42Z</updated>
   
   <summary>『簡素なお菓子』 著者：河田勝彦 発行年月：2011年5月14日 判型：B5変　...</summary>
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         <category term="製菓" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
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      <![CDATA[<img alt="06112.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/06112.jpg" width="72" height="98" align="left" hspace="10"><a href="http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=00611200" target=_blank><font color=#FF6633>『簡素なお菓子』</font></a>
著者：河田勝彦
発行年月：2011年5月14日
判型：B5変　頁数：96頁
定価：1,995円（税込）<br clear="left">


<font color=#996600><font size="4"><b>2種類のカスタードクリーム
</b></font></font>

<font color=#CC0099><font size="4">フラン</font></font> はフランスの家庭菓子です。
タルト生地の中にカスタードクリームを入れて焼く、シンプルなお菓子。

河田さんはこれまでの取材では、カスタードクリームを炊くときには
「粉にしっかり火が通る意識で炊け」といってこられました。
ふつふつといってきたらもうひと息炊くのが基本でした。
ところがフランでは、ふつふついってきたらすぐに火をとめたのです。

？？？
なんでだろう？

追加取材のときに聞いてみました。

「うー、あれはとろんとさせたいんです。
ふつうのパティシエール（カスタードクリーム）みたいに火を入れると、
冷めたときにくっとしまってきて食感が悪くなります。
あー、また粉は小麦粉だと火を入れ切らないと粉っぽさが残ってしまうので、
コンスターチにしたわけです」

なるほど。。。

「とろんとさせたい」ということから加熱時間も素材もチェンジ！
しかもなるべく早く食べてほしいとのこと。「とろん」が命なので。
シンプルなものでも、イメージがきちんとあるのです。
それに沿って基本のクリームをマイナーチェンジしたわけです。

パティシエのみなさん、そういう発想があるでしょうか。
何年か前にあるお店でフランをいただきました。午前中です。
ホールで冷蔵庫から出したものをその場でカットして供されたそのフランは、
ギュッと締まって固かったのです。正直、あまりおいしいとはいえませんでした。
とかく配合主義、「これはこうつくる」と決まっているのがお菓子の世界です。
でも、おいしく食べさせたいと思う意識が味を変えます。
つくり方を少しだけ変えます。

簡素なお菓子だからこそ、そのことがよくわかります。
「ムラング・コック」と「ムラング・シャンティイ」というメニューがあります。
同じメレンゲでも方向性の違う配合、つくり方のものを河田さんはあえて選んでいます。
違うものを2つ並べて見せる理由があります。
それはどうぞ本でご覧ください。

<img alt="kanso_vol.5_1.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/kanso_vol.5_1.jpg" width="200" height="100" align="left" hspace="5"><font color=#FF6600>（左）ムラング・コック</font>
エスプレッソと合いそうな苦甘いメレンゲ

<font color=#FF6600>（右）ムラング・シャンティ</font>
香ばしいサクサクの生地においしい生クリーム<br clear="left">


同書には、基本的なおいしさに関するそうしたヒントが隠れているのです。
あなたはいくつ読みとれるでしょうか？
探してみてください。
レシピだけから読みとれたら、素晴らしいかもしれません。

<img alt="kanso_vol.5.jpg" src="http://www.shibatashoten.co.jp/dayori/kanso_vol.5.jpg" width="130" height="169" align="left" hspace="5">それでも変えてはいけないこともあるようです。
今回は<font color=#CC0099>「フラン・ナチュール」</font>を紹介しています。

バニラもなにも入れないから
「ナチュール（味を加えない）」です。

でも、卵の味が素朴すぎて、
つい「バニラとか入れちゃだめなんですか？」
と聞いてしまいました。<br clear="left">

「ナチュールですから、それはそういうものです」

と河田さんはきっぱり。

変えなくてはいけないとこと、変えてはいけないところがあります。
バカな質問をしてあらためて気づきました。]]>
      
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