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2011年01月21日

これぞ、チーズパラダイス! 『世界チーズ大図鑑』 編集担当者より♪

35335.jpg『世界チーズ大図鑑』
ジュリエット・ハーバット監修
発行年月:2011年1月21日
判型:A4変 頁数:352頁


 原書は25カ所の国と地域から750種類以上のチーズを集め、
各国の担当者20名が分担執筆した大図鑑です。

正直な話、翻訳作業に入ったときは
「日本に輸入されていそうにもないマイナーなチーズまで
たくさん載っているこの本、読者にとって必要のない情報が多すぎるのでは?」と、
内心不安でありました。
なにしろ出版元がイギリスだけあって、
ウェールズやスコットランドが独立した章立てになっているくらいですから…。
ところがそれは思い過ごし。
全体を通して読むことで各国のチーズ事情やお国柄がうかがえます。


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 たとえばフランスやイタリアではAOCやPDOなどの法律で保障され、
伝統的な作り方を守っている産地が数多くある一方で、
イギリスやアメリカでは独自の製品づくりを工夫する若い生産者も少なくない。
ちょうどワインとよく似た世界であることが読み取れます。
近年注目の集まる国産ワインと同様、
日本のチーズ生産者もそういったグローバルな視点で捉えることができると思います。
またヨーロッパのチーズ産業も順風満帆だったわけではなく、
工業化優先ですたれてしまった伝統的な製法を
復活させるといった動きもあるようです。

 かと思えば、そんな難しい話ばかりでなく、
担当した著者たちの食文化が解説に反映されていて、にやりとさせられることも。
お勧めな「おいしい食べ方」は、
フランスの章では一緒に飲むワインをかなり細かく指定してくるかと思えば、
イギリスでは結構リンゴ酒押し。
アメリカの章ではチーズの香りを菓子のバタースコッチやトフィーにたとえているのに、
妙に納得してしまいました。


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 また、こんな変わったチーズが世の中にあるのかと
驚かされたり関心したり。
さすが洋書だけあって、写真の撮り方やチーズの外箱に見立てたデザイン
(表紙を書店で触ってみてください。芸の細かさがわかります)が、
ちょっとスタイリッシュな感じ。
ただ眺めているだけでも楽しいです。

 もちろん見た目だけでなく、
何かのチーズについて調べるにあたって
充分実用的な内容であることは保証します。

それぞれに商品データを記録し、断面写真を撮り、
産地マップをつけるといった、
実に手間がかかったであろう構成には脱帽です。

なお各種チーズを整理するにあたり、
「ウォッシュカードチーズ」「非加熱圧縮チーズ」といった
製造者側の視点に立った分類ではなく、
フレッシュ、熟成フレッシュ、ソフトホワイト
(白かびチーズはここに含まれます)、
セミソフト(ウォッシュタイプ)、ハード、ブルー、フレーバーと、
ざっくり7種に大別しているのもこの本の特徴

私はフレーバーチーズは何となく正統派ではないイメージがあって、
これまであまり食べずにおりましたが、
それが偏見であることを思い知らされました。


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チーズ漬けの編集作業の終わった今でも、
まだ食べたことのないチーズに積極的に食指をのばし、
毎週1、2個買っては楽しんでおります。

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投稿者 webmaster : 2011年01月21日 14:16